ネイマール、移籍金290億円でPSG行きの真相。歴史的大事件にバルサ幹部が感じた憤り【バルセロナ記者の目】

ネイマール、移籍金290億円でPSG行きの真相。歴史的大事件にバルサ幹部が感じた憤り【バルセロナ記者の目】

ネイマールとその父が失いたくなかった2600万ユーロ

 バルセロナからパリ・サンジェルマン(PSG)への移籍が発表されたブラジル代表FWネイマール。2億2千万ユーロ(約290億円)という天文学的な違約金で決着を見たこの騒動の裏側では、どのような動きがあったのだろうか。バルセロナ事情に精通したスペイン・スポルト紙デスクが、関係者への取材を通してこの大事件を読み解く。(取材・文:トニ・フリエロス【バルセロナ/スポルト】、翻訳:長坂祐樹、協力:江間慎一郎)

——————————

「昨年も既に退団寸前だった」とFCバルセロナの関係者が明かす。

「だが出ていかなかった。なぜなら、契約更新によってさらなる金をつかむことができたし、その時はまだ金よりもサッカーに重きを置いていた」

 この関係者が言及しているのは、近年のサッカー史を大きく変えた選手、ネイマールのことである。PSGがそれを成し遂げるまで、未だかつて誰も一人の選手に2億2200万ユーロもの額を払うということはなかった。

 PSGというよりはカタール政府といったほうが良いのかもしれないが……。スペインプロリーグ機構(LFP)のハビエル・テバス会長が言うように、「PSGは国家クラブ」なのだから。

 ネイマールの経緯について実のところを述べれば、この獲得オペレーションはここ2週間の間で練られたものではない。何ヶ月もかけた深慮遠謀の末の大きなベンチャービジネスなのだ。

 実際バルセロナは、ネイマールがPSGとの話し合いを再開していることを、ブラジルの彼に近しい人々を通じて知っていた。しかし、天文学的数字の契約解除金ゆえに移籍など夢にも思っていなかったのだ。

 問題となるのが「なぜネイマールは8月2日に決定的な手を打ったのか」「PSGへ行きたいという願望をはっきりと持っていたのなら、なぜ7月にアメリカ遠征に帯同しバルセロナの選手と共にプレーし、さらには並外れた活躍を果たすという“道化”を演じたのか」「心の中では退団すると分かっていながら、なぜメッシやルイス・スアレス、ピケのような親しい友人に出ていくかどうか分からないと言い、だますことになってしまったのか」だ。

 答は一様に、金、だ。そう、ネイマールもその父も失いたくはなかった2600万ユーロが理由なのだ。そしてそれがこの「サーカス」の鍵となったものであり、バルセロナの幹部の何人かはこれを「悪ふざけ」と考えているようだ。

「汚いものであることには違いない」

 ネイマール親子によるこの劇場はどのような経過をたどったのか。ネイマールが昨季バルセロナと契約を更新した際、契約解除金は1億9600万ユーロで据え置かれた。しかし、2017年の8月1日からそれは自動的に2億2200万ユーロとなった。2つの額の差、つまり2600万ユーロを、ネイマール親子は褒賞という名目で受け取ろうとしていたのだ。

 昨季が終了した6月に、もう残りたくはないとネイマールが告げていれば、ずっと誠実だっただろう。バルサも代役探しの時間をより多く手にすることができただろう。PSGももっと安価で彼を獲得することができただろう。そしてバルサのファンもそれほど騙されたと思うことはなかっただろうに。

 バルセロナが怒り、このオペレーションが終わるまで2600万ユーロを払わないことを決めたのは、そのネイマールの父のチェスの一手が理由である。今では、この状況に対しPSG側に2600万ユーロを払ってほしいと思っている人さえバルサの幹部にはいるのだ。

 ネイマール親子が8月2日にその2600万ユーロを保証する書類を取りにバルセロナのオフィスへとやってきたとき、彼らは落胆し、不愉快なサプライズを味わった。バルセロナは交渉がどのように収束するのかを見守ることにし、公証人にその額を預けてしまったのだ。

「PSGがネイマールに約束したことは決して知ることはできない。しかし、それはバルセロナのようなクラブのプロジェクトを捨て、まったく魅力のないフランスのリーグに行くためにやった、汚いものであることには違いない」とバルセロナのスポーツ部門責任者は説明する。

正当化は難しく、サッカー界にショックを与える出来事

 ネイマールのさよならには、スポーツ面での個人的な野心の要素も含まれている。PSGは彼の望み通りのチームを作ることを約束した。そこでリーダーとなるのは彼であり、フリーキックやPKを蹴るのも彼だ。すべてが彼を中心に回るのだ。

 バルサではその役割は2021年までの契約更新を果たしたメッシが担っていた。心の奥底には、世界一の選手になりたいという自己中心主義が隠されていたのだが、それはメッシの横にいてはほぼ実現不可能なものであった。

 しかしながら、ネイマールにとってはスポーツ面においてリスクの高い挑戦となる…。もしチャンピオンズリーグを勝ち取ることができなかったら、お分かりの通り。それだけが、彼が銃に込められる唯一の弾丸なのだ。

 UEFAが出した数字によれば、フランスリーグはスペイン、イングランド、ドイツ、イタリア、の下にランクしており、ヨーロッパの中のトップ4にも入っていない。プレミアリーグやリーガとは違い、フランスリーグは世界では追いかけられても見られてもいない。

 つまり、PSGが欧州の舞台で注目されない限りは、ネイマールがテレビに映る機会はぐっと減ることになる。そのためにPSGはネイマールと契約した。フランスの国境を超え、国際的な注目を浴びるために。

 この冒険で費やす額は天文学的なものである。ネイマールの年俸、契約解除金、税金を考慮すると、これからの5年で、このオペレーションの費用は6億ユーロにも及ぶだろう。つまり、ネイマールを抱えることでPSGは毎年1億2000万ユーロを負担することになる。

 正当化するのが難しく、すべてのサッカーファンにショックを与えるような凄まじい出来事だ。そして目を向けてほしい、ファイナンシャル・フェアプレーと呼ばれるものを適用したとして、それらの金額をUEFAが認めるのかどうかということがまだわからない状況なのだ。だから、ネイマールのPSG移籍には、まだ描かれていない様々なストーリーが残されているのだと私は思う。

(取材・文:トニ・フリエロス【バルセロナ】、翻訳:長坂祐樹、協力:江間慎一郎)

関連記事

フットボールチャンネルの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索