これは筆者が友人から聞いた、「両親の熟年離婚」のお話です。家族よりもお金を優先していたケチな父親が、その大事な貯金を激減させてしまった理由とは?

熟年離婚した60代の両親

数年前、60代の両親が離婚しました。離婚を言い出したのは母親で、「もう一緒に添い遂げるのは無理」というのが理由です。

父はお金に関してとてもケチな人で、家のお金のことを「俺の金だから」とよく言っていました。私たち子供や母にお金を使うことが嫌だったようで、父の収入は悪くなかったはずなのに、父以外の家族はみんなヨレヨレの格好をしていました。

そんなこともあって、母から「離婚する」と聞いた時には「やっとするのか」と思ったほどでした。

母いわく、離婚を切り出した時すらも父は「この家と金は俺のものだ! お前にはやらん!」と財産のことばかり言っていたそうです。

しかし母は離婚に向けて、長年パート代からコツコツ貯金をしていたため、すんなり「わかりました」と言って家を出ることができました。

離婚後の母は、私が住んでいる町のマンションの一室を借りて、パートをしながら一人暮らしを満喫しています。

私は社会人になって実家を出て以降、父とはほとんど会っていませんでしたが、私より2つ年上の兄が、たまに父の様子を見にいってくれていました。

ある日、いつものように父の自宅を訪問した兄から、珍しく電話がかかってきました。そこで私は、兄から驚くべき話を聞かされたのです。

父の大事な貯金が激減してしまった理由は……

電話の内容は、「父の貯金が半分に減ってしまい、父が憔悴している」というものでした。

貯金することが趣味のようなケチな父親が、貯金を減らしてしまうなんて考えられません。

(まだ母と離婚して1年も経っていないのに、一体何があったんだろう……)疑問に思いながらも兄の話を聞いてみると、ことの経緯がわかってきました。

母と離婚した直後に、用事があって銀行にいった際、行員に投資信託を勧められて、よく理解もしないまま貯金を全額投資してしまったそうです。貯金だけで老後の資金が賄えるか、不安だったのでしょう。

しかしその後、世界的なパンデミックで投資信託の価値は暴落。投資経験のない父はパニックになってしまい、半分まで下がったところで売却して現金に戻してしまったというわけです。

家族より何よりお金を大事にしていた父のことを考えると落ち込んでいる父の姿は容易に想像できました。しかし辛かった子供時代や母のこともあるので、正直「因果応報」だとも感じます。

最後に

確かにお金は大切ですが、家族をないがしろにしてまで切りつめる必要はないのでは、と個人的には思います。計画的にお金を貯めつつ、大事な人のためにたまに贅沢するのも良いのではないでしょうか。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Hinano.N