1979年のイラン・イスラム革命から41年目となる2月11日、テヘラン市内で行われた記念式典を取材した。予想以上に多くの参加者が1月3日にアメリカ軍の無人機に殺害された革命防衛隊のソレイマニ司令官のポスターを手にしていた。市内の至る所にソレイマニ氏のポスターが掲げられ、殺害をきっかけに反米意識をいっそう高めようとする狙いを感じた。

ソレイマニ司令官の遺影を掲げる市民

司令官殺害は「大きな過ち」

FNNは、イラン外務省元顧問で、ザリフ外相のアドバイザーでもあったホセイン・シェイホレスラム氏にインタビューした。シェイホレスラム氏は開口一番、「ソレイマニ司令官殺害は大きな過ちだった」と主張した。

イラン外務省元顧問 ホセイン・シェイホレスラム氏

シェイホレスラム氏:

「確かに(1980年代の)イラン・イラク戦争で、我々はアメリカに戦うよう仕向けられ、互いに殺しあった。だが、トランプ氏は大きな失敗を犯した。ソレイマニ司令官(イラン人)と、ムハンディス氏(親イランのシーア派民兵組織、カタイブ・ヒズボラの指導者。イラク人)の殺害を指示したことだ。両者の暗殺後、イランとイラクの関係はいまだかつてないほど緊密になった」

ソレイマニ司令官は、イランの対外工作を担う精鋭組織「コッズ部隊」を率いていた人物だ。最高指導者ハメネイ師の信頼も厚かったとされる一方、アメリカからは虐殺を繰り返すテロリストとみなされていた。シェイホレスラム氏は、ソレイマニ氏殺害は「戦争行為」だと言い切る。

シェイホレスラム氏:

「アメリカによるソレイマニ暗殺は、明らかに戦争行為だ。イランは報復としてイラクの米軍基地を攻撃した。アメリカ人を殺害するためではない。イランが戦争への準備が出来ていること、周辺のいかなる基地をも狙える能力があることを示すためだった」

イラン側は1月8日、イラク国内のアメリカ軍基地を弾道ミサイルで報復攻撃した。トランプ大統領は当初、被害者はいないとしていたものの、アメリカ国防総省は2月10日、109人のアメリカ兵が外傷性脳損傷を負ったことを明らかにした。死者は出なかったとはいえ、アメリカ軍へのダメージは少なくなかったはずだ。

シェイホレスラム氏:

「アメリカはイランのミサイルを1つたりとも撃墜できなかった。パトリオットミサイルだろうとなんだろうと、アメリカ軍の迎撃ミサイルは、役に立たないということだ」

殺害で第3の革命が始まる?

その上で、シェイホレスラム氏は今回のソレイマニ氏殺害はイラン第3の革命につながるという。

シェイホレスラム氏:

「1つ目は、パーレビ国王(※注1)による独裁を打倒するため、国王をイランから追放した革命。2つ目は、アメリカ帝国主義を打倒するため、アメリカをイランから追放した。今回のソレイマニ暗殺は3つ目の革命につながる。それは、アメリカを中東から追放する革命だ。それはまずイラクから始まる」

(※注1)親欧米派で、脱イスラム化と世俗主義による近代化政策を進めていたが、1979年1月、民衆の反発でに国外退去。翌月、イスラム教シーア派のホメイニ師が亡命先のパリから帰国し、その後イラン・イスラム共和国の樹立を宣言。

選挙の行方は…

これまでのところは報復攻撃の応酬には至らず、アメリカもイランも戦争は望まないとしている。どちらにとっても全面戦争のメリットは無いだろう。ただ、イランが支援する武装組織による偶発的な衝突の危険性は拭えない。イランでは2月21日に国会議員選挙が行われる。アメリカが「核合意」から離脱し、イランへの経済制裁を続けていることで国内経済は困窮している。欧米との対話路線を重視してきたロウハニ大統領を支持する穏健派は、苦しい立場だ。シェイホレスラム氏も、「国民はもはやロウハニ大統領を信頼せず、支持もしていない」と言い切る。欧米メディアによると、選挙では反米の保守強硬派が票を伸ばすとの見方が強く、その結果が注目される。

【執筆:FNNイスタンブール支局長 清水康彦】