★絶品必食編

 2014年11月、64年の歴史に幕を下ろした東京・銀座7丁目の「銀座キャンドル」。かの美輪明宏さんが「宇宙一」と評した「チキンバスケット」が名物だった老舗レストランである。

 当時地下にあった店へと続く階段には、“寅さん”役で知られる渥美清や八千草薫など錚々(そうそう)たる役者の色紙が飾られていた。

 文士にも愛され、三島由紀夫や川端康成もその洋食に舌鼓を打ったという。

 その老舗がサクッとした衣&しっとりした肉質のフライドチキンとともに、麻布十番の週末ランチに復活している。

 「銀座キャンドル」のフライドチキンはシンプルだ。

 鮮度のいい国産鶏の胸肉に塩と小麦粉を振り、溶き卵をくぐらせ、細かなパン粉をびっしりとまとわせる。

 あとは澄んだ揚げ油で揚げるだけ…なのだが、塩加減、揚げの加減が実に精妙だ。

 レシピは70年間基本的には変わっていない。「基本的に」というのは、パン粉や揚げ油の温度管理など、細かなチューニングが絶え間なく繰り返されてきたからだ。

 「いまが一番おいしいですよ。基本は受け継ぎつつ、調理の技法は進化していますから」とは店主の岩本忠さん。

 岩本さんは、「銀座キャンドル」創業者の孫にあたり、日本洋食協会の長でもある。今回の復活劇は既存店の間借りランチ業態ということで、往時のフライドチキンだけでなく、バンズとのセットも用意されている腹ペコ対応。

 もちろんフライドチキン単品の用意もあり、日によってはグラタンやハンバーグなど、往時のメニューも注文することができる。

 現在の営業が、週末の土日・祝日のランチのみとなっているのは、例の騒動でお子さんの「学校が休みになっちゃったから」だとか。

 事態が収束すれば平日の営業も復活させる予定だが、夜は「Bar&Dining Pertica」という大家さんの店舗が絶賛営業中。メニューも異なるのでお間違えのなきよう。

 場所は麻布十番の路地裏。「銀座キャンドル」「麻布十番」で検索を。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。