これがマリノスのサッカーなのか。あまりに衝撃的なゴール。相手にとっての悪夢を体現できる要因とは【週刊Jリーグ通信】

これがマリノスのサッカーなのか。あまりに衝撃的なゴール。相手にとっての悪夢を体現できる要因とは【週刊Jリーグ通信】

細部まで鍛え上げられた戦術の凄み

明治安田生命J1リーグ第29節、横浜F・マリノス対湘南ベルマーレが19日に行われ、横浜F・マリノスが3―1で快勝した。前半39分にGK朴一圭の相手の裏をかく“スーパークリア”を起点に先制点を挙げると、その後もハイテンションに攻め続けて勝利し、勝ち点を55に伸ばした。首位・鹿島アントラーズ、2位・FC東京に勝ち点差1に迫り優勝も見えてきた、ファンタスティックなサッカーをピッチ上で表現できる要因とは。(取材・文:下河原基弘)
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 これがマリノスのサッカーなのか。分かっていても、衝撃を覚えずにいられないゴールだった。0−0の前半38分、DFラインの裏に出てきたボールを、横浜F・マリノスのGK朴一圭が高い位置まで飛び出して、相手より一瞬早く、右前方のタッチライン際に高く蹴りだす。やや苦しい体勢だっただけに、ただのクリアかに見えたが、そこには秘密が隠されていた。

「あれは狙いました。いつも、なるべく狙っているんですけど、あれはうまく蹴れましたね。ああいうボールって相手は止まると思うんですよ、(サイドラインを)出ると思っているので。うちのテル(FW仲川輝人)とかは反応してくれるので、その結果得点に結びついて自分の中でも気持ちのいいプレーでした」と守護神が話したキックは、相手イレブンを“欺く”、ライン際へのパスだったのだ。

その言葉通り、湘南ベルマーレの選手が見送るように動きを止めたのに対し、仲間を信じ意図を感じていた仲川は、するする落下地点に走りこみ、右サイドラインぎりぎりで回収。そこから一気にドリブルで前に運びクロスを供給した。

ゴール前の選手には合わず、一度は逆サイドに流れたが、そこからつながったボールが再び背番号23に戻ると、後手後手になっていた湘南は対応しきれない。仲川が技ありのシュートを豪快に決めて先制点が生まれた。

「ちょっと嫌な展開になりかけたところでの先制点だったので、すごく助かった」とMF扇原貴宏が話すように、横浜にとっては貴重なゴール。だが、それはDFラインの裏をつかれかけるという、ともすればピンチになりかける場面から生まれていた。

 攻めていたはずが、あっという間に失点しているという形は、対戦相手にとっては悪夢でしかないだろう。攻撃を前面に押し出しつつ、細部まで鍛え上げられた戦術面の凄みを感じさせる一連の流れだった。

けが人が出た時、アクシンデントがある時のコミュニケーション

 このゴールで完全に勢いに乗ったマリノスは、後半7分にFWマテウスが直接FKを決めると、同23分にはPKからMFマルコス・ジュニオールが決定的な3点目を奪い勝負を決めた。終了間際に1点を取り返されたが3−1の完勝。

「本当にスタートからストロングな部分、そしていいパフォーマンスで、マリノスらしいサッカーを見せられたかなと思います。1人1人の選手たちが誇らしいです」とアンジェ・ポステコグルー監督もご満悦の様子だった。

 優勝も見えてきたマリノスの強さ。ピッチ上のパフォーマンスは当然だが、選手の話を聞いて見えてきたのは精神面の充実ぶりだった。指揮官が目指す超攻撃的なサッカーについて、「楽しんでやってますし、みんな信じてやっているので。このサッカーを全選手、全スタッフ、もうチームにかかわる人みんな信じ切っていますし、そこに対しての自信は持っている。みんなのやり続ける姿勢だったり、信じる姿勢みたいなものが結果につながっていると思っています」と話したのはMF喜田拓也。

 時間をかけて築き上げてきたチームの根幹が、選手たちに心から信じられていることで、より強固になっているのを感じさせた。

 そして試合中、目を引く場面があった。前半42分、自陣ゴール前でDF畠中槙之輔が接触プレーで倒れると、近くにいたほとんどの選手が、心配そうに畠中の周りに集まって気遣った。走り寄れない遠くにいた選手も、その時間を無駄にしないようにとお互い話しあったり、ベンチからの指示を聞くなどしていた。チームの団結力や意識の高さがうかがえた。

「けが人が出た時にコミュニケーションを取るとか、アクシデントがある時にコミュニケーションを取るとかで、改善するというのは練習中から起きている現象なので。今日だけというのでなく、普段からあることなのですけど、みんなが意識できていることが、そういう言動だったり行動だったりに現れているのだと思います」と話したのは朴。

「もう残り5試合、今日含めて6試合で優勝を狙えるポジションにいて、みんなが俺たちは優勝するんだ、目標は優勝と、(試合に)出ている選手、出ていない選手関係なしにベクトルが同じ方向を向いている」と守護神は力を込めた。技術や戦術だけでなく、内面的な部分でもマリノスは頂点に立つ準備ができているように見える。

選手たちが口をそろえる“信”の言葉

 試合後、選手たちの口から何度も出ていたのが「信じている」、「信頼している」、「自信を持っている」などの“信”という言葉だった。その対象は監督だったり、戦術だったり、仲間の選手のことだったりしたが、日々の練習の中で、そして試合を続ける中で培われてきたものが、優勝を争う最終盤にこそ、さらに大きな力になるかも知れない。

「完璧なゲームではなかったので、それはまた良かったなと思いますね。(最後の10分)それも含めてのゲームコントロールの向上の余地もあるので。最後一番上に立つという時のためには、もっと上げれるところがあると思うので」と、慢心のかけらも見せずに語ったのは喜田。

 扇原も「僕たちは勝ち続けるしかないので、しっかりと残り5試合きちんと勝って、その結果優勝できていたらいいし、そういう目の前の試合を、1試合1試合勝っていくことだけに集中したいです」と力強く言い切った。

 これでリーグ戦、2連勝。6戦負けなし(5勝1分け)で、この間は17得点4失点とラストに向けて調子を上げてきた。先制点を挙げた仲川のけがは心配の種だが、それも乗り越えて、マリノスが2004年以来の頂点を目指す。

(取材・文:下河原基弘)

【了】


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