公開中の映画「ドクター・ドリトル」。1世紀以上にわたり世界中の子供に愛読される児童文学の世界を、最先端の技術で映像化したアクション・アドベンチャーだ。3月20日公開予定だったが延期されていた。

 コロナ禍で誰しもが癒やしを求める今、童心に戻るにはうってつけ。展開がご都合主義だとか、大人の観賞を満足させないといった評はこの際横において、子供が物心ついてから初めて楽しむ“ファーストシネマ”として受けとめて、見る。

 俳優のロバート・ダウニーJr.演じるドリトル先生は、恋人を失ったことで世間と没交渉の生活に入る。広大な敷地にはキリンやゴリラ、オウム、アヒル、シロクマなど多くの動物が暮らす。

 物語は少年の来訪と、女王陛下の病によって扉が開く。少年は育ての親から狩りを習ったが動物を撃てない。命令されて撃つとリスを誤射してしまう。リスを連れて、少年が向かった先がドリトル先生の屋敷だった。

 女王の容体は王女によってもたらされた。治すためには、ドリトル先生が必要だと。宮殿に向かったことで、ドリトル先生の冒険が始まる。

 さまざまな思惑を抱えた周辺者と違い、ドリトル先生は純粋に病を治すことにスキルを割く。

 大きな武器になるのが動物と話せるという特殊能力。屋敷で一緒に暮らす動物はもちろん、宮殿で会ったタコとも意思疎通できる。人はこっそりと企みを実行するが、それを見ている動物がいる現実。バレたくないことほど、悪事はバレる。お天道さまに顔向けができないかどうか、ということ。征服したがる人間と征服されまいとする動物。火を噴くドラゴンの腸から見つかる異物が、人間の歴史的な横暴をチクリと皮肉っている。

 映画では、人間と動物は互いに助け合い、それぞれの役割を果たし、立ちはだかる壁に立ち向かう。ファンタジーな映像が手間暇かけられて作られたことは、エンドロールの多くのスタッフ名でわかる。

 動物の声を担当する声優陣も豪華だ。エマ・トンプソン、ラミ・マレック、トム・ホランドといった面々。日本語版では石田ゆり子や八嶋智人、霜降り明星の2人が吹き替えを務めている。

 ドリトル先生の声を担当したのは、今年4月に55歳で亡くなった声優の藤原啓治さん。遺作になった。