「僕の決定力不足で負けた」

J1の再開は5月にずれ込むことになり、東京五輪は今夏の開催が見送られることが決まった。思いがけずおとずれた中断期間に、東京五輪世代の選手たちは何を思うのか。期限付き移籍していた水戸ホーリーホックからジュビロ磐田に復帰した、22歳の小川航基にその胸中を聞いた。(取材・文:元川悦子)
———————————————————–

 新型コロナウイルスの感染拡大で3月28〜29日の週末は関東のクラブが活動を自粛し、ガンバ大阪やセレッソ大阪、サンフレッチェ広島などが長期オフを取るなど、各クラブの対応が分かれている。静岡のJクラブである清水エスパルスとジュビロ磐田は通常通りの動きを継続。28日にはIAIスタジアム日本平で今季初の静岡ダービーとなる練習試合を無観客で実施した。

 このゲームはDAZNでも放映され、サポーターは久しぶりに選手の一挙手一投足を目の当たりにすることができた。45分×4本のゲームは11対2(1試合目は3-2、2試合目は8-0)で清水が圧勝したが、最初の得点を奪ったのは、磐田の若きエース・小川航基だった。

 1試合目の前半35分、宮崎智彦からスルーパスを受けた背番号9はハイラインを敷く相手の背後を取り、一気に抜け出した。そして、GKネトを巧みなフェイントでかわしてシュート。ボールは無人のゴールに吸い込まれていった。

「僕と(三木)直土の2トップで相手の背後をすごくいい形で取れていたんで、何回かチャンスが来るだろうと思っていた。冷静に処理できたかなと思います」と小川は言う。

 しかしながら、内容的に押していたのに、後半のラストに逆転を許して、2-3で苦杯を喫したのは悔いが残るところ。

「相手がJ1っていうのもありますし、ダービーっていうのもあって、この試合に掛ける思いは強かった。そこで勝てなかったのはすごく悔しいです。僕個人も前半に決められるシーンが沢山あったし、僕の決定力不足で負けたといってもいいくらいのパフォーマンスだった。この中断期間にどれだけ差をつけられるか、モチベーションを高く持ってやれるかが今後に表れてくると思うので、しっかり取り組みたいと思います」と磐田のエースFWは新たな闘志を口にした。

「自分の存在価値は…」

 この清水戦の直前、東京五輪の1年延期が正式に決まった。97年生まれの彼に出場資格が与えられるかどうかに関しては、国際サッカー連盟も国際オリンピック委員会も何の指針も出しておらず、未知数なのは確かだ。本人も不安を拭いきれない部分があるようだ。フェルナンド・フベロ監督は「それは我々には決められないこと」と話したが、どんな決定が下されようとも従うしかないのが選手の立場だ。

 ただ、東京五輪経由でA代表定着を目指している小川にとって、その大舞台は絶対に立たなければいけない場所。強い思い入れがあるからこそ、代表に選ばれるようなパフォーマンスを続けていく必要があると強く思っているのだ。

「東京五輪の延期はもう決まってしまったこと。しっかりと次の年に開催され、僕の年齢制限もクリアできると信じて準備するしかない。この準備期間をポジティブに捉えて、決定力の部分を上げていくことが大事。自分の存在価値はゴールだと思ってますし、チームがJ1に上がるために僕が決めないといけない。再開した時には2ゴールした(モンテディオ)山形戦よりもパワーアップしたプレーを見せたいです」と彼は目をぎらつかせた。

 かつての名門・磐田が1年でJ1復帰を果たすためには2位以内に入るしかない。今季はJ1・J2ともに降格ナシ、J1昇格枠は上位2位以内のみというイレギュラーなルールが設定されたため、これまでのように6位以内でもプレーオフに進むことはできないのだ。

「J1では何もできなかった」

 磐田は昨季後半に就任したフベロ監督が続投し、大井健太郎や藤田義明、山本康裕といった実績ある面々も残ってはいるものの、やはりゴールを奪える大黒柱の存在が必要不可欠だ。小川はルキアンとともに軸を担う選手。昨季レンタルで赴いた水戸ホーリーホックでは7ゴールを奪っているものの、2016〜2019年途中まで在籍した磐田ではリーグ戦で1点しか取れていない。今季は開幕2ゴールという幸先のいいスタートを切ったものの、真価を問われるのはまさにここからなのだ。

「僕はJ1では何もできなかった。去年の半年間と今、J2でやってますけど、J1相手にどこまでできるかをこの清水戦で試したかった。ゴールまでいく過程はよかったですし、監督がやりたいサッカーは多少やれたところがあったと思いますけど、押し込んでいても最後のところでポンと決められてしまう。そういう時の判断や集中力をしっかり持たないといけないと痛感させられました。清水の方が一枚上手だったのかなとは感じましたけど、なんだかんだ言って勝っちゃうところは僕らにとっても大事。J2で優勝してJ1に戻れるようにしっかりやっていきたいと思います」

 今回コンビを組んだユース出身の三木との連携も悪くなく、ルキアンがケガから復帰してくればまた違った得点パターンも築けるだろう。そうやって小川が「味方を生かして自分も生きる」といったベストバランスを見出せれば、ゴール量産は可能なはずだ。昨季J2をブッチ切りで優勝した柏レイソルには27ゴールを挙げたオルンガ、19ゴールを挙げたクリスティアーノがいた。極めて高い領域ではあるが、そのレベルに到達できれば、J1昇格も、東京五輪出場も、A代表定着も見えてくるに違いない。

 コロナ騒動に五輪延期、Jリーグもスケジュールが二転三転するなど混乱が続く2020年だが、この苦境を乗り越えてこそ、輝かしい未来が開けてくる。今こそ小川にはひと踏ん張りしてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】