EU離脱協定案を否決の英国、合意できる「選択肢」はあるのか?

EU離脱協定案を否決の英国、合意できる「選択肢」はあるのか?

英議会下院は1月15日、政府が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案に関する採決を行い、大差でこれを否決した。テリーザ・メイ首相にとっては、屈辱的な敗北だ。議会が過去に採決を行った政府案のうち、最多となる230差での否決となった(賛成202、反対432)。

この結果を受け、最大野党である労働党は内閣不信任案を提出。16日に投票が行われる予定だ。だが、不信任決議案は否決される見通しだ。メイ政権に閣外協力する民主統一党(DUP)が首相を支持する考えを明らかにしているほか、離脱協定案の採決では造反した与党・保守党議員らも、不信任決議では首相を支持するとしている。

英国に残される選択肢

メイ首相にとっての大きな問題は、議会で大多数の賛同を得られる選択肢を特定するのが難しいことだ。議員の一部は、EU単一市場へのアクセスを維持できる「ノルウェー型」の通商関係を結ぶことに加え、(ノルウェーは加盟していない)関税同盟を維持することを主張する。

これを実現できれば、離脱協定案が否決された大きな要因である北アイルランドとアイルランドの国境を巡る問題(EU加盟国であるアイルランドと英国領である北アイルランドの間の人やモノの自由な移動ができなくなる)に対応するための「バックストップ(防御のための最終手段)」の必要性がなくなる。

一方、EUからの離脱に関する2度目の国民投票を行うべきだと訴える議員もいるほか、合意なしでEUを離脱する「ハードブレグジット」という極端な案を支持する議員もいる。ハードブレグジットは英国経済を大きな危険にさらすことになるばかりか、食料品や医薬品といった生活必需品の供給にも問題を引き起こしかねないシナリオだ。

下院議員らの意見は、これらの案を含む複数の選択肢の間で割れている。どの案が十分な支持を得ることができるものなのか、現時点では不明だ。こうした状況から、3月29日に予定されているEUからの離脱が実現する可能性は低くなったと主張する人も多い。

政府はこれからどうする?

実際にEUからの離脱を延期するためには、英国は加盟国の離脱に関する手続きを定めた「EU基本条約(リスボン条約)第50条」に基づき、時期の変更に関するEUの同意を得なくてはならない。

だが、EUがそれに同意するのか、条件付きで同意するのであれば、どのような条件を提示してくるのか分からない。労働党のチュカ・アマナ議員のように、EUが延期に応じるとすれば、それは英国が2度目の国民投票の実施を決定した場合だけだと指摘する人もいる。英国が今後、実際に何をどうするのかについては、何も明確になっていない。

ビジネスへの影響

今回の採決の結果を受け、英ポンドは対ユーロで急上昇した。為替市場は結果に対し、前向きな反応を示したということだ。だが、不確実性が残ることは、経済全体にとって良いことではない。

英ウォーリック・ビジネススクールのナイジェル・教授(国際ビジネス研究)は投票に先立ち、次のような見解を示していた。

「政治評論家の大半は、採決の結果を受けて起きると考えられるのは、第50条に基づく(離脱の)延期しかないとの考えを示している。明確さと投資判断の根拠となるものを求める企業にとっては、理想的な状況から全く懸け離れている。多くの企業は次に何が起きるのかが明らかになるまで、投資と雇用の創出を延期せざるを得ないだろう」

──英議会下院で行われた歴史的な投票が明らかにしたのは、議員たちが多くの点で、首相の離脱協定案を支持していないという事実だけだった。

Dominic Dudley


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