【U-23日本代表 1-1 U-23カタール代表 U-23アジア選手権・グループB第3節】

 日本代表は15日、AFC U-23選手権(東京五輪アジア最終予選)グループステージ第3節でU-23カタール代表と対戦し、1-1のドローに終わった。前半間際に田中碧が一発退場となり、後半には齊藤未月のファウルでPKが与えられるなど、日本代表は“疑惑の判定”に泣かされた結果となった。

 この試合を大きく左右したのはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の存在である。1年前のアジアカップでは準々決勝以降の7試合で使用されたが、今大会ではアジアサッカー連盟(AFC)主管の公式大会としては初めて全試合で導入されている。

 初戦のサウジアラビア戦からVARの介入が大きな影響を与えた。1-1で迎えた試合終盤に自陣でのバックパスを拾われると、DF岡崎慎が並走する相手選手を倒してしまう。PKの判定が下され、OFR(オンフィールドレビュー/主審による映像確認)が行われたが、PKの判定は覆らなかった。

 2戦目のシリア戦では、CKの処理のためにDF町田浩樹が出した足が、相手選手の顔に当たってしまった。一度はゴールキックの判定を下した主審だったが、OFRを行った結果、PKの判定が下された。

 この試合では、前半終了間際の競り合いでMF田中碧と相手選手が接触。初めはノーファウルの判定だったが、VARの助言によってOFRが行われる。すると、判定が覆って田中碧にはレッドカードが与えられた。

“疑惑の判定”は後半に起きた。日本代表が先制した直後、MF齊藤未月が出した足が相手選手に当たり、カタールにPKが与えられた。しかし、これも微妙なシーンで、VARと主審はコミュニケーションをとっていたが、OFRは行われず。そのままPKが行われて日本代表は同点とされた。

 映像を見る限りでは、齊藤が一瞬先にボールに触れて、その直後に相手選手が蹴っているように見える。角度によっては接触の有無がわかりづらく、たしかに判断に迷うシーンと言えるだろう。しかし、OFRが行われることはなかった。

 そもそもVARの哲学は判定の正しさではなく、「明白な間違いをなくすこと」にある。シリア戦のシーンでは主審は接触を見逃していたが、VARの助言によって判定の間違いは正された。もし齊藤が相手選手に蹴られていた場合、最初に主審が下した判定は「明白な間違い」となる。

 さらに、VARには最終決定を下す裁量が与えられていない。判定を下すのはあくまでも主審であり、VARはフィールド上にいる審判員をサポートするために存在している。にもかかわらず、主審によるOFRが実行されることはなかった。

 ここで指摘しているのはPKだったかどうか、蹴ったのか、蹴られたのかではない。「明白な間違い」がある可能性を含んだプレーに対して、OFRが行われなかったことである。その点は、この試合を裁いた審判団のミスだったのではないだろうか。

 VARはロシアワールドカップなどで1年半前から導入され、UEFAチャンピオンズリーグや、欧州の主要リーグでも続々と導入されている。しかし、競技規則を制定・改定するIFAB(国際サッカー評議会)が定めているはずだが、各協会によって運用方法が異なっているという声が多く上がっている。

 JFA(日本サッカー協会)も研修や育成年代の大会での試行、Jリーグでのオフラインテストを経て、JリーグのYBCルヴァンカップでは準々決勝以降の13試合とJ1参入プレーオフ決定戦に導入された。来季からはJ1全306試合を含む321試合での導入が決まっている。

 JFAが説明している通り、VARの導入によって誤審がなくなるわけでもなければ、最良の判定が下されるわけでもない。あくまでも「明白な間違い」をなくすためのシステムなのだが、客観的に見ればまだ多くの疑問が残されている。

(文:編集部)

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