東日本大震災の津波に耐え、枯死などの理由で2017(平成29)年12月に伐採された南相馬市鹿島区南右田地区の「かしまの一本松」。その種から育った苗木の植樹祭が22日、同地区で行われた。震災で傷ついた住民の心を支えた一本松の遺志を受け継ぐ9本の「子どもたち」は住民の愛情に包まれ、すくすくと育ち、かつて「親」が立っていた海岸に根を下ろした。
 9本の苗木は、一本松の保全に取り組んできた住民有志「かしまの一本松を守る会」と森林総合研究所林木育種センター(茨城県日立市)が、樹勢の衰える高さ約25メートル、樹齢約100年の一本松の松ぼっくりから大切に育ててきた。
 9年前、高さ約15メートルの大津波が南右田地区を襲い、海岸に約3キロ続いた松林は流失した。行政区の全70世帯は流され、住民54人が犠牲になった。荒廃した沿岸には唯一、青々とした枝葉を保つ一本松だけが残った。変わり果てた古里を前に、復興への気力さえ失いかけていた住民たちにとって、天を突くようにりんと立つ一本松は生きる希望となった。
 その後、南右田行政区はほぼ全域が住居を新築できない災害危険区域に指定され、17年3月に閉区。一本松も塩害で立ち枯れが進み、伐採された。県内外に離れ離れになった住民をつなぐのは一本松の遺伝子を継ぐ苗木たちだった。
 植樹祭では、高さ30センチほどに育った苗木9本のほか、一本松と同じクロマツの苗木約700本が植えられ、参加者約180人が土をかぶせた。守る会の五賀和雄会長(79)は「一本松の苗木は人々を再び結び付け、震災の教訓と復興の証しを後世に伝えてくれる存在になる」と前を向いた。会員の荒新一郎さん(74)も「ようやく親の元に返すことができ、一安心。これからも大切に手入れしていきたい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。