これまで世界中の危険地帯を旅して、そこで見た現実をジャーナリスト目線で紹介してきた本連載だが、現在のところコロナ禍の影響で、海外に行くことができない。そこで取材して稼働しているYou Tubeで現在放送している「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」という番組を軸にしたものを紹介していきたい。

 前回は最新作と連動した「西成」を紹介したのだが、これまでに配信したコンテンツの中にもみなさんが興味を抱いてくれそうなものがあるので振り返っておきたい。

 第一回から一貫してきたのは日本のアンダーグラウンドに関連したテーマとゲストである。そのなかでも反社会的勢力の代表格「ヤクザ」の出演にこだわってきた。

といっても現役の方の出演はYou Tubeといえども難しいところがある。というのも、You Tubeでは放送可能な基準が明示されていないため、我々が手探りで限界を見いださないといけないからだ。チャンネルの運営者とも相談して「現役ヤクザ」は限界をこえると判断したのだ。

 その結果、出演してもらえたのは「元」ヤクザの方たち。番組として共演したのは3名。

 現在作家として活動をしている中野ジロー氏、YouTuberの先輩でもある懲役太郎氏、元組長のゆやま氏である。

 中野氏とは以前に著作の取材で協力してもらった縁もあった。

 懲役太郎氏とは番組でのコラボは、もう少し先になる予定であるが、すでに面会(お会い)する機会があり、しっかりと話しを聞くことができた。

 ゆやま氏も元ヤクザ組長という経歴でYou Tubeをやっており、現在人気急上昇中である。

(実はほかにも話を聞いている方はいるが、現在のところ公開前のために伏せさせていただきたい)

 いずれも元ヤクザとしての経験が豊富で現役時代の生々しいエピソードを饒舌に語ってくれた。ただ、私が気になったのは現代ヤクザの置かれている立場だった。

 暴対法が施行され、取締が強化されてきた近年では、ヤクザであることのメリットが薄いと言われていた。そのあたりの実情について流布している噂の真偽とともに聞くことができたのは実に興味深かった。

 たとえば、「ヤクザは銀行口座を作れない」という噂についてだが、もともと持っていた口座を使うことはできるが、新規に作ることができないということだった。携帯電話も同様で新規で持つことができないため、止められないように毎月の利用料金は何があってもしっかりと払うそうだ。

 これに連動して、銀行や携帯会社などは、どうやって反社チェックしているのか気になった。この点については、契約の場で判明するとかではなく(銀行などは反社チェックできるとのことでこの限りではないそうだ)、契約書などに反社条項があるのに反社であることを隠して契約した場合、あとから判明してしたら詐欺として扱われてしまうということのようだった。

 ほかにも窮屈な制約や取締はあるのだが、「大変ですね」と言ったところ、元ヤクザの皆さんが揃って「それでもヤクザはどうにかするし、抜け道というのは存在する」と言っていた。

 この流れで元ヤクザという共通点から再就職について質問すると、これも皆さん揃って「完全なカタギとして生きるには大変である」ということだった。自分の気持ちよりも世間が許すかどうかというハードルがあり、そこを乗り越えていくための覚悟が必要ということだった。

 ヤクザを礼賛するわけではないし、警察の取り締まり方を否定するつもりもない。ただ、日本の国内にこのように扱われる組織があるということを知っておくべきだと思った。

 暴対法のような法律や条例などは、我々の生活に密接な関係にあったヤクザという存在があって、それに対してできたものである。つまり、身近なところに存在しているのに気づかないということがありえるということ。それに加えて、昨今では「ヤクザの地下化」が問題視されている。表立ってヤクザが動かないために、いっそう私達の目からは見えにくくなっている。

 だが、見えないときには知ることである。知識があれば避けられることもあるからだ。

 昨年、世間を騒がせた吉本興業の芸人さんたちの闇営業問題も、知らなかったから巻き込まれたとも言える。それほど単純なものではないと言われるかもしれないが、それでも知ることで避けられるトラブルもあるのである。そういう観点からの啓発もYou Tube丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニーには含めていきたい。

 ■丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす) 自称「考古学者崩れ」のジャーナリスト。海外の危険地帯から裏社会まで体当たり取材を繰り返す。『世界の危険思想 悪い奴らの頭の中』(光文社新書)『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)など著書多数。