モンバエルツ体制のスタート(2015年)

 Jリーグの各クラブは、毎年メンバーを変えながらシーズンを戦っている。5年前と比べると、ほとんどのチームでメンバーの大半が入れ替わっている。今回、フットボールチャンネルでは、横浜F・マリノスの過去5年間の主要メンバーや基本システムをシーズンごとに紹介していく。

———–

【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:7位(1st:6位/2nd:5位)
ヤマザキナビスコカップ:グループリーグ敗退
天皇杯:4回戦敗退

 シティ・フットボール・グループ(CFG)との関係が強くなり始めた2015年、フランス人のエリク・モンバエルツ監督が就任した。

 ただ、シーズンを通して上位争いに絡むことはできず、中位をさまよって年間7位でフィニッシュ。1stステージは6位、2ndステージは5位だった。リーグ戦年間32失点は18チーム中2番目の少なさだったが、攻撃に爆発力を欠いた。

 ヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)でもグループリーグ6試合で2勝しか挙げられず敗退。天皇杯もヴィッセル神戸に屈して4回戦敗退と、カップ戦でも目立った結果を残すことができなかった。

 とはいえディフェンスラインは盤石で、小林祐三、中澤佑二、ファビオ、下平匠で構成する4バックは年間通してほとんど変わらず全員がリーグ戦30試合以上に出場。堅守のマリノスのアイデンティティを象徴する安定感を見せた。

 一方で攻撃陣はサンパウロFCから加入した元ブラジルU-23代表FWアデミウソンが8得点と気を吐くも、二桁得点者は1人もいなかった。齋藤学が7得点、伊藤翔が6得点と主力のアタッカーたちが軒並みパンチ力不足を露呈する結果に。

 そうなってしまった大きな要因は、トップ下で絶対的な存在だった中村俊輔が度重なる負傷に苦しめられてフル稼働できなかったことにある。5年連続でキャプテンを任された司令塔は、シーズン開幕前に左足首を手術して復帰まで約2ヶ月を要した。しかし、復帰して約1ヶ月後に今度は肉離れで長期離脱を強いられ、初めてのフル出場が7月中旬になるなど精彩を欠いた。

 それでもリーグ戦で3本の直接フリーキックを、現役日本代表GKの3人から決めるなど、世界屈指の左足の精度は健在で、出場すれば存在感は絶大。長期離脱は大きく響いたものの、改めて代役不在の価値ある選手であることを示した。

▽GK
飯倉大樹

▽DF
小林祐三
中澤佑二
ファビオ
下平匠

▽MF
三門雄大
喜田拓也
アデミウソン
中村俊輔
齋藤学

▽FW
伊藤翔

中村俊輔ラストイヤー(2016年)

【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:10位(1st:11位/2nd:7位)
YBCルヴァンカップ:準決勝敗退
天皇杯:準決勝敗退

 モンバエルツ体制2年目、アデミウソンが期限付き移籍期間満了にともなってサンパウロに復帰したのちにガンバ大阪へ移籍してしまう。やはり攻撃力不足の解消が課題で、補強ポイントにもなった。

 リーグ開幕後にフラメンゴからブラジル人FWカイケ、ルーマニアのボトシャニからキュラソー代表FWマルティノスを獲得。彼らにかかる期待は大きかったが、前者は大きな失望だけを残し、後者はなかなかフィットせず苦しんだ。

 チームも序盤に3連勝があるなど好スタートを切ったが、徐々に勝てなくなり、4月下旬から3連敗を含む5試合勝ちなしという時期も。結果的に1stステージは6勝4分7敗と負け先行で10位に沈んだ。堅守速攻のスタイルは確立しつつあったものの、前年に比べやや失点が増え、攻撃力不足は改善されないままだった。

 だが、一転して2ndステージは攻撃面に大きな改善が見られ、32得点19失点の成績で7位に。第1節から3連勝、さらに8試合負けなしという快進撃もあり、最終的には7勝8分2敗で終えた。それでも勝ちの数が伸び切らず年間順位は前年度を下回る10位に終わった。一方でカップ戦はYBCルヴァンカップと天皇杯でともに準決勝進出を果たした。

 6年連続でキャプテンに就任した中村俊輔は、1人のスターに頼らない新しいチーム作りを進める中で徐々に居場所を失っていった。リーグ戦は19試合出場で4得点と不本意なパフォーマンスに終わり、結果的にシーズン終了後にジュビロ磐田への移籍を決断することになる。

 新たな得点源として期待されたカイケは4得点に終わり、私生活における奔放さやチームの規律を乱す行為が続いて信頼を失った。その中で齋藤学が10得点を挙げる活躍でJ屈指のアタッカーとしてブレイクを遂げ、後半戦大卒ルーキーのFW富樫敬真や3年目の天野純が頭角を現し、のちにキャプテンを任される生え抜きの喜田拓也も主力に定着。

 またシーズン終了とともに中村俊輔のみならず、小林祐三、兵藤慎剛、榎本哲也という功労者たちが相次いで退団したことで、より一層世代交代の空気を感じさせた。

▽GK
榎本哲也

▽DF
小林祐三
中澤佑二
ファビオ
金井貢史

▽MF
喜田拓也
中町公祐
マルティノス
中村俊輔
齋藤学

▽FW
カイケ

10番は齋藤学の背中に(2017年)

【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:5位
YBCルヴァンカップ:グループリーグ敗退
天皇杯:決勝進出

 中村俊輔が磐田へ移籍した後、キャプテンの腕章を受け継いだのは齋藤だった。自ら偉大な前任者が着けていた10番の継承を志願して、チームの顔となった。

 外国籍選手の補強もヨーロッパ路線に舵を切り、1860ミュンヘンからオーストラリア代表DFミロシュ・デゲネク、レッドスター・ベオグラードからポルトガル人FWウーゴ・ヴィエイラとマケドニア代表MFダビド・バブンスキーを獲得した。

 さらに柏レイソルから山中亮輔、アルビレックス新潟から松原健、名古屋グランパスから扇原貴宏と即戦力の日本人選手たちも獲得。モンバエルツ体制3年目で堅守速攻に磨きをかけつつ、直近3年間で最高となるリーグ戦5位でフィニッシュした。

 前半戦は3連敗もあるなど、なかなか継続して結果を出せず苦しい戦いだった。それでも後半戦はわずかに4敗で、連敗も一度だけ。17勝8分9敗という成績で、モンバエルツ体制では最高の5位。カップ戦ではYBCルヴァンカップこそグループリーグ敗退に終わったものの、天皇杯では2013年以来となる決勝進出を果たしてタイトル獲得に目前まで迫った。

 キャプテンに就任した齋藤は、その重圧にも苦しんで初ゴールは第26節の柏レイソル戦まで待たなければならず。一方で2年目のマルティノスが快足を生かしたドリブル突破と高精度のクロスで猛威を振るい、リーグ戦で5得点6アシスト。新戦力のウーゴ・ヴィエイラも10得点と存在感を示し、松原や山中、デゲネクも最終ラインの主力に定着してチームに大きく貢献した。

 誤算だったのは、やはり齋藤の長期離脱だろう。リーグ戦初ゴールを挙げた直後の第27節、ヴァンフォーレ甲府戦で右膝前十字靭帯損傷の重傷を負い、全治まで約8ヶ月と診断されたことでシーズン中の復帰は絶望に。その後、10番を背負ってキャプテンを引き継いでわずか1年で育成組織時代から過ごしたマリノスを離れ、神奈川県内のライバルクラブ、川崎フロンターレへの移籍を決断した。

 また、シーズン終了とともにモンバエルツ監督が退任。攻撃の核だったマルティノスが浦和レッズへ移籍することになった。

▽GK
飯倉大樹

▽DF
松原健
ミロシュ・デゲネク
中澤佑二
山中亮輔

▽MF
喜田拓也
中町公祐
マルティノス
天野純
齋藤学

▽FW
ウーゴ・ヴィエイラ

ポステコグルー改革の幕開け(2018年)

【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:12位
YBCルヴァンカップ:決勝進出
天皇杯:4回戦敗退

 モンバエルツ監督の後任に就任したのは、オーストラリア代表監督を務めた経験を持つアンジェ・ポステコグルー監督だった。超攻撃的な哲学を持つギリシャ系オーストラリア人指揮官はさっそくチームスタイルの大転換に着手する。

 最終ラインの設定を極めて高くし、徹底的にパスをつなぐ攻撃サッカーは、それまでのモンバエルツ監督が築いてきたスタイルとは真逆に近いものだった。その中で、仲川輝人が大ブレイクを果たし、生え抜きの遠藤渓太も主力に定着。ウーゴ・ヴィエイラも前年を上回る13得点で攻撃陣をけん引した。

 それまで得点力が課題だったチームは、リーグ2位の56得点を記録。ところが逆に守備が安定感を失い、リーグワースト3位の56失点。勝ち星もなかなかつかず、最終盤まで残留争いに巻き込まれてしまう。その最中、夏にFC東京から久保建英が期限付き移籍で加入し、2013年途中から続いていた中澤佑二のJ1連続フル出場記録が178試合で途切れた。

 全試合を終えて勝ち点41で12位から16位までに5チームが並び、得失点差でマリノスは12位となり、16位の磐田がJ1参入プレーオフへ。自動昇格の17位・柏レイソルとも2ポイントの僅差で、ぎりぎり降格の危機を回避することができた。リーグ戦の負け越しは2006年以来、12年ぶりという屈辱的なシーズンとなってしまった。

 それでもYBCルヴァンカップで2001年以来となる決勝進出を果たし、カップ戦では2年連続で決勝の舞台に。スタイルの大転換で苦しむ中、次のシーズンにつながる希望も掴みつつポステコグルー体制1年目は幕を閉じた。そして膝の負傷に苦しめられていた中澤はリーグ最終節で復帰を果たし、その試合を最後に現役引退を表明した。

▽GK
飯倉大樹

▽DF
松原健
ドゥシャン
チアゴ・マルチンス
山中亮輔

▽MF
喜田拓也
扇原貴宏
天野純

▽FW
仲川輝人
遠藤渓太
ウーゴ・ヴィエイラ

15年ぶりのJリーグ制覇(2019年)

【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:1位
YBCルヴァンカップ:グループリーグ敗退
天皇杯:4回戦敗退

 雌伏の時を経て、ポステコグルー監督による改革の成果が花開いた。爆発的な攻撃力を武器に勝利を積み重ねたマリノスは、最終節でFC東京を振り切って15年ぶりのJ1リーグ制覇を果たすことになる。

 中澤が引退し、久保がFC東京に復帰。伊藤翔が鹿島アントラーズへ、山中が浦和へと移籍するも、新たに獲得した選手たちが輝いた。

 フルミネンセから加入した元ブラジルU-20代表FWマルコス・ジュニオールは、仲川とともに15得点を挙げてリーグ得点王に。バイーアから獲得したエジガル・ジュニオは負傷離脱するまでにリーグ戦16試合出場11得点。FC琉球から加入のGK朴一圭や徳島ヴォルティスから加入した広瀬陸斗といったJ1初挑戦の新戦力も主力に定着した。

 夏には天野と三好康児がベルギーへの移籍を決断するも、シーズン途中から加入したマテウスやエリキが攻撃陣を引っ張る活躍でエジガルの負傷離脱も含め穴を埋める以上の大活躍を披露した。マルコス・ジュニオールをトップ下に据える4-2-3-1が定着してからは圧倒的な戦いぶりでマリノスがリーグを席巻する。

 終盤の11試合は7連勝も含む、10勝1分。シーズンを通して見ても22勝4分8敗の勝ち点70でJ1を制した。他を圧倒する68得点の攻撃力のみならず、全シーズンに課題だった失点数を「38」に抑えてポステコグルー監督の志向するアタッキング・フットボールの1つの完成形を導き出した。

 その過程でセンターバックの主力に定着した畠中槙之輔が抜群のパスセンスを武器に日本代表に定着し、シーズン後に遠藤や仲川もA代表デビュー。異次元のスピードと対人の強さで猛威を振るったチアゴ・マルチンスはJ1最高のセンターバックという評価を確立した。

▽GK
朴一圭

▽DF
松原健
チアゴ・マルチンス
畠中槙之輔
ティーラトン

▽MF
喜田拓也
扇原貴宏
マルコス・ジュニオール

▽FW
仲川輝人
マテウス
エリキ