会津若松市の三義漆器店は、微生物に分解される植物由来プラスチックを原料にした漆塗り杯「紫翠盃(しすいはい)」を製品化し、販売を始めた。開発製造にいわき市、二本松市の事業所が協力し、県内三方部の英知を生かした。曽根佳弘社長(56)は、酒どころとして知られる会津から環境に優しい杯を発信し、世界的課題となっている海洋プラスチックごみの削減の一助になりたいと願う。

 三義漆器店は、小松技術士事務所(いわき市)の小松道男所長(57)が開発した植物由来プラスチックの特許成形技術などを元に、薄型の杯を仕上げた。植物から取り出したでんぷんと乳酸菌を原料にした生分解性プラスチック・ポリ乳酸樹脂(PLA)を素材にしており、成形後に自然の塗料である漆で保護、加飾した。

 小松所長と交流がある埼玉県東松山市の金型製造会社ペッカー精工の二本松営業所(二本松市)で設計した金型を使用し、会津、浜通り、中通りの「オール福島」の技術を結集した形だ。

 三義漆器店は一貫製造工場で漆器を量産している。プラスチック素材の製品を数多く手掛けており、曽根社長は海洋プラスチックごみ問題に強い関心を抱いていた。そのような中、昨年九月に聴講した小松所長の講演が新製品誕生のきっかけになった。小松所長のPLA成形に込めた地球環境保全の思いに、共感した。

 講演後、曽根社長の声掛けで交流が始まり、自然に負荷をかけない素材を使いたいという熱意が通じた。昨年十一月、小松所長を技術顧問に迎え、正式に商品開発に乗り出した。三義漆器店が得意とする丸物で、比較的容易な非耐熱型の漆器製造を模索した。思案の結果、県産酒振興にもつながる杯であれば注目度が増し、環境保全の精神を伝えられると思い立った。

 曽根社長は新ブランド「R+E(アールイー、RETURN to THE EARTH)」を立ち上げる予定で、需要を見極め耐熱性のあるマグカップや皿、漆器以外の製品の製造を視野に入れている。「紫翠盃の普及を通じて、地球を思いやる仲間を増やすのが自分の使命」。会津から環境啓発に挑む。

 先進諸国は海洋プラスチックごみの排出抑制に取り組み、日本では七月一日からプラスチック製レジ袋の有料化が義務化される。米国の大学研究者らの推計によると、世界の流出量は年間四百七十八万〜千二百七十五万トン。紫外線や波にさらされ粒子となったマイクロプラスチックが、食物連鎖により人間に影響すると懸念されている。


■「紫翠盃」約20種類を販売

 「紫翠盃」は「緑漆銀蒔(ま)き」「炎の輪」「銀杏」など約20種を販売しており、種類を順次増やす。直径7・5センチ、高さ2センチ。価格は2千円〜1万円(税込み)。問い合わせは三義漆器店 電話0242(27)3456、またはメール sanyoshi@owanya.com