DFラインに欠場者続出

 ラ・リーガ第35節、レアル・マドリード対アラベスが現地時間10日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。セルヒオ・ラモスを筆頭にDFラインに欠場者が相次いだマドリーであったが、決めるべきところでしっかりと点を奪い、完勝を収めた。その中で、チームに新たな風を吹き込む男の活躍は欠かせないものとなっていた。(文:小澤祐作)

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 2016/17シーズン以来となるラ・リーガ制覇は目前に迫っている。レアル・マドリードは現地時間10日、残留争いに苦しむアラベスに2-0で勝利し、2位バルセロナとの勝ち点差「4」をがっちりとキープした。これでリーグ再開後は無傷の8連勝だ。

 ただ、アラベス戦は決して簡単なゲームではなかった。とくにマドリーは、DFセルヒオ・ラモスとDFダニエル・カルバハルを出場停止、DFマルセロを負傷で欠くなど、最終ラインのメンバーが普段と大きく入れ替わっており、ここが不安要素に。中でも攻守両面で絶大な存在感を放ち、何よりチームの精神的支柱であるS・ラモスの不在は少なからず影響を与えたと言えるだろう。

 実際、マドリーは開始わずか2分に右サイドをアラベスに突破され、FWホルヘにクロスバー直撃のヘディングシュートを放たれている。チーム全体としてゲームへの入り方が良くなかったとはいえ、立ち上がりから守備の不安定さを露呈し、失点のピンチを迎えてしまったのは痛かった。

 一方の攻撃陣もアラベスのコンパクトな4-4-2ブロックに苦戦。ボールは支配するものの、決定機を生み出すまでには至らなかった。

 それでも、一瞬の隙を突いてゴールをこじ開けることができるマドリーの強さは健在だった。10分、左サイドのDFフェルラン・メンディがペナルティエリア内でDFシモ・ナバーロのファウルを誘発。これで得たPKをFWカリム・ベンゼマがきっちりと沈め、マドリーが先制に成功した。

 その後はややペースを落としたマドリーは、アラベスに決定機を迎えられることもあったが、今季のサモラ賞受賞がほぼ確実と言われるGKティボー・クルトワのファインセーブもあって失点を許さず。前半を1-0で終えている。

マドリーが見せたチーム力

 後半はマドリーの勢いがさらに加速した。同チームは50分、FWロドリゴ・ゴエスのスルーパスに抜け出したベンゼマがFWマルコ・アセンシオに横パス。これをスペイン人FWが冷静に押し込んでいきなりリードを広げたのである。

 久保建英が所属するマジョルカにプレッシャーを与えられているアラベスにとっては、痛恨の追加点献上であった。1点なら何とか可能性はあったが、今のマドリーに2点差をつけられると、逆転はおろか同点に追いつくこともほぼ不可能に近い。アラベスイレブンが気持ち的に落ちてしまったのは、明らかだった。

 だが、そんなアラベスを前にしてもマドリーは容赦なかった。スピーディーな攻撃を仕掛け続け、何度もGKロベルトを急襲。いつ3点目が生まれてもおかしくない展開となっていたのだ。

 攻撃陣の勢いはもちろん、マドリーは前線からの守備でも高い強度を示した。とにかく全員が攻守の切り替えを素早く行い、ボールを即座に奪取。誰一人としてサボっている選手はおらず、疲労の影響を感じさせないプレーを披露。途中出場のFWヴィニシウス・ジュニオールやMFイスコも懸命に守備をするなど、チーム全体として高い意識を持っていたのは、ピッチ上でのアクションを見ても明らかだった。

 そんなマドリーを前にアラベスは自分たちの時間を与えてもらえず、体力はどんどん奪われた。前半は効果を発揮した4-4-2ブロックも、ボールホルダーに素早くプレッシャーをかけられないことで強度が低下。押し込まれ、押し込まれを繰り返すしかなかった。

 こうしてチーム力の高さを誇示したマドリーは最後まで得点を許さず。GKロベルトに阻まれ続け追加点を奪うことはできなかったが、格下相手にしっかりと完勝を収めた。

「全員が集中していて、自分たちが何をすべきかを正確に把握している」とは試合後のDFラファエル・ヴァランの言葉であるが、まさにチーム全員の高い意識が勝ち点3獲得の要因であったと言えるだろう。

左サイドの猛者にジダン監督も称賛

 そんなチームにおいてこの日、ひと際輝きを放った選手がいた。1ゴール1アシストを記録したベンゼマも、追加点を奪ったアセンシオももちろん素晴らしかったが、彼らではない。左サイドバックを務めたフェルラン・メンディである。

 マルセロが不在の中スタメンに名を連ねたフランス人DFは、立ち上がりから積極的なプレーを披露。10分には爆発的なスピードを活かして相手のファウルを誘発し、チームにPKをもたらすなど決定的な仕事も果たしている。

 その後もF・メンディは果敢な前線への飛び出しを繰り返してチームの攻撃に深さを生んだ。もちろん守備への意識も高く、味方がボールを奪われると自慢のスプリント力を活かして懸命にプレスバック。自身の受け持つ左サイドを大きく崩されることはなかった。

 さらに、75分にはコーナーキックのこぼれ球を拾ったMFボルハ・サインスに身体をしっかりと当て、相手を吹き飛ばしてカウンターの芽を摘んだ。細かい場面ではあるのだが、非常に効果的なプレーであったことは確かだ。

 データサイト『Who Scored』によると、この日のフランス人レフティーはパス成功率95%、ドリブル成功数3回、タックル成功数1回を記録。PK奪取も含め、左サイドを大いに活性化させたと言えるだろう。

 F・メンディは足元の技術こそマルセロに劣るが、スピード+パワーを兼ね備えている点は非常に魅力的で、その二つの能力を活かすことであらゆる怖さを発揮する。ドリブルは派手なフェイント等を使わずとも威力抜群で、オーバーラップの迫力も満点。守備では自慢の脚力を活かすことで簡単に背後をやられず、その強靭なフィジカルは相手の戦意を削ぎ落とす。このあたりはマルセロにはないスキルであり、マドリーに新たな風を吹き込む存在としてはうってつけの人物であると言える。

「メンディの最初のシーズンには満足している。彼は仕事をこなすことができるし、それは良いニュースだ」とジダン監督もリヨンからやって来た男を賞賛。しばらくはマルセロが不在となることが見込まれるため、引き続きF・メンディには活躍が求められるだろう。

 マドリーの優勝は最短で13日にも決まる。条件はバルセロナがバジャドリー相手に引き分け以下で終わり、マドリーがグラナダ戦で勝利すること。仮にそこで決まらずとも、マドリーのラ・リーガ制覇が近いことに変わりはないのだが。

(文:小澤祐作)