日韓ワールドカップ

 ブラジル代表は長きに渡ってサッカー界をけん引し、その輝かしい歴史の中で「10」という背番号のイメージも作り上げてきた。世界の覇権を争う舞台で重要な意味を持つ背番号を任された選手たちはどんな活躍を見せたのだろうか。直近のワールドカップ5大会でサッカー王国・ブラジルの背番号10を務めた選手たちを大会ごとに振り返る。※所属クラブは大会前時点、年齢は初戦時点のもの

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背番号10:リバウド(バルセロナ)
生年月日:1972年4月19日(当時30歳)
個人成績:7試合出場/5得点1アシスト

監督:ルイス・フェリペ・スコラーリ
戦績:優勝

 1998年のフランスワールドカップにも出場し、ブラジル代表にとって欠かせない選手だったリバウドだが、日韓ワールドカップ直前の2001/02シーズンはクラブで苦しい1年を過ごしていた。バルセロナでハビエル・サビオラやパトリック・クライファートと超強力トリオを形成していたものの、リバウド自身は負傷に苦しめられて在籍5年目にして最低の成績に。

 リーグ戦で35試合出場23得点を叩き出した2000/01シーズンから打って変わって、2001/02シーズンは20試合出場8得点にとどまった。ブラジル代表でも南米予選に苦戦し、やっとの思いで日韓ワールドカップ出場権を獲得。2大会連続で背番号10を任されながら、逆境に晒されていた。

 ところがワールドカップ本大会が始まると、リバウドは大爆発。ロナウジーニョやロナウドとともに「3R」と呼ばれ、グループリーグから準々決勝のイングランド戦まで5試合連続ゴールと驚異的な活躍を披露する。

 そしてドイツと対戦した決勝でも、リバウドの強烈なシュートが鬼神の如きパフォーマンスを見せていたGKオリバー・カーンのミスを誘い、ロナウドの先制ゴールを演出。2点目の場面でも華麗なスルーでロナウドの追加点をお膳立てした。背番号10の復活に導かれ、ブラジル代表は5度目のワールドカップ制覇を果たすこととなった。

●決勝・ドイツ戦の先発メンバー

▽GK
マルコス

▽DF
ホッキ・ジュニオール
エジミウソン
ルシオ

▽MF
カフー
ジウベルト・シウバ
クレベルソン
ロベルト・カルロス

▽FW
リバウド
ロナウジーニョ
ロナウド

ドイツワールドカップ

背番号10:ロナウジーニョ
生年月日:1980年3月21日(当時26歳)
個人成績:5試合出場/0得点1アシスト

監督:カルロス・アルベルト・パレイラ
戦績:ベスト8

 2連覇の期待度は高かった。ロナウジーニョ、アドリアーノ、ロナウド、カカの4人で構成される「カルテット・マジコ(魔法の4人組)」は大会を席巻するのではないかと見られていた。ロナウジーニョ自身、前年のコンフェデレーションズカップで3得点を挙げ、優勝に貢献したうえ、所属するバルセロナでは2005/06シーズンのチャンピオンズリーグを制覇。まさにキャリア最高の時期を過ごしていた。

 一方でチーム全体の高齢化が進み、ピークを過ぎているとの懸念もあった。結局、ドイツでのワールドカップ本大会が始まるとブラジル代表は低調で、「カルテット・マジコ」も4人で5得点と期待を大きく裏切った。ロナウジーニョは5試合に出場するも無得点、アシストも1つのみ。チームとしてもフランス代表に敗れた準々決勝では枠内シュートがわずかに1本と、完全に沈黙した。

 ブラジル代表は欧州開催のワールドカップで結果を残せないジンクスを抱えたまま、ベスト8止まり。もちろん選手たちはファンやメディアから苛烈な批判に晒されたが、CL制覇を成し遂げて燃え尽き気味だったロナウジーニョにとってはどこ吹く風だった。

 ワールドカップからバルセロナに戻ってすぐ、彼は自宅にアドリアーノを招いて盛大なパーティーを開催し、夜通し遊び呆けて非難を浴びる。この頃から稀代のファンタジスタは私生活での不摂生や放蕩ぶりが祟ってパフォーマンスを徐々に落とし、輝かしいキャリアに影が差すようになっていく。

●準々決勝・フランス戦の先発メンバー

▽GK
ジダ

▽DF
カフー
フアン
ルシオ
ロベルト・カルロス

▽MF
ジウベルト・シウバ
ジュニーノ・ペルナンブカーノ
ゼ・ロベルト
カカー

▽FW
ロナウド
ロナウジーニョ

南アフリカワールドカップ

背番号10:カカー(レアル・マドリー)
生年月日:1982年4月22日(当時28歳)
個人成績:4試合出場/0得点3アシスト

監督:ドゥンガ
戦績:ベスト8

 カカーにとっては3度目のワールドカップだったが、4年前に話題を読んだ「カルテット・マジコ」は解体されていた。ロナウジーニョは大会直前までにブラジル代表メンバー候補に入っていたが、ドゥンガ監督は選出せず。背番号10はカカーに渡った。

 直前の2009/10シーズンは、レアル・マドリーに移籍して1年目。鳴り物入りで加入した元バロンドーラーだったが、恥骨炎などにも悩まされて「シーズンワースト移籍」とも言われるほどパフォーマンスを落としていた。

 そんな中で迎えたワールドカップは、またもベスト8敗退に終わる。カカーは準々決勝までに3アシストを記録したものの、ゴールは1つも奪えず。優勝した日韓大会は1試合の途中出場のみ、ドイツ大会は初戦で挙げた1ゴールだけ、3度目の正直で挑んだ南アフリカ大会も振るわず、2000年代の欧州クラブシーンを彩った名手のワールドカップでのキャリアは10試合1得点4アシストで終わった。

 この大会の後、カカーは半月板の手術を受けて長期離脱を強いられる。その後も2年ほどブラジル代表から遠ざかり、2012年10月に呼び戻される。それでもかつてのような輝きを放つことはなく、母国ブラジルで4度目のワールドカップ出場は叶わなかったばかりか、代表招集も散発的になっていった。

 2010年の南アフリカワールドカップは、カカーのキャリアにおいて転落のはじまりを象徴する大会だった。

●準々決勝・オランダ戦の先発メンバー

▽GK
ジュリオ・セザール

▽DF
マイコン
フアン
ルシオ
ミシェウ・バストス

▽MF
ジウベルト・シウバ
ダニ・アウベス
フェリペ・メロ
カカー

▽FW
ロビーニョ
ルイス・ファビアーノ

ブラジルワールドカップ

背番号10:ネイマール(バルセロナ)
生年月日:1992年2月5日(当時22歳)
個人成績:5試合出場/4得点2アシスト

監督:ルイス・フェリペ・スコラーリ
戦績:4位

 ワールドカップ最近5大会で最も若いブラジル代表の背番号10は、ネイマールだった。南アフリカワールドカップ直後にA代表デビューを飾った天才アタッカーは、U-23代表の一員として臨んだ2012年ロンドン五輪での銀メダル獲得なども経て、A代表でも主力に定着していく。

 そして背番号10を任されて挑んだ初のワールドカップでは、グループリーグ初戦のクロアチア戦と第3戦のカメルーン戦で2得点ずつを奪う活躍を披露し、母国開催の大会で6度目の優勝を目指すチームをけん引した。

 ところが、その旅路に暗雲が立ち込めたのは準々決勝のコロンビア戦だった。自ら先制点をアシストし、2-1で迎えた終盤の88分にネイマールは相手DFファン・スニガから激しいタックルを受けた。コロンビア代表DFのひざを背中にもろに食らってしまい、ピッチ上からそのまま病院へ搬送される。診断結果は脊椎骨折の重傷で、もちろん準決勝以降の試合には出場できなくなった。

 準決勝に進んだブラジル代表だったが、そこで不在のネイマールの影響力がどれほど大きかったかを思い知らされる。のちに「ミネイロンの惨劇」と呼ばれ、ドイツ代表に1-7で屈辱的な大敗を喫した準決勝はブラジル国民の心にトラウマを残すこととなった。そして3位決定戦でオランダに敗れ、ブラジル代表は母国開催のワールドカップを4位で終えた。

●準々決勝・コロンビア戦の先発メンバー

▽GK
ジュリオ・セザール

▽DF
マイコン
ダビド・ルイス
チアゴ・シウバ
マルセロ

▽MF
パウリーニョ
フェルナンジーニョ
オスカル

▽FW
フッキ
フレッジ
ネイマール

ロシアワールドカップ

背番号10:ネイマール(パリ・サンジェルマン)
生年月日:1992年2月5日(当時26歳)
個人成績:5試合出場/2得点2アシスト

監督:チッチ
戦績:ベスト8

 ブラジルワールドカップ後に代表復帰を果たしたネイマールは、チアゴ・シウバの負傷もあってブラジル代表史上最年少22歳でキャプテンに任命される。

 2016年にはオーバーエイジ枠で出場したリオデジャネイロ五輪に出場し、ブラジルの優勝に大きく貢献した。しかし、その大会後にA代表のキャプテンマークを返上し、自ら大役を降りる道を選んだ。ロシアワールドカップの南米予選では全員に責任感を植えつけるため、キャプテンのローテーション制が採用される。

 それでもチッチ監督はネイマールへの信頼を示し、ロシアワールドカップ本大会で再びキャプテンマークを託した。当時のネイマールはそもそも直前まで負傷の影響によってメンバー入りが危ぶまれ、大会直前のクロアチア代表との強化試合でようやく復帰したばかりという状況だった。

 そんな不安をよそに、背番号10は躍動。ラウンド16までの4試合で2得点2アシストと結果も残し、健在ぶりをアピールする。だが、ラウンド16で日本を破ったベルギーを相手に沈黙し、準々決勝敗退に。4大会ぶりの頂点は遠かった。

 ロシアワールドカップでのネイマールは結果こそ残していたものの、相手にタックルを受けた際の過剰なリアクションの方により大きな注目が集まり、批判の的にもなった。キャプテンという責任ある立場にも関わらず、あまりに大袈裟な倒れ方や痛がり方をするため、それをネタにしたジョーク画像なども大量に作られた。世界中に“精神的に幼い嫌われ者”というイメージが定着してしまったとも言えるだろう。

●準々決勝・ベルギー戦の先発メンバー

▽GK
アリソン

▽DF
ファグネル
チアゴ・シウバ
ミランダ
マルセロ

▽MF
フェルナンジーニョ
パウリーニョ
フィリッペ・コウチーニョ

▽FW
ウィリアン
ガブリエウ・ジェズス
ネイマール