【ドクター和のニッポン臨終図巻】日高晤郎さんのリビングウィル「マイクの前で死にたい」

★人気ラジオパーソナリティー・日高晤郎さん

 「よく笑えた日は佳い1日だ」。これは、北海道の人気ラジオパーソナリティーだった日高晤郎さんが、生前よく口にしていた言葉だそうです。

 なんと素敵な言葉だろう。そうだ、患者さんに明日も笑って過ごしてもらうために、私も町医者を続けているのだ、と改めて気づかされました。

 毎週土曜、朝の8時から夕方5時までのラジオ番組を35年間も続け、札幌市民に愛された日高さんには、もう一つよく口にしていた言葉があったそうです。

 「マイクの前で死にたい」。日高さんが亡くなられたのは4月3日のこと。脂肪肉腫だったといいます。74歳でした。

 初めてこの番組を休んだのは、この2月。病名は明かさず、札幌市内の病院で入退院を繰り返しながら仕事を続けました。3月下旬、最後のラジオ出演の際は、「腹水を抜くために入院します」とだけ話したとのことなので、かなり進行した状態まで病気の公表を避けていたのでしょう。

 「脂肪肉腫」を初めて聞かれた方もいるでしょう。そもそも、「肉腫」と「がん」の違いとはなにか? 肉腫とは全身の骨や、脂肪・筋肉・神経(軟部組織といいます)にできた悪性腫瘍のことです。英語ではサルコーマといいます。

 これに対し、肺、乳房、胃、大腸、子宮…等、上皮細胞という場所から発生した悪性腫瘍を「がん」と呼びます。また、血液をつくる骨髄から発生した悪性腫瘍は白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などと呼ばれます。肉腫は悪性腫瘍全体の1%に過ぎません。さらに発生部位もさまざまなので、診断や治療が、「がん」と比べて難しい場合があります。

 日高さんがなった脂肪肉腫も、体中のどの臓器にも発生する可能性があります。ほとんど痛みはなく、大きくなった瘤(コブ)に気がついて病院に行き、この病気が判明することが多いようです。肉腫自体の痛みはないものの、大きくなると神経や周囲の組織を圧迫したり、他臓器に転移するとさまざまな症状が現れてきます。

 詳しいことはわかりませんが、もしかしたら日高さんも瘤が相当大きくなった状態で初めて病院に行ったのかもしれません。

 16歳で役者デビューした日高さん。若い頃は日々、食べるものにも困るほど、不遇の時代が続いたようです。それでも続けられたのは、「何があっても笑いというエネルギーに変えてやろう」という気持ちがあったからだとか。ギリギリまで仕事を続けられた理由はここにあるのでしょう。

 そして、「マイクの前で死にたい」という日高さんのリビングウィル(生前の遺言)は、ほぼ叶ったも同然の旅立ちだったと思います。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。近著「薬のやめどき」「痛くない死に方」はいずれもベストセラー。関西国際大学客員教授。

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