新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が特措法に基づく対策本部を設置し、東京都に続き近隣県も外出自粛要請を打ち出した二十六日、首都圏と結び付きの深い福島県住民の暮らし、仕事ぶりにも影響が広がり、困惑の声が上がった。都内の大学に進学する若者は今週末の引っ越しを急きょ延期し、新生活に不安を募らせた。都内に拠点を持つ福島県企業関係者は自粛の求めに応じ、家にこもって週末を過ごす。

 「このままだと、いつ東京に行けるか分からない」。学法石川高を今春卒業し、東京農大に進学する石川町の郷平(ごう・たいら)さん(18)は声を落とした。

 二十八日に東京都世田谷区のアパートに引っ越す予定だった。二十五日夜の小池百合子都知事の緊急記者会見を受け、日程の先送りを決めた。自宅の一室には冷蔵庫やテレビ、食器など下宿先に運ぶつもりの荷物が並ぶ。

 入学式は既に中止が決まった。授業開始は「四月二十七日以降」とされ、いつになるか分からない。借りたアパートは今月二十八日から入居できるが、授業開始直前までは町内にとどまるつもりだ。「授業がどうなるのか、東京に行っても出歩けないのではないか…」。新生活に心躍る季節だったはずだが、表情は晴れない。

 福島銀行東京事務所長の北岡裕志さん(48)は「今週末はアパートに巣ごもりする」と覚悟を決めた。昨年四月から単身赴任しており、当初は今週末、郡山市の自宅に帰ろうと考えていた。

 都の外出自粛要請が報道され始めた二十五日夜、帰宅途中でスーパーに立ち寄ると、乾麺や冷凍食品が品薄になっていた。現在住んでいる埼玉県も二十六日、今週末の不要不急の外出を控える呼び掛けをした。「単身なので食べ物は何とかなると思うが…。週末はなるべく人と会わない過ごし方を考えたい」と不安を募らせた。

 週末の外出自粛要請を踏まえ、日本橋にある県の首都圏情報発信拠点「日本橋ふくしま館MIDETTE(ミデッテ)」は二十八、二十九の両日を臨時休館とする。運営する県観光物産交流協会は「営業すれば外出の誘発につながる」と配慮して決めた。


 ■福島県企業 広がる影響

 感染症の拡大防止対策を受け、福島県の企業活動にも影響の余波が出ている。

 JR東日本によると、東北新幹線の3月前半の利用客数は、前年と比べて半減した。

 西郷村の井上誠さん(52)は信越化学工業の関連会社ヒューマンクリエイト(本社・東京都)に勤務し、今月6日まで新幹線で都内のオフィスに通っていた。9日から村内の信越半導体白河工場でのテレワーク勤務に切り替えた。感染が広がって都内の社員も出社できなくなれば、業務が停滞する懸念を示し、「一日も早く終息してほしい」と願った。

 食品加工製造のステラフーズ(白河市)はピザやパスタ、ラザニアなどの冷凍食品を製造し、首都圏のスーパーなどで販売されている。感染が世界的に拡大し始めた2月以降、冷凍食品の受注が例年の約1.5倍に伸びた。外食用需要が減る一方、家庭用商品の注文が増えているという。

 松本弘ファクトリーマネージャー(58)は「家で過ごす人が増え、需要がさらに高まれば生産が追い付かなくなる可能性がある。喜んでばかりはいられない」と表情を引き締めた。