「5G」がスタートすると、私たちが日頃楽しんでいるような、エンターテインメントコンテンツの利用シーンはどうかわるのだろうか?

「5G」サービスの準備を進める、KDDIの新規事業部門「ビジネスアグリゲーション本部」の三浦伊知郎 革新担当部長に話を聞いた。

複数の通信企業などでの勤務経験もある三浦氏は現在、32の企業と渋谷区で「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を立ち上げ、“仕掛け人”としてプロジェクトを進めている。

今回はKDDIという会社の立場からではなく、三浦氏のこれまでの取り組み、そしていま推進するプロジェクトなどを踏まえた経験から感じている、個人的な見解について聞いた。

三浦伊知郎 KDDI革新担当部長

変化してきたDJスタイル…5Gがさらに劇的に変革する!

三浦氏は元DJでもある。

話を聞いていると、例えばDJ(いわゆる“クラブDJ”)のような分野でも、「5G」の普及で大きな環境変化が見られそうだ。

三浦氏は、次のようにDJの歴史を振り返り、“未来像”を思い描く。

KDDIビジネスアグリゲーション本部・三浦伊知郎 革新担当部長:

DJは当初、レコードを掛け替えて音楽をつなぐ役割を担っていた。

その後、CDJ(CDを使ってのDJプレイ)の登場で、DJはCDを掛け替えて音楽をつなぐようになった。

やがてCDはいわゆるラップトップ(PC)に変わった。

めまぐるしい音楽の技術革新とともに、DJも進化してきた。

このような状況下で「5G」は何を変えるのか。

DJは大音量で音楽をかけるため、その音楽データは高音質のものが必要となる。高音質なため、必然的にその音楽データは大容量となる。

しかし、「5G」が普及すると、大容量の音楽データでも、クラウドから容易にダウンロードして利用できるのではないかと予測する。

「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」キックオフイベント

音楽データは、一般によく使われてる「MP3」という形式で圧縮すると、大音量でかけた際に、音がいわゆる「スカスカ」で重厚感がなく聞こえるという。

高速で大容量・低遅延の「5G」特長を生かし、高音質の音楽データをリアルタイム転送できれば、高音質の音楽データファイルを扱うことも容易となりそうだ。

「5G」はDJの可能性をどこまで広げるのか。三浦氏はさらに説明する。

KDDIビジネスアグリゲーション本部・三浦伊知郎 革新担当部長:

5Gが普及すれば、DJはそこら中のクラウド上に転がっている高音質な音楽を、どこからでもダウンロードして、もしくはストリーミングして、音楽の掛け替え(ミックス)を始めるのではないか。

ラップトップも必要なくなり、「5G」対応のスマートフォンだけで、DJができるようになる。

もっと言えば、スマートグラス(メガネ型デバイス)でも可能になるかもしれない。

そして「5G」の特長である多数同時接続を利用すれば、プレイ中のDJが、別の場所にいるプレイ中のDJに接続して、遠隔地をつなぎながら、音楽をミックスしていくかもしれない。

三浦氏とUnderworldの元メンバーでDJのDarren Emerson氏

DJの分野だけ見ても変化は大きそうだ。

このような「5G」が変える未来が、業界やエンタメの数だけあって、普及とともに一気に広がっていくかもしれない。

「リアル×バーチャル」そのギャップを埋めるカギ

一方、「5G」をめぐるエンタメ体験として、ARやVRゴーグルを使ってのスポーツ観戦やライブ中継など、臨場感のあるリアルタイム視聴やマルチアングル視聴がしばしば話題となる。

こうした新しいスタイルはどうやって楽しめばいいのだろうか。

三浦氏は、「5G」時代のエンタメの楽しみ方を次のように指摘する。

KDDIビジネスアグリゲーション本部・三浦伊知郎 革新担当部長:

「5G」時代、特に現段階においては、エンタメの楽しみ方に“仕掛け”が必要になってくると思う。

目の前で起きている「リアル」と、その場で「5G」テクノロジーが作り出す「バーチャル」のそれぞれの良さを同時に楽しむことができるような“仕掛け”が必要。

“仕掛け”つまりは演出がなければ、「リアル」と「バーチャル」がかみ合わず、ギャップが生じてしまう。

技術が進むことは確実で、「リアル」と「バーチャル」の境界線が限りなくなくなっていく時代はそこまで来ていると思う。

ただ、現段階では楽しみ方の“仕掛け”が必要だと思う。

リアルにはリアルの楽しみ方があり、バーチャルにはバーチャルの楽しみ方がある。

三浦氏が言うように、「リアル」に「5G」を掛け合わせたときに、どういう楽しみ方が推奨されるのか。

それが演出というソフト面の工夫であり、それを考えていくことが、現段階における「リアル×バーチャル」を楽しむ「5G」時代のエンタメ普及の、一つのカギになりそうだ。

KDDIビジネスアグリゲーション本部・三浦伊知郎 革新担当部長:

技術が進歩し、あらゆるものがデジタルに置き換えられていき、様々な可能性が広がっていけば行くほど、「リアル」体験、要は肌で感じる生の体験が重要になると考える。技術の進歩(デジタル化の促進)において、正比例して大切になってくることは、コミュニケーション能力のスキル向上だ。

その為には、個々人の「人間力」が問われる時代になってくると思うし、「人間力」を高めるには、様々な経験が必須となる。

その手法として、コミュニケーションはデジタル、リアル問わず、多岐にわたって今まで以上に重要になる時代が、もう訪れていると思う。

(フジテレビ報道局経済部 西村昌樹記者)