生活習慣病の予防と早期発見を目的に40〜74歳が受けられる特定健診(国民健康保険)を巡り、いわき市で受診率の低迷が続いている。受診率は2018〜19年度と21〜22年度が県内59市町村でワースト(20年度は57位)。特に40〜50代の「働き盛り」世代で低い傾向にある。市は未受診者への受診勧奨の効果的な方策を模索する一方、市医師会も患者に直接受診を呼びかけるキャンペーンを通して健康意識の高揚を図る。(いわき支社・折笠善昭)
 要因分析に苦心
 いわき市の特定健診受診率と県平均、全国平均、同規模市平均との比較は【グラフ】の通り。新型コロナウイルス感染症の影響で受診控えが目立った20年度は2割台に落ち込み、その後は微増しているものの、県平均から10ポイント近く低い。いわき市に次いで低い会津坂下町とは3・16ポイント、最も高い檜枝岐村とは47・7ポイントの開きがある。いわき市では40代と50代の受診率が特に低く、40〜44歳男性の受診率は13・6%にとどまった。
 具体的な要因は判然とせず、市は「市民性もあるのでは...」(健康づくり推進課)と分析に苦心する。受診していない市民への個別通知に加え、サッカーJ2いわきFCのホーム戦などで受診を促してきたが、改善には至っていない。
 リスクの芽を摘む
 特定健診では生活習慣病予防のため、メタボリック症候群に着目した検査が行われる。結果から生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善で予防効果が期待できる人は、特定保健指導を無料で受けられる。
 市の健康指標を見ると、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすリスクがあるメタボリック症候群の該当者は予備軍も含めると35・18%(22年度)に上り、全国平均(31・67%)と比べて高い。市は、リスクの芽を早期に摘むためにも特定健診の受診喚起に躍起だ。
 ただ、受診には自ら医療機関を探して予約する必要があり、市民からは「ハードルが高い」との意見が寄せられた。このため市は本年度、スマートフォンなどのショートメール機能で通知を送り、位置情報を活用して身近な医療機関を紹介するなど、受診への障壁を取り除く事業に乗り出す。
 年1回の受診を
 いわき市医師会副会長の斉藤道也医師(62)=みちや内科・胃腸科=は同市で受診率が低い原因を「自分たちがかかりつけ医だからこそ、患者に検査を勧めてこなかった。医師のリテラシーの低さがある」と自戒を込めて分析する。今後、受診促進キャンペーンを展開する方向で調整していると明かし「年に1回は特定健診を受けるという意識を定着させていく」と語る。
 健康づくりはいわき市に限らず、全県的な課題でもある。「いわき市は医療圏として独立している。施策の有効性を示し、成功事例として全県に波及させていきたい」と斉藤医師。受診率低迷からの脱却が「健康長寿」の鍵を握っている。