チェルシーの昨季はどんなシーズンだったのか? ランパード監督就任が“運命”である理由【18/19シーズン総括(9)】

チェルシーの昨季はどんなシーズンだったのか? ランパード監督就任が“運命”である理由【18/19シーズン総括(9)】

結果だけ見れば十分に合格

2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はチェルシーを振り返る。(文:プレミアパブ編集部)
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 2018/19シーズンのチェルシーは、マウリツィオ・サッリと共に変革を目指した。どちらかというと守備的な戦い方をしてきたチームに、いきなり攻撃的なパスサッカーを定着させることは難しい。とはいえ「サッリボール」は、ペップ・グアルディオラに「バルセロナと並んで、ファン目線で試合を見たいサッカー」と言わせたほどのものだ。実現可能性はともかく、注目と期待度は開幕前から非常に高かった。

 ただ初年度はまだ人員整理も終わっておらずサッリボールにハマらない選手が多かった上に、イタリア人のサッカーの浸透には時間がかかることも有名だ。 3年契約の1年目である昨季は、ある程度結果を求めつつも「準備期間」という位置づけだったはず。

 にもかかわらずプレミアリーグでは3位を確保し、ヨーロッパリーグではいきなり優勝を成し遂げた。背景を考えればこの結果は十分合格だったと言える。

 振り返ると新戦術への挑戦は悪くないスタートを切った。プレシーズンマッチからゲームメイカーのジョルジーニョを中心に、パスワークで相手を攻略する戦い方を定着させると、開幕後の12試合は負けなし。序盤戦はリバプールやシティと首位争いをしていた。

好不調の波の激しいシーズンに

 特に8節リバプール戦は、最終的には引き分けたが素晴らしい内容だった。相手の激しいプレスをパスワークで回避し、ボールを奪われても素早く切り替えて高い位置で取り返す。あのリバプールを相手に試合を支配することに成功する。

 25分にエデン・アザールのゴールで先制すると、その後もチェルシーペースで試合は進む。後半にはリバプールが盛り返す時間もあったが失点にはいたらない。そのまま試合が終わると思われた89分、ダニエル・スターリッジのスーパーなミドルシュートによって失点してしまう。

 イングランド人ストライカーの、キャリア最高レベルのゴールさえなければ、チェルシーが勝利していたはずだった。いずれにしても上位陣を相手にしても戦えるという手ごたえを掴んだのだ。

 好調だったクラブに暗雲が立ち込め始めたのは、12節のエバートン戦あたりからだ。チームの心臓ジョルジーニョがギルフィ・シグルズソンとワントップのリシャルリソンに露骨にマークされると、チームの攻撃が息詰まるようになる。結局、攻めきれないままマージーサイドのクラブとの対戦はスコアレスドローで終了する。

 思い返せば2-2で引き分けた9節のマンチェスター・ユナイテッド戦でも、ジョルジーニョのマークがきつかったことで停滞する時間があった。秋口には既に「ジョルジーニョを徹底マークすべし」というチェルシー攻略法が明らかになったのだ。

 エバートンの翌週のトッテナム戦でもジョルジーニョはデレ・アリとクリスティアン・エリクセンのマークに苦しみ仕事をさせてもらえず。試合自体もイタリア代表MFの守備強度の低さを突かれて3-1で完敗した。

成長した若手の選手とは

 その後、冬の過密日程による疲労で運動量が低下し、前線のプレスが外されやすくなる。すると年明けにはボーンマスに0-4、シティに0-6と大敗を喫してしまう。シティ戦の翌週にユナイテッドに敗れ、FAカップの敗退が決まった頃には、ファンの怒りは頂点に達していた。

「サッリボールはクソだ!」

「お前は明日の朝にクビになるぞ!」

 監督に罵声を浴びせようと叫ぶ者もいたほどだ。

 ただ最終的にリーグ終盤には、コンディションを低下させ勝ち点を落とすライバルチームを尻目に、高いレベルのフィットネスを維持していた。特に夏は長めに休んだエースのアザールが絶好調だったこともあり、終盤の巻き返しに成功する。その後の結果は前述の通りである。

 結果以外の良かったポイントでいうと、若手の成長だろうか。イタリア人監督は、当初、かたくなに若手を起用しなかったが、最終的には機会を与えて結果を残した選手もいた。

 そのうちの一人はルベン・ロスタフ=チークだろうか。アカデミー時代には14歳の時点でU-18の試合に出場していた逸材は、17/18シーズンにローン先のクリスタルパレスで躍動する。その活躍が認められ昨季チェルシーに復帰すると、マテオ・コバチッチやロス・バークリーとポジション争いをすることになる。

 シーズン序盤は攻守の切り替えの遅さや、ポジショニングの悪さもあり出自機会を手にできなかったが、それらも徐々に改善。最終的には大柄な選手とは思えない規格外の推進力と得点感覚を披露する。シーズン終盤にはゴールに直結する仕事を連発し、チームに不可欠な存在になりつつあった。

 思い返せばこの才能に溢れたイングランド人は、昨夏のワールドカップ後、休暇を短縮して早めにチームに合流していた。夏からの努力がシーズン終盤になって実ったのだ。

自信を失っていた選手の復活も

 ほかに成長した若手選手でいうと、若干18歳ハドソン=オドイも忘れてはならない。アカデミー時代は圧倒的なパフォーマンスを見せ、アントニオ・コンテ前監督の下でプロデビューを果たす。すると昨季のプレシーズンでは、爆発的なスピードを活かした突破力で際立った活躍を見せることに。

 序盤戦はあまり出番がなかったものの、冬以降はリーグ戦での出場が増え、最終的にはサッリ監督も「オドイはウィリアンやペドロと同じレベルで考えている」とコメントを残している。

 その証明ではないが、30節のウォルバーハンプトン戦では、1点ビハインドの状態からウィリアンを差し置いて途中投入されている。

 また26歳という年齢は、もう若手にはカウントしないかもしれないが、アントニオ・リュディガーにとっても飛躍の一年になった。身体能力の高さをいかして対人戦の強さを発揮しつつ、カバーリング範囲の広さも見せつけた。

 3人ほどのインパクトはないかもしれないが、アンドレアス・クリステンセンにも成長の跡が見られた。17/18シーズンのチャンピオンズリーグ・バルセロナ戦で、勝利を逃す致命的なパスミスを犯して以降は、自信なさげなプレーに終始し、小さなミスを繰り返していた。しかし18/19シーズンはカップ戦を中心にプレー時間を増やすと、リュディガーが負傷離脱したシーズン終盤には安定した守備で穴を埋めるようになる。

 実際、ヨーロッパリーグ決勝では、アーセナルのエメリク・オーバメヤンが無人のゴールにボールを蹴りこもうとしていた場面で、身を投げ出してゴールを死守。チームの勝利に貢献している。

 また徐々に自信も回復したのか、今までは少なかった攻撃に繋がるロングフィードを蹴る場面も増えたのも良い傾向である。

ランパード新監督の評価は

 結果そのものも悪くなく、若手も成長した。この事実を考えると、サッリ続投で問題なかったのだが、最終的には本人の意向もあり監督は交代。この顛末自体は非常に残念だ。

 しかし後任がフランク・ランパードに決まったこともあり、移籍禁止処分が下っていようとも、チームにポジティブな印象を抱いているファンも多いようだ。

 昨季はイングランド2部のダービーで、昇格プレーオフの決勝まで辿り着くなど悪くない結果も残している。最終的には昇格できなかったものの、多くの若手を成長させることにも成功した。48名いるローンバック組を生かすしか強化の手段がない今のタイミングであれば、またとない人材だ。

 ただもちろん不安もある。ランパードはクラブのレジェンドであり求心力もあるだろうが、監督経験は1年のみだ。またビッグクラブの監督は初めてであり、仕事の面だけでなくプレシャーなども含めて未知の点も多いはずだ。戦力面でも絶対的なストライカーが定まっていないという大きな課題もある。楽観視できる状況でもない。

 とは言いつつも、今回のランパード監督就任は運命に思えてならない。

 というのともランパードは現在41歳だが、15年前にジョゼ・モウリーニョがチェルシーの監督に就任した時も同じ年齢だったのだ。なお当時のモウリーニョは、開幕戦のマンチェスター・ユナイテッド戦に勝利したことでチームに勢いをもたらし、そのシーズン優勝をもたらしている。

 現実は小説より奇なりとはこのことか。今季のチェルシーの開幕戦はなんと、ユナイテッドなのである。

 15年前の再現ではないが、開幕戦で勝つことができれば、チームはいい意味で過去を思い出すだろう。モウリーニョのようにランパードも黄金期を築けるか。非常に楽しみでならない。

(文:プレミアパブ編集部)

【了】


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