「重大な局面を迎えた。危機感を持ってほしい」。東京都の小池百合子知事は25日夜、都内で新型コロナウイルスの感染が41人確認されたのを受けてこう強調した。感染爆発の始まりであれば「ロックダウン(都市封鎖)」も現実味を帯びる。関西でも兵庫県が大阪府などとの往来自粛要請を続けている。首都圏や関西圏が封鎖される事態となった場合、医療崩壊や物流混乱による食料品不足、治安の悪化など戦時下のような地獄絵図に見舞われる恐れがあると専門家は指摘する。

 事実上の外出禁止令が出ているニューヨーク。市内に住む日本人女性は、「開いているスーパーも入場制限がかけられている。外出禁止の徹底以外は普通の生活が送れているが、公園には人が集まりすぎており、公園が中止になる不安感が市民にはある」と語る。

 英国では必需品の買い物や治療、絶対的に不可欠な仕事への通勤などごく一部の理由を除く外出を禁止した。ロンドン市内のスーパーでは必需品を購入するために長蛇の列を作った。

 日本でも、東京・大阪などの大都市でメガクラスター(巨大な感染者集団)が発生した場合、都市封鎖に至る可能性もある。そこで真っ先に問題になるのは物流だ。

 災害マネジメントや都市計画に詳しい立命館大学環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏は、「都市は消費の場所であり、都市を維持するためには、食料や生活必需品の十分な供給が欠かせない。物流が止まればパニックになり、機能しなくなって都市は死ぬ。物流は都市を生かすための血液である。物流がどこまで許可されるのかが問題になるだろう」と指摘する。

 高橋氏は「1995年の阪神淡路大震災のときは、神戸の高速道路や新幹線の断絶で、遠く離れた地域にある大企業ですら工場の生産がストップした」と付け加える。

 新型コロナウイルスは、自然災害と違って交通インフラを直接破壊するわけではないが、国内外の物流が停滞することで、生産現場は物を作ろうにも作れない、消費者は買える物が減り、買いだめ目的の人が殺到することが予想されるという。

 災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は、物流に支障が出た場合、小売りの現場が大パニックに陥ってもおかしくないとみる。

 「スーパーやコンビニなど営業が認められた店舗では、ストレスや不満がたまり、辞める店員も出てくるだろう。特に野菜などを売る生鮮市場が閉鎖されれば、食料品の不足や商品の遅滞など、一気に状況が悪化しかねない。需要の急増で値上がりも間違いないだろう」と語る。

 和田氏はさらに「移動制限が長期化すれば、廃業する企業も出てきて社会不安が増大する。商店での買い占めだけでなく盗難や詐欺など犯罪が多発する恐れもある」と警鐘を鳴らす。

 外出禁止が続く場合、特に注意が必要なのは高齢者だ。「社会のコミュニケーションが途切れる中、独り暮らしの高齢者には第三者の助けが必要になる。自治体や社会福祉協議会も協力すべきだ」と和田氏は指摘する。ただ、高齢者は新型コロナウイルス感染で重症化する確率が高いとされ、対応は難しい。

 イタリアやスペインでは感染が急増したことで重症者も治療を受けることができない状況になっている。日本はこれまで重症者の治療に重点を置くことでしのいできたが、感染者が爆発的に増えれば医療崩壊も現実のものとなりかねない。

 ビジネス面でも非常事態だ。自然災害の場合、交通機関の不通に備え従業員を都心部のホテルに滞在させる企業も多いが、前出の高橋氏は「台風などと違い終息時期も見えず、企業の人員配置を都心のホテルなどへ集中させるのも感染の危険性があるので難しい」という。

 そして「大阪も機能停止する可能性も考慮に入れると、戦時下のように長野県などに政府機能を移転させ、一時的に政府要人を集める策も考えなければならないのではないか」と警鐘を鳴らす。

 コロナ戦争前夜か。