ネットフリックスは「映画業界」を殺さず、テレビを破壊する

ネットフリックスは「映画業界」を殺さず、テレビを破壊する

ネットフリックスは今年、少なくとも86タイトルの映画作品を配信する予定だ。これは、大手映画会社4社が2018年に公開するタイトル数の合計を上回り、ネットフリックス自身が昨年公開した映画作品61タイトルを超えることになる。

ネットフリックスは2018年のコンテンツ予算を80億ドル(約8900億円)としており、これは昨年の70億ドルから大幅な上昇だ。同社はオリジナル映画だけでなく、TVドラマシリーズの製作や他社作品の配信権獲得も行っているが、予算の85%はオリジナルに注がれる。

「ロイター」の報道によると、コンテンツへの膨大な投資はネガティブ・フリー・キャッシュフローを引き起こし、その額は今年最大40億ドルに達するという。しかし、ネットフリックスはリスクをとりながら、世界1億2500万人(そのうち55%が米国外)の視聴者らを魅了しようとしている。

同社のオリジナル映画は既に大きな成功を収めている。昨年の「マッドバウンド 哀しき友情」はアカデミー賞4部門にノミネートされ、ウィル・スミス主演の「ブライト」や、ボン・ジュノ監督の「オクジャ」も高い評価を獲得した。

また、2019年に配信予定の「ジ・アイリッシュマン」の主演はロバート・デ・ニーロとアル・パチーノで、製作費は1億2500万ドル(約139億円)。監督はマーティン・スコセッシが務める。

ネットフリックスのオリジナル映画は、一部の劇場でも同時公開される。しかし、これが大手映画会社の脅威となるのかという疑問に、業界のアナリストは「ノー」と応える。同社の試みは映画業界にとっても、観客にとってもプラスの影響を与えるというのだ。

調査企業「comScore」のPaul Dergarabedianによると、人々の映画館に向かう欲求は衰えていない。「北米の今年の映画館収入は、昨年の実績を4%上回っている。映画の視聴手段が多様化しても、熱心な映画ファンは劇場に足を運んでいる」

ネットフリックスが莫大な予算を投じて大型作品をリリースしても、大きなスクリーンで映画を観たいという人々の欲望は変わらないというのがDergarabedianの見立てだ。

ロイターの報道によると、大手の映画会社が巨額な予算を投じた大ヒット映画に注力する一方で、ネットフリックスはSFからホラー、ロマンスやティーン向けドラマまで、作品の多様性を強化する戦略をとっている。

「ニッチな観客」から長期的利益を生む

「ネットフリックスが打撃を与えるのは、映画業界よりもむしろテレビ業界だ」と述べるのはインタラクティブTVのスタートアップ企業「Samba TV」CEOのAshwin Navinだ。

「大手の映画会社は今後も、一般大衆にアピールするメジャー作品に注力し、短いスパンでの投資回収を狙うだろう。一方で、ネットフリックスはよりニッチな観客を相手にし、彼らを長い間つなぎとめるコンテンツで利益を出そうとしている」

ネットフリックスはロイターの取材に、オリジナル作品への投資は成功を収めつつあると述べている。今年同社が公開した33のオリジナル作品は、世界8000万人の視聴者らに合計3億回以上観られたという。これは1作品を平均900万人が視聴したことになる。

comScoreのDergarabedianは「ネットフリックスのオリジナル作品は映画業界の脅威にはならない」と繰り返す。

「それよりもむしろ映画会社に新たな刺激を与え、観客をなんとか自宅のカウチから劇場に向かわせるために、多様な作品を生み出す意欲を与えるだろう。一方で、自宅で多くの映画作品にふれた観客が、以前よりも映画の重要性に気づき、劇場の大スクリーンで映画を観る楽しさを再認識する結果につながるかもしれない」

Dana Feldman


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