親と暮らす“中年未婚者”が増加…彼らはなぜ同居を選ぶのか

親と暮らす“中年未婚者”が増加…彼らはなぜ同居を選ぶのか

親と同居する未婚者は35年で約300万人増加

「50歳の時点で一度も結婚したことがない人」を示す生涯未婚率。2015年の調査では男性が23.4%、女性が14.1%と、過去最高を記録した。

この数字が急上昇し始めたのは1980年代のことだが、同じく1980年代から増加傾向にあるのが、親と同居する未婚者数だ。

総務省統計研究研修所の調査では、親と同居する未婚者数は、1980年の約1,600万人に対し、2016年は約1,900万人に増加した。

若年未婚者(20-34歳)、壮年未婚者(35-44歳)、高年未婚者(45-54歳)の年齢層別でも増加傾向にある。

・若年未婚者 1980年の約817万人(年齢層における全体比29.5%)に対し、2016年は約908万人(同45.8%)

・壮年未婚者 1980年の約39万人(年齢層における全体比2.2%)に対し、2016年は約288万人(同16.3%)

・高年未婚者 1980年の約18万人(年齢層における全体比1.2%)に対し、2016年は約158万人(同 9.2%)

※総務省統計局「労働力調査」の調査票情報を集計、データはいずれも各年9月時点

若年未婚者の年齢層では、親元から通う学生などの可能性も考えられる上に、2000年をピークに減少しているが、独立していてもおかしくはない壮年未婚者や高年未婚者は、1980年から現代にかけて急激に増加していることがわかる。

同居理由の多くは「生活面でのメリット」

未婚者たちはなぜ、親と同居するのだろうか。

エン・ジャパングループが運営する結婚相談所「エン婚活エージェント」が独身男女を対象に行った「親との同居と結婚」に関するアンケート調査から同居理由を見てみる。

(1月17~21日、エン婚活エージェントを利用する20~65歳の男女208人を対象としたインターネット調査)

調査結果では、回答者のうち45.5%が「実家暮らし(親と同居)」をしていると回答。同居する理由は「生活が便利なため」が24.82%、「家賃を節約するため」が24.09%、「経済的な余裕がないため」が17.52%で上位となり、生活面でのメリットから親と同居する人が多いことが見て取れた。

親と同居する人が「親との同居」をどう思っているかの回答例

・シングルマザーの為、親に面倒を見てもらってとても助かっている

・経済的に助けてもらっている点は良いが、親に依存してしまい家事をする機会が少ない

・両親の理解があるため何も負担にはなっていません

一方、親と同居していない人を対象とした「相手が実家暮らし(親と同居)の場合にどう思うか」という質問では、「マイナスに感じる」の39.36%を、「気にしない」が58.51%で上回る結果となり、「親との同居」は婚活において、必ずしもマイナスな影響ばかりを与えていないことも分かった。

親と同居していない人が「相手が親と同居していること」をどう思っているかの回答例

・実家くらしが何かの障壁にはならない。家事については、その場にいないと誰もやらないのは当然

・経済的な理由など、一人暮らしできない理由があるのであれば仕方ないと思う

・自立は必要だが、無理をして一人暮らしする必要性を感じない。困ったときだけ頼る方が、親に依存しているのではないか

高齢化する「パラサイト・シングル」

1990年代後半、学卒後も親と同居して生活基盤を依存する未婚者が「パラサイト・シングル」と呼ばれ、社会問題となった。著書「パラサイト・シングルの時代」でこの言葉を提唱した、中央大学文学部の山田昌弘教授はこの「パラサイト・シングル」が壮年・高年未婚者の増加に影響していると指摘する。

山田教授によると、20年前に「パラサイト・シングル」だった若者の約3分の1が未婚のまま50歳を迎えているという。理由について山田教授は「結婚するよりも実家にいるほうが良い生活を送れるからです。例えば、非正規労働者の方が結婚して家を出た場合、生活水準が下がる危険性があるでしょう」と話す。

「以前は若者の多くが正社員になれたが、現在は非正規労働者も多く、1980年代と比べて経済格差が広がったように感じる。女性は給与水準も低く、半端な男性と結婚するなら『親と同居した方がまし』となる。そして相手を待つが、条件を満たす相手はなかなか来ない。これでは未婚にもつながります」

総務省の統計では、国内の非正規雇用労働者は増加傾向が続いており、2017年は全体の37.3%に当たる、約2,036万人に上っている。

経済的に先が見通せない雇用形態でなかなか結婚に踏み切れず、親との同居を選ぶのはむしろ自然な流れなのかもしれない。

厚生労働省の掲載資料より抜粋

そして、こうした社会背景とともに、親側の意識も変わってきたのではないかと専門家は指摘する。

総務省統計研究研修所の西文彦教授は、晩婚化や女性の社会進出など多くの要因が絡んでいることを前提とした上で、個人的な見解として「就職後や学卒後の子どもを独立させるという、親側の意識が薄れたのではないか」と分析する。

「昭和時代、世間には『大学を出たら住居を借りるべき』『就職したら独立して当然』という風潮がありました。現代社会は優しくなったのか、そういう言葉が聞かれなくなった気がします。親世代の収入が1980年代に比べて裕福になり、『家を出るべき』という圧力が低くなったことが理由でしょうか」

「子どもの数が減少していることも考えられます。昔は一家に4、5人の子どもが生まれることも珍しくありませんでしたが、今は1、2人が多い。同居してくれることで家事を手伝ってくれたり、防犯面の安心にもつながるため、『一緒に住んでもいいか』となるのも自然な心情かもしれません」

孤独死の増加につながる可能性も

一方で、課題もある。

近年では、親の年金収入などを頼りに生きてきた未婚者が、親の死亡などにより“共倒れ”するケースが出始めている。

山田教授は「今のままでは将来、親がなくなった後、孤立状態で家に残される独身者が何百万人と生まれる。現在の孤独死の比率は全体の3%程度ですが、今の親世代が死亡する30〜40年後には、10〜20%となる可能性もあります」と指摘。「グループホームやシェアハウスなど、家族がいない人が自立して生活できる施設や仕組みを普及させることが必要。家族に頼らずとも生活ができるような社会保障の整備も求められる」と警鐘を鳴らす。

西教授は「団塊の世代も70歳を超え、問題は目前に迫っている。状況を改善するためには、親に依存しない『一定程度の収入』を得ることが必要だが、高齢になると再就職も難しくなる。社会復帰が難しい人には、在宅ワークなど自宅で収入を得る方法を探すことも必要かもしれない」と話す。

経済的な状況や介護問題、親しい人と住む居心地の良さ...未婚者が親と同居する理由は人それぞれだろう。親を支え、また親に支えられて生きることは決して悪いことではない。しかし、将来いつか訪れる「別れ」を想定しておかなければ、一人残された時には取返しがつかない状態となっているかもしれない。

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