【識者コラム】名将オシムも求めた大型CFの利点、EURO2016でも流行

「どうして小さい選手ばかり獲ってくるんだ?」

 ジェフユナイテッド千葉を率いていたイビチャ・オシム監督は、祖母井秀隆GMに文句を言っていたそうだ。

 オシム監督は大きなセンターフォワード(CF)が好みだったようだ。千葉ではチェ・ヨンスも巻誠一郎も大柄だったし、日本代表でも我那覇和樹や巻を起用していた。自身が長身のFWだったので、ゴール前はサイズが解決してくれることもあると実感していたのかもしれない。

 今季から4-3-3を採用している川崎フロンターレで、レアンドロ・ダミアンが活躍している。188センチ・90キロと高さだけでなく重さもある。ゴール前のクロスボールに対する高さと強さ、DFを背負って受ける時の安定感も抜群。サイズを存分に生かしたプレーで、7月7日のFC東京との“多摩川クラシコ”では4-0の快勝に貢献していた。

 昨季はレギュラー確保とはいかず、川崎のパスワークの中でそれほど存在感を示せていなかった。システムが変わったことで、ゴール前の仕事に集中して持ち味を出しやすくなったようだ。今季の川崎は持ち前のパスワークによる崩しに加え、これまであまりなかったサイドからのシンプルなハイクロスやカウンターアタックを使っている。

 川崎の変化は、ある意味で世界の変化とリンクしている。

 2016年の欧州選手権(EURO)では、大きなCFの起用が流行っていた。過去2大会で優勝したスペインは洗練されたパスワークが看板。しかし、スペインといえども守備を固められるとなかなか点を取れなくなっていた。それはEUROの2年前に行われたブラジル・ワールドカップ(W杯)がそうで、さらに前のスペインが優勝した2010年南アフリカW杯からすでにそうだった。

 スペインで難しいのなら、他国がパスワークでこじ開けるのはさらに困難だ。ドイツ、フランス、イタリアなど、EUROに参加した多くのチームが大型CFを起用していたのは、そうした流れがあったからだ。

 川崎も2017、18年のJ1連覇の後、対戦相手に引かれて点が取れず、勝ち切れない試合が多くなっていた。パスワークだけで押し切るなら、スペインやバルセロナのように「偽9番」という手もあるが、川崎にはレアンドロ・ダミアンがいる。使わない手はない。

サイズに頼り切ると攻撃は精度のないラフなものになるが…

 大型CFは五分五分の状況を有利にしてくれる。完全に崩し切らなくても、ハーフチャンスからでも得点の確率を上げられる。最悪、何もアイデアがなくても、大型CFを目がけてボールをポンと上げておくだけでも何かが起きる可能性がある。

 サイズに頼り切ってしまうと攻撃は精度のないラフなものに傾いてしまうが、ゴール前はサイズが解決してくれることが確実にあるのだ。

 川崎のほかにも、J1には大きくて頑健なCFがいるが、ほとんどは外国籍選手である。日本代表にもレアンドロ・ダミアンのようなCFはいない。つまり、川崎のような解決策は日本代表にはない。いずれ直面する……というか、すでに直面している問題に、違う解決策を見つけなければならないわけだ。

Football ZONE web編集部