九州に甚大な被害をもたらした豪雨災害で、熊本県球磨村の特養で入所者14人が犠牲になったことから、高齢者や障害者らが利用する県内施設の関係者が危機感を強めている。「同じ介護施設として人ごとではない」。昨年の東日本台風(台風19号)で被害を受けた施設では、当時の教訓を基に対策が進む。
 「最悪の事態を避けるため早い段階の避難が重要」
 須賀川市にある認知症高齢者専門のグループホームすずらん日向の管理者橋本正明さん(44)と、施設を運営する豊心会副理事長橋本好博さん(44)は、昨年の東日本台風で被災した経験から、九州での豪雨災害をわが事のように捉える。
 東日本台風では施設が床上浸水。入所者を系列施設に移し難を逃れたが、台風を教訓に対応を見直し、高台を主な避難先とし経路に橋を使わないなど方針を決めた。避難先にはレトルト食品や発電機などを備蓄。浸水対策の土のうも用意した。
 ただ、新型コロナウイルス感染症の拡大で新たな悩みも抱える。介助による接触の機会が多いため、新型コロナへの懸念が拭えないという。「避難所が必要になった際、受け入れてもらえるか」(正明さん)。
 2人は「認知症は環境変化の影響を受けやすく、避難はリスクを伴う。二の足を踏みがちだが(避難して)『空振りで良かったね』と言えるよう考え方を変える必要がある」と強調する。
 同じく、運営する施設が東日本台風で浸水被害を受けたいわき市のNPO法人ままはーと代表の笠間真紀さん(44)は、台風後、施設を利用する重症心身障害児一人一人を対象にした計画に、災害時の避難の項目を追加した。自身も障害があるわが子と避難した経験から、一人ずつ避難先や移動手段、留意点を記した。
 避難先は、普段から頼れる親類や知人などが望ましいとし「頼れる人とのつながりを持っておくことが大切」と警鐘を鳴らす。
 東日本台風時は誰も頼ることができず、車中泊でしのいだ。「障害を理由に避難所にも行きにくく、つながりの大切さを痛感した」と振り返る。また、「もちろん早期の避難も大切。避難先へのルート確認も重要だ」と指摘する。