南米予選の得点王

CONMEBOLプレオリンピック大会の決勝ラウンドを戦ったU-23ブラジル代表は、東京五輪出場の切符を掴んだ。自国開催となった前回大会のリオデジャネイロ五輪で優勝を果たし、今大会でも有力な優勝候補になるだろう。そこで、U-23ブラジル代表として南米予選に出場し、五輪本番でも活躍が予想される3人の注目選手を、南米在住の記者が紹介する。(文:北澤豊雄)

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FW:マテウス・クーニャ(ヘルタ/ドイツ1部)
生年月日:1999年5月27日(20歳)
今季リーグ戦成績:10試合出場/0得点1アシスト

 東京五輪南米予選の得点王マテウス・クーニャは、人口約80万人、ブラジル北東部パライバ州ジョアンペソア市で生まれた。地元のフットサルクラブ「カボ・ブランカ」でボールを蹴り始めると、8歳の少年のプレーは評判になり、10歳のときには南隣のペルナンブコ州レシフェ市のフットサルクラブ「バロン」に移籍した。

 それが転機となった。11歳のある日、少年のプレーに惚れ込んだ男がいた。かつて三浦知良も所属していたブラジルリーグの古豪コリチーバFCのスカウトだった。以降、コリチーバFCの下部組織で技術を磨き、18歳でスイスに渡ると卓越したボールコントロールとゴールハンターとしての才能が目覚める。1年目で二桁得点を上げて翌年、ブンデスリーガーのライプツィヒ行きの切符を手にした。

 身長184センチのテクニシャンは、南米予選の最終節のアルゼンチン戦、前半30分に敵陣のペナルティエリア付近でキーパーと1対1になった。クーニャはボールを高く浮かせて体を交わし、そのボールがワンバウンドで地面から少し上がった瞬間をスライディングシュートで捉えている。こうしたフットサル仕込みの所作に、南米予選のマーカーたちは翻弄されっ放しだった。

 南米の得点王から目が離せない。

陸上出身のサイドバック

DF:ドド(ドミウソン・コルデイロ・ドス・サントス)(シャフタール・ドネツク/ウクライナ1部)
生年月日:1998年11月17日(21歳)
今季リーグ戦成績:11試合出場/1得点1アシスト

 南米予選の決勝リーグ第2節。コロンビア戦で右サイドを弾丸のごとく駆け上がっていく小柄なサイドバックがいた。豊富な運動量と対人プレーの強度にくわえて抜群のスピード。コロンビアの右サイドを蹂躙していた男は、サンパウロ州のタウバテという人口約30万人の街で生まれている。褐色の10歳の少年はしかし、陸上競技に興味があった。毎週土曜日に競技場で100メートルを競うために日々のトレーニングを積み重ねていた。

 ところが――。同じ頃、サッカーの試合に出場すると、少年はフォワードとして瞬く間に得点を決めてしまう。そんな彼を周囲が放っておくはずはなかった。14歳のとき、サンパウロ州の大会に出場すると、ブラジルリーグの古豪コリチーバFCに目を付けられ、下部組織のテストに合格。以降、陸上少年は右サイドバックに転身して瞬く間に階段をのぼっていくのである。

 2016年にトップチームに昇格してレギュラーの座を掴むと、年代別の代表にも選出されるようになる。2017年にはウクライナの強豪シャフタール・ドネツクに移籍し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)にも出場した。

 南米予選のブラジル代表メンバーの中ではもっとも小柄な身長166センチながら攻守に渡って活躍。大会期間中にドイツの名門バイエル・ミュンヘンが関心を寄せているという報道もあった逸材である。

ブラジルの将来を担うキャプテン

MF:ブルーノ・ギマランイス(オリンピック・リヨン/フランス1部)
生年月日:1997年11月16日(21歳)
今季リーグ戦成績:25試合出場/2得点1アシスト(2019年ブラジル全国選手権)

 ブルーノ・ギマランイスの存在なくして南米予選の突破はあり得なかった。キャプテン、ボランチとしてチームを牽引。大会期間中に、フランスの名門リヨンへ2000万ユーロ(約24億円)で移籍が決まった優良銘柄だが、リオデジャネイロ生まれの少年は、地元の名門フルミネンセとフラメンゴの下部組織のテストに落ちている。

 父はタクシー運転手、母はセールスレディの家庭で育った。6歳の頃に肺炎になったのを機に、母は息子を水泳教室に連れて行った。父は1日平均15時間も働いて家計を支えたが、それでも時間を作ってサッカー選手を目指す息子の練習に付き添ったという。

 サンパウロ州のグレミオ・オザスコ・アウダックスの下部組織で才能が開花。2017年にトップ昇格すると、すぐに目立つ存在になり、アトレティコ・パラナエンセへ移籍を果たした。ドイツ代表のMFイルカイ・ギュンドアンが好きだということからも分かるように、卓越したパスセンスを持ち、鳥の目のようにピッチ全体を俯瞰するゲームメイカーだ。

 南米予選の大事な初戦。ペルー相手に苦しんでいたブラジルは後半43分に均衡を破った。敵陣ペナルティエリアの外側の中央付近でボールを受けたギマランイスが、ディフェンス陣の一瞬の隙をついて鋭いパスを出すと左サイドから走り込んでいたパウリーニョ(レバークーゼン)がキーパーと交錯寸前に左足で流し込んでいる。

 南米予選のスタジアムで知り合ったブラジル人記者は、「タクシー運転手だった父親の話が有名だが、彼はブラジルの将来を担うはず」と太鼓判を押していた。

【了】