新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちの生活、国や企業のかたちは大きく変わろうとしている。これは同時に、これまで放置されてきた東京への一極集中、政治の不透明な意思決定、ペーパレス化の遅れ、学校教育のIT活用の遅れなど、日本社会の様々な課題を浮き彫りにした。

連載企画「Withコロナで変わる国のかたちと新しい日常」の第5回は、新型コロナと気候変動という2つの危機と同時にどう闘うべきか、アフターコロナの経済復興のあり方を考える。

経済停滞で世界の大気汚染は改善

4月28日、約30カ国の環境閣僚らが気候変動対策について協議する「ペータスベルク気候対話」がオンラインで開催された。主催国ドイツはメルケル首相が参加したほか、国連のグテーレス事務総長、中国やインドなど、主要な温室効果ガス排出国の担当閣僚、日本からは小泉進次郎環境相が参加した。

オンラインで開催された「ペータスベルク気候対話」には、日本から小泉進次郎環境相が参加した(提供:環境省)

新型コロナウイルスの感染拡大で都市は封鎖され、工場の稼働が止まり、航空便や自動車など、交通量は激減した。こうした社会活動の停滞は世界経済に大打撃を与えているが、一方で世界の大気汚染には改善がもたらされている。

IEA=国際エネルギー機関によると、2020年の世界のCO2排出量は8%減少する見通しだ。この減少量は過去最大であり、リーマンショック時の6倍にあたるという。

だが協議の中では、多くの国から「排出量の減少は一時的な現象であり、気候変動はコロナ禍においても進行中である」と指摘された。

収束後の経済復興はパリ協定に沿うべき

「パリ協定」が掲げる努力目標「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える」を達成するためには、世界で毎年8%近くの温室効果ガスの排出量削減を続ける必要がある。

いま世界中が経済活動をストップしており、再開すれば温室効果ガスの急増が予想される。そのため、協議の中で参加国は「新型コロナ収束後の経済復興計画は、パリ協定とSDGsに沿わなければならない」との認識で一致した。

はからずもコロナによって、我々人類は「世界が力を合わせれば、たった数か月で温室効果ガス削減が可能である」ことに気付かされた。と同時に我々は、ビフォーコロナの経済活動をやっていたら、地球環境は1ミリも改善することがないことも分かったのだ。

では地球環境のために、Withコロナ、アフターコロナの時代を生きる我々は何をしたらいいのだろうか?

環境問題解決のため金融界から転身

「新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない今、コロナ対策は最優先で取り組まないといけないと思います。ただ、環境問題がこれからも続くのは、忘れてはいけない事実です」

こう語るのは、木製容器を製造販売するカユーパッケージ株式会社のCEO・王克文さんだ。王さんは台北で生まれ、インドネシアで育ち、15歳の時に来日した。大学卒業後、金融界で働いていたが、インドネシアで環境問題の深刻さを実感し、家業である木材関係に転身した。

環境問題解決に取り組むため、金融界から転身したカユーパッケージ株式会社の王克文CEO

「昔、インドネシアは海辺が綺麗でした。しかし今は、海がプラスチックごみだらけで、入れない状態なのです。そこで何かできないかと考え、家業でインドネシアから木材を日本に輸入していたので、木製の包材を作ることにたどり着きました」

王さんは2015年に家業を継いで木製の包材を作り始め、2019年6月に軽井沢で行われたG20環境閣僚会合では、外国プレスのお弁当箱用に王さんの木製容器が採用された。

カユ―パッケージを2019年に設立した後は、無印良品や家具大手のイケアなどと提携しながら、木製容器を販売している。また、2020年には東京ガールズコレクションのバックヤードケータリングにも容器を提供したほか、2021年に延期となった東京オリンピック・パラリンピックでの展開も模索中だ。

コロナで家庭ごみが世界的に急増

新型コロナの感染拡大は、大気汚染を一時的に改善させたが、家庭ごみの増加という新たな環境問題をもたらしている。世界各国で自宅にこもる人々が増えたことで、家庭ごみの量が大幅に増加した。アメリカでは家庭ごみが3割増えたとの推定もあるほか、日本でも環境省は家庭ごみの増加に警鐘を鳴らしている。

家庭ごみの中でも特に問題視されているのが、テイクアウトやデリバリーで使用するプラスチック容器の増加だ。日本惣菜協会発行の「惣菜白書2019年版」によると、2017年当時、テイクアウトやデリバリーなどの中食市場の規模は約10兆円、外食は約25兆円で内食は35兆円だった。しかし、コロナによる外出自粛と飲食店の営業制限によって、外食分をテイクアウトやデリバリーが取って代わっている。

カユ―パッケージの木製容器は、お弁当箱やテイクアウトなどで使われている

王さんは言う。「今は仕方ないと思いますが、プラスチックごみがどんどん増えています。日本はごみの焼却技術が進んでいますが、燃やしきれない部分は埋め立て、埋め立てしきれない分は海外に輸出していました。しかし、最大の受け入れ国だった中国がプラスチックごみを受け入れなくなったので、国内で処理しようとしても焼却が間に合いません。結局、プラスチックごみの埋め立てが増えて、自然に分解されず半永久的にたまっていくのです」

テイクアウト容器の脱プラスチックを推進

家具大手のイケアでは、レストランのメニューのテイクアウトを4月から始めた。その際に採用されたのが、カユ―パッケージの木製容器だ。

「イケアは環境に対するサステナビリティを重視している企業です。テイクアウト容器に環境に優しい包材を探していて、私たちと提携することになりました」

こうした取り組みについて、小泉環境相は5月1日の閣議後会見で「素晴らしいと思いますね。これが社会的にもっと広がるよう環境省としても後押しをしていきたいと思います」と話した。

また、アフターコロナで経済活動が増えていく中、デリバリーやテイクアウトは人々の生活に根付いていくだろうと見通しを述べた上で、脱プラスチックに向けた意気込みを語った。

「飲食店が全面的に再開された後も、飲食店で食べ残したものを持ち帰って家で食べようとか、環境省が進めているフードロス対策の1つであるドギーバックをもっと根付かせられないか。テイクアウトとデリバリー、持ち帰りで使用される容器が、プラスチックでないようなかたちが出てくる、そういったようにやっていきたい」

小泉環境相は、テイクアウト容器などの脱プラスチックに意欲を示した「地球温暖化とコロナ、2つの危機と同時に闘う」

アフターコロナに向け、王さんは語る。

「環境には何度も使えるリユースの食器がベストです。我々の食器はベストではないですが、プラスチックの使い捨て弁当箱やテイクアウトの容器を使うのだったら、代替にしてくださいと。私たちはこれまで卸業者を通じて飲食店に容器を提供してきましたが、これからは直接提供できないか、オンラインの力を借りて発信していこうと思います」

我々の社会・経済活動が地球環境に与えてきた負荷が、図らずもコロナによって顕在化した。

「CO2排出量は減少していますが、感染拡大が気候変動の解決策にはなりません。もし何もしなければ、排出量は過去と同じように増え続けるでしょう」

国連のグテーレス事務総長も4月30日、グリーン・エコノミー=環境にやさしい持続可能な経済復興に取り組むよう各国に訴えた。

経済活動がビフォーコロナに戻れば、地球環境は再び悪化し気候変動の脅威は増す。

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは、4月22日の「アースデー」に「私たちは地球温暖化と新型コロナウイルスという2つの危機と同時に闘わなくてはならない」とネットを通じて訴えた。

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん

アフターコロナでは、我々がWithコロナで得た経験と知見を活かして、今度こそ持続可能な経済活動を作り上げなくてはいけない。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】