暗黒期寸前、チェルシーの希望…! メイソン・マウントとは何者か? 20歳の新星が叶えた夢

暗黒期寸前、チェルシーの希望…! メイソン・マウントとは何者か? 20歳の新星が叶えた夢

初のプレミア挑戦で大活躍の新星

 チェルシーが苦しい。2003年部ロマン・アブラモビッチ氏がオーナーに就任し、急速に力をつけたクラブだが、近年は補強禁止や監督人事の混乱などでその力を失い始めている。しかし、その中でも希望の光は存在する。それが20歳のMFメイソン・マウントだ。今回はマウントのキャリアを紹介する。(文:内藤秀明)

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 エデン・アザールの退団や補強禁止処分など厳しい夏を迎えたチェルシー。戦力的な損失を補うためには若手選手の奮起が不可欠だ。その意味でアカデミー出身のメイソン・マウントが披露している活躍はクラブに関わる全ての人を喜ばせている。では、マウントとはどのような選手なのだろうか。

 昨季にローン加入したダービーでもランパード監督に師事した20歳は、今季の活躍ぶりによって注目度が高まっている。

 印象的だったのは、第2節のレスター戦だ。チェルシーの選手として初めてホームの観衆の前でプレーする試合となったが、彼は緊張することなく開始7分で結果を残す。積極的な前線の守備から、レスターのMFエルフレッド・エンディディの死角に入りボールを奪取。

 その後、体勢を崩しながらも、右足でシュートを放つとボールは左隅に吸い込まれた。電光石火のカウンターに、相手GKカスパー・シュマイケルは一歩も動くことはできない。マウントは満面の笑みを浮かべファンのもとへ走り、自身のプレミア初ゴールに歓喜した

 このゴールにはマウントの強みが凝縮されている。まずは守備での献身性。スピードと走力を活かして試合終盤まで前線での守備に奔走できる。強く、正確な右足のキックも特筆するべきだ。

 開幕以降、ミドルシューターとしてだけではなく、セットプレーのキッカーとしても優秀さを示している。それでいて得点感覚もトップクラスだ。主にショートカウンターからチャンスに絡み、20歳ながら直近の2シーズン共に、年間2桁得点を達成している。

 なにより素晴らしいのは、目に見える運動量や技術だけでなく、強いメンタリティも持っていることだ。

「テリーのようになる」チェルシーでの飛躍を誓った幼少期

 1999年1月に生まれた少年は「Man of Stone( 石のように固い意志を持つ人)」になってほしいとの想いから、“Mason”と名付けられた。比較的裕福な家庭で息子のサッカーへも協力的な両親の下、メイソンは着実に実力を付けて6歳でチェルシーアカデミーに加入する。
 
 そんな彼がアカデミーに加入後に熱狂的なチェルシーファンとなったことは有名だ。幼少期のマウントがジョン・テリーやアシュリー・コールと嬉しそうに撮った写真は、ファンの間に出回っている。いつの日か大好きなブルーズで飛躍を遂げることを夢見ていたのだ。

 その意志の強さがうかがえるエピソードがある。

 15歳になり、イングランドのユース年代では広く名前が知られるようになったマウントには、他クラブからの誘いも多かった。そんな中、父親トニー・マウントは息子にチェルシーから離れることを勧めた。

「チェルシーで活躍したアカデミー出身の選手はほとんどいない。ジョン・テリーしか生き残れない過酷なサバイバルではなく、他クラブでキャリアを始めるべきだ」

 トップチームが積極的に若手起用をしないチェルシーに、息子を預け続けて良いものかと、不安に思うことは父親として当然のことだ。

 しかし、メイソンの固い意志はチェルシーと共にあった。

「テリー以来だれも活躍していない? なら次に活躍するのは僕だよ。チェルシーを離れるつもりはないし、ここが僕のクラブだよ」

 この言葉を聞いた父親は、息子のチェルシーでの夢を叶えるため、できる全てのサポートを捧げることを決心したそうだ。

苦難を乗り越え成長を手にしたオランダ挑戦

 その後も成長を続けたマウントは、18歳で大きな決断を下す。2017年の夏、オランダ・エールディビジのフィテッセへローン移籍したのだ。

 多くの若手を世界各国にローン移籍することで修業を積ませるチェルシーだが、シニアレベルの経験がない18歳を、オランダ1部リーグレベルに送り込むパターンは珍しい。それだけの期待を背負うと共に、マウントにとってはリスクの伴う挑戦だ。

 実際、フィテッセでのシーズンは苦難の幕開けだった。最初の2か月はベンチを温め続け、出場時間は途中交代の13分だった。9月以降は出場機会を増やすものの、主に途中出場がメインで信頼を獲得したとは言えなかった。

 やっとスタメンに定着できたのは12月頃だ。それまでひたむきに努力を重ねたマウントは、鬱憤を晴らすかのようにピッチで躍動し、決定機を量産し始める。

 特に印象的だったのは2018年5月に行われたヨーロッパリーグ出場権をかけたプレーオフ1回戦1stレグのADOデンハーグ戦だ。ショートカウンターから抜け出してチーム2点目を決めると、3分後には右足のミドルで追加点。加えて直接FKまでも叩き込みハットトリックを達成した。コーナーからアシストも記録したこの試合は、まさに“マウント劇場”だった。

 約4カ月間、スタメン定着に苦労した18歳のマウントだったが、最終的にはフィテッセで13得点10アシストを記録。そして、このシーズンのクラブ最優秀選手に輝くと共に、リーグのベストイレブンにも選出された。

ランパード戦術と相性抜群。課題を克服できるか

 昨季は様々なクラブからローンの誘いを受けたが、メイソンとトニー親子が最も心を動かされたのがダービーだった。当時の監督であるフランク・ランパードは、彼らの下へ足を運び「メイソンは僕が求めている資質を全て持ち合わせている」と口説き落とした。

 その言葉に嘘はないだろう。縦に速く、前線からの積極的な守備で主導権を握るサッカーを掲げるランパードにとって、マウントは最適だ。ダービーからチェルシーの監督に就任した今季も、ランパード監督にとってマウントの重要性は変わらない。実際、4節終了時点の今季のプレミアリーグで、マウントは全ての試合で先発出場を果たしている。チェルシーのトップチームでは実質1年目だが、既に中心選手なのである。

 ただしもちろんまだ20歳。欠点ゼロの完璧なプレイヤーというわけでもない。

 例えば、マウントには縦に急ぎ過ぎる癖がある。第2節レスター戦、第4節シェフィールド戦ではその姿勢が裏目にでて、単調な攻撃からボールを失い、カウンターを招くシーンも目立った。

 また、現状では周りに上手く使ってもえれば活躍する一方で、周りの選手を使う、中盤でタメを作るなどのプレーには改善の余地がある。

 とはいえ、繰り返すが、実質1年目にしては悪くない活躍を見せている上に、弱冠二十歳の若者にはまだまだ成長のための時間が多く残されている。

 今季は補強ができないこともあり、チェルシーファンにとって我慢のシーズンになりそうだ。ただしマウントが我々の想像を超える成長を見せることができれば……。笑ってシーズンを終えることができるのかもしれない。

(文:内藤秀明)


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