ドイツ代表はオランダ代表戦4失点敗戦をどう見ている? 英雄たちの“強制引退”が次世代への英断に

ドイツ代表はオランダ代表戦4失点敗戦をどう見ている? 英雄たちの“強制引退”が次世代への英断に

ボアテング、フンメルス、ミュラーの引退は悪手ではなく英断

 EURO2020(欧州選手権)予選でドイツ代表は再建の道を歩んでいる。2018年ロシアワールドカップではグループリーグ敗退を喫し、UEFAネーションズリーグではリーグB降格という屈辱を味わったが、それまでの中心選手に“代表引退”を促して若き力を中心に据えた。先のオランダ代表戦では2-4と敗戦を喫したが、それもプロセスの一部といえる。(文:本田千尋)

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 “大国”は再び軌道に乗りつつあるようだ。9月の代表ウィークで、ドイツ代表はEURO2020予選、対オランダ代表戦と北アイルランド代表戦の2試合をこなした。

 ヨハヒム・レーブ監督率いる若き代表チームは、グループCで目下3連勝中。3月に初戦でオランダ代表を3-2で退けると、6月の2連戦ではベラルーシに2-0、エストニアに8-0と快勝。ロシアW杯で惨敗し、ネーションズリーグではリーグBに降格という悪夢のようだった18年を終えて、ドイツ代表は、19年に入ってから本来の調子を取り戻しつつある。

 9月3日付の『ハノーファーシェ・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙に掲載のインタビューの中で、レーブ監督は「EURO予選で新しいサイクルが始まっている」と述べている。

 およそ13年に渡る長期政権を継続中の指揮官は、ネーションズリーグでの降格という結果を受けて、根本的な改革の必要性に迫られたという。ウィンターブレイク明けの代表候補選手たちの状態を見極めながら、3月に重鎮のジェローム・ボアテング、マッツ・フンメルス、トーマス・ミュラーに“代表引退”を言い渡し、ドイツ代表の若返りを進めた。

 レーブ監督が振るった大ナタは、周囲から激烈な反応を呼び起こし、その突然のやり方には賛否が渦巻いた。しかし前述のとおり、セルジュ・ニャブリ、レロイ・ザネ、ヨシュア・キミッヒら20代前半の選手が半数を占めたチームでオランダ代表に競り勝ち、格下とは言え、ベラルーシ、エストニアと危なげなく白星を重ねてきている。今のところ指揮官の大胆な決断は、“悪手”ではなく“英断”だった、と言えるようだ。

 そして、ドイツ代表の選手たちは「意欲」に溢れているという。『ハノーファーシェ・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙に掲載のインタビューの中で、レーブ監督は次のように述べている。

「私はチームに旅立ちの雰囲気を感じている。人々は気付くだろう。若い選手たちが、より多くの責任を引き受けようとする意欲、翌年(EURO)は何かを達成しようとする意欲を持っていることにね」

代表チームのサイクルは4年ではなくW杯2〜3大会

 このインタビューでレーブ監督が語ることを額面通りに受け取れば、ドイツ代表は上昇気流に乗っているようだ。同時に59歳の指揮官は、まだ時間が必要なことも述べている。

「だが同時に人々は、まだ少し安定性を欠いていることに気付くだろう。アムステルダム(3月の対オランダ代表戦)での後半戦のようにね。若いチームはとてつもなくモチベーションが高い。人の言うことに耳を傾け、学ぶ意欲がある。だが、これは1つのプロセスであり、前の世代では数年間続いてきた」

 29歳のミュラーを大胆に切ったレーブ監督だが、そもそも10年の南アフリカW杯の直前、3月のアルゼンチンとのテストマッチで、20歳のミュラーを抜擢したのもレーブ監督である。

 そしてミュラーだけでなく、ボアテング、ホルガー・バトシュトゥーバー、マルコ・マリン、メスト・エジル、トニ・クロースら若手を多く連れて行き、南アフリカW杯ではベスト4に進出。さらにミュラー、ボアテング、エジル、クロースは主軸に成長し、4年後のブラジルW杯でドイツ代表は優勝した。

 W杯を3大会戦った経験のある指揮官は、こうした「プロセス」を、身をもって知っている。そして何より、萌芽(南アフリカ)→円熟(ブラジル)→終焉(ロシア)という「サイクル」を知っているのだ。

 インタビューの中で、レーブ監督は次のように言及している。

「代表チームにおいては、今日明日にそんなに全てのことを簡単に変えることはできない」

 少し話が逸れるが、W杯で優勝するためには、4年毎に区切って計画するのではなく、2〜3大会を1つの「サイクル」として捉える必要があるのかもしれない。レーブ監督が率いたドイツ代表を例に取ると、ある世代が世界王者になるまで、少なくとも2大会を必要としている。

 いずれにせよ、天国も地獄も知るドイツ代表の指揮官は、長期的な視点に立ってチーム作りを進めている。よって今回の代表ウィーク中の6日に行われたEURO予選、グループCの第5節、対オランダ代表戦では逆転負けしたが、それも「プロセス」の一環として捉えることができそうだ。

オランダ戦の敗戦、北アイルランド戦の勝利

 9分にロングボールを利用した速攻で先制に成功したドイツ代表。だが、先のインタビューで指揮官が「少し安定性を欠いている」と言及したように、後半に入ると、ロナルド・クーマン監督の大胆な布陣変更に対応し切れない。

 59分、1列上がったフレンキー・デ・ヨングを捕まえ切れず同点弾を許すと、さらに66分、セットプレーの場面で失点。これも「若いチーム」の特徴と言うべきか、ゲーム中にちょっとした混乱を招いた時に、すぐに立て直すことができなかった。

 73分には左サイドでニコ・シュルツが仕掛けて獲得したPKで再び同点に追い付いたが、79分、オランダ代表のハイプレスに苦しみ、ショートカウンターから“新星”ドニエル・マレンに決められて失点。終盤は5バックで引いて固める敵を崩せず、アディショナルタイムにカウンターを食らい、2-4で“オレンジ軍団”に敗北を喫した。

 この結果を受けて、レーブ監督は、DFB(ドイツサッカー連盟)公式HP上のインタビューで、次のように述べている。

「もちろん我々はオランダ戦の結果についてはがっかりしたよ。だが誠実になれば、何の問題もない。オランダはより優れた良いチームだった」

 CBの二クラス・ズーレは「僕たちは今から分析しなければならない。将来的に何を改善しなければならないかを」と振り返ったが、「オランダ戦の結果」を真正面から受け止め、試合を振り返って「誠実に」「分析し」、次の試合に、引いては「将来的に」活かすことができれば「何の問題もない」、といったところだろうか。

 そしてレーブ監督は、次戦の北アイルランド戦に向けて次のように言及。

「ひょっとすると、若い選手たちを少し励まさなければならないかもしれないね。君たちはできる、より強くなっている、と。我々は月曜日に、必ず、良いリアクションを示すつもりだ」

 この指揮官の宣言どおり、ドイツ代表の選手たちは、9日に敵地ベルファストに乗り込んだ一戦で、「良いリアクションを示す」ことに成功した。

 オランダ戦と同様にハイプレスからボールを奪われ、危ない場面を招くこともあったが、前半は0-0で折り返す。3日前の逆転負けの尾を引きずらず、失点には至らなかった。

 すると後半に入って間もない48分、右からのクロスが、ゴール前でユリアン・ブラントが競って左に流れる。ワンバウンドしたボールを、マルセル・ハルステンベルクがハーフボレー。先制弾を叩き込む。RBライプツィヒ所属の左SBは、自身の代表初ゴールを次のように振り返った。

「とても難しい試合だったね。北アイルランドの選手たちは90分間僕たちにプレッシャーを掛けてきた。僕のゴールは少しばかり固いフタに穴を開けたんだ」

悪夢は過去のものに。再び歩み始めた「頂点への道」

 このハルステンベルクの一撃は、オランダに敗れて味わった失望を振り払うに十分だったようだ。途中、敵が63分の決定機を外す幸運にも恵まれながら、1-0のまま後半を進めると、アディショナルタイム、カイ・ハベルツのラストパスに抜け出したニャブリが、難しい角度から決勝点を決める。

 終わってみれば2-0で北アイルランドに完勝。9月のEURO予選を1勝1敗で終えたドイツ代表は、現在、グループCの首位に立っている。本大会進出に向けて、視界は良好だ。

 北アイルランド戦を終えて、レーブ監督は「継続性が重要」とコメントを残している。

「継続性が重要になるだろう。だがそれは人々が考えているほど簡単ではない。我々はチームのあらゆる部分でオートマティズムを磨かなければならない。息の合ったコンビネーションが若いチームでは優先事項だ」

 そして「(W杯やEUROの)頂点への道は決して簡単ではない」と言う。

「我々には(EURO本大会まで)まだ数ヶ月の時間がある。オランダは再建まで3年を要した。なので我々はまだ再建の途中だということを自覚しなくてはならない。しかし同時に、我々には大きなクオリティとポテンシャルが手元にあることを示した。ザネ、ゴレツカ、ギュンドアン、リュディガー、またはシュルツのような怪我人が戻って来てメンバーが揃えば、我々はとても良いチームになるだろう」

 このように「EURO予選で新しいサイクルが始まっている」ドイツ代表。レーブ監督の哲学に照らし合わせると、EURO本大会や、その先のカタールW杯も見据えれば、今回のオランダ代表戦で力負けしたことも、北アイルランド代表戦で地力を見せて勝ったことも、「若いチーム」にとって貴重な「プロセス」だったということなのだろう。

 マルコ・ロイスは次のように振り返っている。

「北アイルランド戦での勝利は重要だった。僕たちは良い道を辿っている。このようなフェーズは、僕たち若いチームが成熟するプロセスの1部だよ」

 18年に見た悪夢は、少しずつ過去のものとなりつつある。ドイツ代表は再び目を覚まし、「頂点への道」を歩み始めている。

(文:本田千尋)


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