肥満の人は食後高血糖になりやすいといわれる。食事した後、必要以上に血糖値が上がり、インスリンというホルモンが放出されても、正常値に戻りにくくなる。そのカギを握るのが「腸内細菌と免疫細胞」であることが先月、米誌に発表された論文で明らかになった。

 「以前から腸内細菌が生み出すリポポリサッカライド(LPS)が、食後、血中で増えることはわかっていましたが、なぜLPSが増え、それが体にどんな影響があるのかは解明されていませんでした。今回の研究で、食事で腸内細菌が変化し免疫細胞がそれに反応して血糖値の上昇を抑えることがわかったのです」

 こう話すのは、研究に携わった国立国際医療研究センター研究所の植木浩二郎糖尿病研究センター長。長年、数多くの糖尿病に取り組んできた。

 植木医師らのマウスの実験内容を別項にまとめた。簡単にいえば、食後に腸内細菌の種類が変化し、それらから作り出されるLPSと、血糖値をコントロールするインスリンによって、免疫細胞の一種・マクロファージが刺激される。結果としてマクロファージが、インターロイキン10(IL−10)を作り出し、肝臓でブドウ糖が作られるのを抑制して食後血糖値を抑えるのだ。

 「食後の高血糖を抑えるためには、インスリンの働きが重要ですが、それだけでは不十分だったのです。腸管の周辺にいるマクロファージがIL−10を作り出すことが、大きな役割を果たしていると想定できます」

 マクロファージといえば、細菌やウイルスなどの外敵が体内に侵入すると、飲み込んで処理(貪食)する免疫細胞として知られている。このような外敵をやっつける機能とは別に、腸管の周りにいるM2マクロファージが、高血糖を抑制するために大事な働きをしている。

 「腸管周辺の内臓脂肪のM2マクロファージは、やせていると食事に反応してIL−10を産生しますが、高脂肪食を食べさせて肥満になったマウスでは、このIL−10の産生が低下していました」

 腹部に内蔵脂肪がたまった状態では、内臓脂肪から放出される悪玉物質の影響で、筋肉や肝臓で食後に膵臓から出てくるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」になりやすい。一方、この状態では、M2マクロファージでもインスリン抵抗性が起きていて、食事に対する反応が上手くいかなくなっている可能性があるのだ。

 「肥満になると慢性的に腸内細菌の種類も変わる可能性があります。腸内細菌の作り出すLPSは、一過性に増えるだけだとM2マクロファージの刺激に役立つ一方で、慢性的に増え続ければ炎症やインスリン抵抗性を引き起こすことも知られています。肥満を放置しないようにしましょう」と植木医師は警告する。 (安達純子)

 ■食後高血糖を抑えるマクロファージの働き

 (1)正常な状態では、食後に腸内細菌叢(そう)が変化し、LPSという物質 が放出される。また、膵臓から血糖値をコントロールするインスリンというホル モンが分泌される。

 (2)腸管の周りにいるマクロファージが、LPSとインスリンに反応してIL −10という物質を作り出す。

 (3)IL−10が肝臓に運ばれると、肝臓でブドウ糖が作られるのを抑制す  る。結果として、食後の高血糖が抑えられる。

 ※植木浩二郎医師らの研究内容より抜粋