東京電力福島第一原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水に関し、政府は三十日、処分方針決定に向けた第四回意見聴取会を都内で開いた。経済、流通、消費の全国団体代表者が出席し、処理水についての理解が国民に浸透していないとの指摘が相次いだ。全国消費者団体連絡会は「多くの国民に処理水について知ってもらうまでは、取り扱いの方向を決めるべきではない」と訴えた。

 同連絡会の浦郷由季事務局長は、県内の市町村議会で海洋放出への反対や地上タンクでの長期保管を求める意見書などが可決されている状況に触れ「地元の声をしっかり受け止めてほしい」と強調。「国民の理解がない中で処理水を環境放出すれば必ず風評被害が起きる。東電はそれを前提に対策を講じ、きちんと損害賠償を負うべきだ」と述べた。

 県産品のPRや販路開拓などを支援してきた全国商工会連合会の苧野(おの)恭成事務局長は「処分すれば風評で中小・小規模事業者がさらに苦境に陥る。現状維持してほしい思いもある」とした。一方で処分不可避なら第三者機関による監視・管理の下で実施すべきと指摘。「可能な限りの国民の支持」を得られるように広報を強化するよう求めた。

 環境放出に理解を示す意見もあった。食品小売店などでつくる日本ボランタリーチェーン協会の中津伸一常務理事は「安全なら流せばいいのではないか。もったいぶっているから疑念を持たれる」などと主張。国際原子力機関(IAEA)などの情報、海外での処理事例などを「分かりやすく国民に説明し納得してもらうのが一番だ」と述べた。

 座長の松本洋平経済産業副大臣は国民への周知不足について「関心の無い人にも理解してもらうことが大切というのは全くその通りだ」と述べた。松本氏は次回聴取会を開く意向だが詳細な日程は調整中とし、十五日までの書面による意見募集は延長しない考えを示した。

 五月の前回開催時は新型コロナウイルス対策でウェブ会議形式だったが、緊急事態宣言の解除を受けて今回は対面形式で開いた。


■寄り添った対応を 福島県や漁業関係者ら

 意見聴取会をインターネットなどで傍聴した県や漁業関係者からは、政府に対し、県民や国民の声に寄り添った対応を求める声が上がった。

 県原子力安全対策課は、全国的な組織から政府の対応が不十分との訴えがあった点を踏まえ、「処理水を巡る政府の情報発信は十分ではない。県民や国民の理解を得る前提として、風評対策などの具体案を示すべきだ」と指摘した。

 県漁連は六月に開かれた総会で、東京電力福島第一原発で増え続ける処理水に関し「海洋放出に断固反対する」との特別決議を承認した。野崎哲会長は「(海洋放出に)反対の姿勢は変わらない」と従来の主張を繰り返した。


■決議や意見書 可決相次ぐ 福島県内市町村議会

 処理水を巡っては今年に入り、県内の市町村議会で処分方針に関する決議や意見書の可決が相次いでいる。二十九日までに、三月と六月の定例会で十九市町村議会が可決した。

 このうち、浪江町は海洋放出への反対を決議し、三春町と西郷村は大気や海洋への放出の反対を意見書に明記した。いわき市などは風評対策の拡充・強化を強く訴えている。

 県内では処理水の処分が福島県のみで行われたり、福島県から始まったりすれば風評がさらに強まりかねないとの懸念が強い。