日韓ワールドカップ

 アルゼンチン代表の背番号10といえば、やはりディエゴ・マラドーナだろう。1986年のメキシコワールドカップ優勝を経験したレジェンドは、いまでもカリスマ的な人気を誇る。そして、のちに同じ背番号10を託された選手たちは、結果を求められる重圧とともにマラドーナの幻影とも戦うことを強いられてきた。果たして真の後継者は現れたと言えるのか?ワールドカップ直近5大会でアルゼンチン代表の「10」のシャツを着た選手たちの系譜を振り返る。

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背番号10:アリエル・オルテガ(リーベル・プレート)
生年月日:1974年3月4日(当時28歳)
個人成績:3試合出場/0得点1アシスト

監督:マルセロ・ビエルサ
戦績:グループリーグ敗退

 20代前半で欧州に飛び出したが、バレンシアやサンプドリア、パルマでは目立った活躍を見せられず、2000年にアルゼンチンの古巣リーベル・プレートに戻って復活。当時まだ若手だったパブロ・アイマールやハビエル・サビオラとともに前線をけん引し、輝きを取り戻した。

 日韓大会はオルテガにとって3度目のワールドカップで、4年前の悔しさを晴らすための絶好の舞台でもあった。1998年フランスワールドカップの準々決勝、自身のペナルティエリア内でのダイブに対して抗議したオランダ代表のGKエドウィン・ファン・デル・サールに頭突きを見舞って退場処分に。アルゼンチン代表はその試合に敗れ、オルテガはワールドカップ敗退の戦犯として糾弾された。

 だが、三度目の正直を誓った背番号10の思いははかなく散った。主力としてグループリーグ全試合に先発出場したが、強豪ぞろいのグループで第2戦のイングランド代表戦を落とし、第3戦ではスウェーデン代表と引き分けてしまい、決勝トーナメント進出すらも果たせなかった。

 南米予選を首位で通過したことで前評判は高く、欧州の強豪でプレーする選手も揃っていながら、アルゼンチン代表は3試合で2ゴールしか奪えず。オルテガはスウェーデン代表戦の終盤にエルナン・クレスポの劇的な同点ゴールをアシストしたものの、勝利に直結する結果は残せなかった。

 その後、2003年2月を最後に代表からは遠ざかり、キャリア後半はアルコール依存症にも苦しんだ。2010年5月、南アフリカワールドカップ直前に3年ぶりの招集を受けてハイチ代表との親善試合に先発出場したが、4度目のワールドカップ出場は叶わなかった。

●グループリーグ第2戦・イングランド戦の先発メンバー

▽GK
パブロ・カバジェロ

▽DF
ワルテル・サムエル
ディエゴ・プラセンテ
マウリシオ・ポチェッティーノ

▽MF
ハビエル・サネッティ
ファン・パブロ・ソリン
ディエゴ・シメオネ
キリ・ゴンザレス
ファン・セバスティアン・ベロン

▽FW
アリエル・オルテガ
ガブリエル・バティストゥータ

ドイツワールドカップ

背番号10:ファン・ロマン・リケルメ(ビジャレアル)
生年月日:1978年6月24日(当時27歳)
個人成績:5試合出場/0得点3アシスト

監督:ホセ・ペケルマン
戦績:ベスト8

 アルゼンチン代表デビューは1997年と早かったが、1998年フランス大会も2002年日韓大会もワールドカップ出場を逃しており、ドイツ大会が27歳にして初めての大舞台だった。そして敬愛するディエゴ・マラドーナと同じ背番号10を与えられて躍動する。

 グループリーグ初戦のコートジボワール代表戦でサビオラのゴールをアシストし、6-0で勝利した第2戦のセルビア・モンテネグロ代表戦はアシストこそつかなかったものの、エルナン・クレスポとエステバン・カンビアッソのゴールの起点となった。

 そして誕生日に迎えた決勝トーナメント1回戦でもコーナーキックからクレスポのゴールを演出。ドイツ代表に敗れた準々決勝でもアシストを加え、大会最多5アシストを記録した。

 ドイツワールドカップ後にキャプテンに任命されたものの、宿敵ブラジル代表に0-3で大敗を喫したことでリケルメに非難が集中し、母親が体調を崩してしまう。それによって代表引退を表明したが、約1年後のコパ・アメリカで復帰した。

 2009年にはマラドーナ監督と対立して再び代表引退を表明し、南アフリカワールドカップには出場せず。サッカー史に名を残すファンタジスタながら代表キャリアは輝かしいものではなく、通算51試合に出場して17得点、ワールドカップ出場1回で終わった。

●準々決勝・ドイツ戦の先発メンバー

▽GK
ロベルト・アボンダンシエリ

▽DF
ファブリシオ・コロッチーニ
ロベルト・アジャラ
ガブリエル・エインセ
ファン・パブロ・ソリン

▽MF
ハビエル・マスチェラーノ
マキシ・ロドリゲス
ルチョ・ゴンザレス
ファン・ロマン・リケルメ

▽FW
エルナン・クレスポ
カルロス・テベス

南アフリカワールドカップ

背番号10:リオネル・メッシ(バルセロナ)
生年月日:1987年6月24日(当時22歳)
個人成績:5試合出場/0得点4アシスト

監督:ディエゴ・マラドーナ
戦績:ベスト8

 自身初のワールドカップとなった2006年ドイツ大会は負傷明けで控え選手の1人だったが、4年経って真のワールドクラスへと飛躍し、大会最大の注目選手になっていた。そしてマラドーナ監督と同じ背番号10を着けて、同じトップ下で起用される。

 グループリーグ第2戦の韓国代表戦で2アシストを記録するなど、大会を通して4アシストを記録し、準々決勝進出に大きく貢献した。しかし、全5試合に先発フル出場し、30本ものシュートを放ちながら、ゴールは1つも決められなかった。

 今ではメッシがアルゼンチン代表のキャプテンマークを巻くのは当たり前になったが、初めて腕章を託されたのが、この大会のグループリーグ第3戦・ギリシャ代表戦だった。すでに2連勝で決勝トーナメント進出を決めた段階で、メンバーも落としていたが、母国の英雄マラドーナ監督から手渡されたキャプテンマークはメッシにとって特別なものだったに違いない。

●グループリーグ第3戦・ギリシャ戦の先発メンバー

▽GK
セルヒオ・ロメロ

▽DF
ニコラス・オタメンディ
マルティン・デミチェリス
ニコラス・ブルディッソ
クレメンテ・ロドリゲス

▽MF
マリオ・ボラッティ
ファン・セバスティアン・ベロン
マキシ・ロドリゲス
リオネル・メッシ

▽FW
セルヒオ・アグエロ
ディエゴ・ミリート

ブラジルワールドカップ

背番号10:リオネル・メッシ(バルセロナ)
生年月日:1987年6月24日(当時26歳)
個人成績:7試合出場/4得点1アシスト

監督:アレハンドロ・サベージャ
戦績:準優勝

 2014年ブラジルワールドカップに臨むアルゼンチン代表はスター揃いだった。メッシの他にもアンヘル・ディ・マリア、セルヒオ・アグエロ、ゴンサロ・イグアインなど特に攻撃陣は豪華なメンバーが名を連ね、期待値も高かった。

 メッシ自身もグループリーグ全試合でゴールを挙げ、アルゼンチン代表の決勝トーナメント進出に貢献する。しかし、個の強いスターたちの集まったチームは組織としての機能性に問題を抱え、守備陣のタレント不足もあったが、特に攻撃陣の連係が悪く苦戦を強いられた。

 それでもワールドクラスのタレントを擁したアルゼンチン代表は決勝まで進んだが、結局は前回大会でも苦杯を舐めさせられたドイツ代表に敗れて優勝は叶わなかった。

 ワールドカップ直前のシーズンのメッシは負傷が多くコンディション面が懸念されたものの、グループリーグ初戦のボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表戦で華麗なドリブル突破から2大会ぶりのゴールを挙げ、第3戦のナイジェリア代表戦で直接フリーキックと豪快な弾丸シュートで2得点。ラウンド16まで4試合連続でマン・オブ・ザ・マッチを獲得した。

 ゴールを決めるだけでなく圧倒的な個人技から数々のビッグチャンスを創出し、大会最優秀選手にあたるゴールデンボールを獲得したことでメッシは改めて世界最高の選手であることを証明した。しかし、バルセロナでタイトルを獲り尽くしていながら、アルゼンチン代表では頂点を極めきれずにいる。

●決勝・ドイツ戦の先発メンバー

▽GK
セルヒオ・ロメロ

▽DF
パブロ・サバレタ
エセキエル・ガライ
マルティン・デミチェリス
マルコス・ロホ

▽MF
エセキエル・ラベッシ
ハビエル・マスチェラーノ
ルーカス・ビリア
エンソ・ペレス

▽FW
リオネル・メッシ
ゴンサロ・イグアイン

ロシアワールドカップ

背番号10:リオネル・メッシ(バルセロナ)
生年月日:1987年6月24日(当時30歳)
個人成績:4試合出場/1得点2アシスト

監督:ホルヘ・サンパオリ
戦績:ベスト16

 個人としては記録に残る大会となった。グループリーグ第3戦のナイジェリア代表戦でゴールを挙げ、ディエゴ・マラドーナ、ガブリエル・バティストゥータに続き、アルゼンチン代表史上3人目となるワールドカップ3大会連続得点者に。また、10代、20代、30代すべてで得点したワールドカップ史上初の選手にもなった。

 さらに決勝トーナメント1回戦のフランス代表戦で2つのゴールを演出し、ワールドカップ史上初の4大会連続でアシストを記録した選手にもなっている。ただ、チームとしては危機的な状態にあった。メッシもその責任の一端を問われることになる。

 キャプテンとして臨んだグループリーグ初戦のアイスランド代表戦で、メッシはPKを外してしまい、結果も引き分けに終わる。続く第2戦のクロアチア代表戦は0-3の完敗を喫し、グループ最下位となって決勝トーナメント進出が危ぶまれる状況に陥った。

 それでもナイジェリア代表戦の勝利でなんとかグループリーグを突破したが、決勝トーナメント1回戦でのちに優勝するフランス代表と対戦すると、キリアン・エムバペらに脆弱な守備をずたずたに崩されて4失点。アルゼンチン代表も3得点を奪ったが及ばず、メッシにとって4度目のワールドカップは自身最低の成績で幕を閉じた。

●ラウンド16・フランス戦の先発メンバー

▽GK
フランコ・アルマーニ

▽DF
ガブリエル・メルカード
ニコラス・オタメンディ
マルコス・ロホ
ニコラス・タグリアフィコ

▽MF
ハビエル・マスチェラーノ
エベル・バネガ
エンソ・ペレス

▽FW
クリスティアン・パボン
アンヘル・ディ・マリア
リオネル・メッシ