東京五輪の聖火リレーが全国に向けてグランドスタートするはずだった二十六日、県内でトーチを掲げて走る予定だったランナーや準備を進めてきた関係者は、さまざまな思いを抱いてその日を迎えた。

 「再び選ばれたら、葛尾の酪農や村の魅力を世界中に発信したい」。二十六日に葛尾村の区間で聖火ランナーを務める予定だった葛尾中三年の佐久間亮次さん(15)は誓う。

 実家は東日本大震災前、県内有数規模の原乳出荷量を誇った佐久間牧場。東京電力福島第一原発事故で乳牛を処分し、休止に追い込まれたが、父哲次さん(44)が再開させた。

 亮次さんは父の背中を追い、酪農家になる夢をかなえようと、四月から鏡石町の岩瀬農高生物生産科に進む。三月は受験と聖火リレーを巡る騒動で慌ただしい日々を過ごした。「延期は残念だが、中止ではなくて良かった。来年に決まれば酪農の知識も増えるし、落ち着いて臨める。また選ばれたら頑張って走る」と決意を新たにした。

 この日、篠木弘村長やサポートランナーとして一緒に走る予定だった葛尾小中の全児童生徒らと一緒に葛尾小で記念撮影した。リレーの仕切り直しを受け、篠木村長は「皆さんと一緒に聖火で村を盛り上げたい」とあいさつした。


 ■Jヴィレッジ撤去作業続く 聖火展示へ内容詰める

 出発式典が予定されていたJヴィレッジ(楢葉・広野町)の9番ピッチではステージや音響・映像機器などの撤去作業が前日に続き行われた。スタート時刻だった午前十時には、広大な会場にステージを解体する電動工具の音や作業員の声が響いていた。

 聖火リレーの当初計画では、二〇一一(平成二十三)年サッカー女子ワールドカップで優勝した日本女子代表「なでしこジャパン」が国内の第一走者としてJヴィレッジを出発。県内は二十八日までの三日間に二十六市町村、計二百六十五個人・集団がリレーをつなぐ予定だった。

 県内に当面の間、保管されることになった聖火の扱いについて、県は東京五輪・パラリンピック組織委員会と調整を続けている。

 県は聖火が県内にとどまっている期間中に多くの県民に見てもらう機会を設けたい考えで、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で展示方法を決める方針。

 聖火の展示に向けては、火の管理や展示の方法、警備態勢など解決すべき課題は多い。仮に県内各地で巡回展示するなど場所を変える際には、安全な輸送態勢の構築も必要となる。県は大会組織委と連携して保管期間を含めて具体的な内容を詰める。