尖閣諸島(沖縄県石垣市)は、中国が東シナ海から太平洋へ向かう道筋にある戦略的な要衝だ。中国が武力統一を念頭に置く台湾も目の前にある。中国が周辺海域を押さえたいのも当然だ。

 よく誤解されるが、日中は「岩だらけの無人島を巡る争奪戦」を繰り広げているわけではない。現在、尖閣周辺海域では中国公船が70日以上常駐を続けている。単なる岩礁のために、中国がそこまで本気になるわけがない。

 日本側では海上保安庁の巡視船が日夜警備に当たっているが、6月には、尖閣を行政区域とする石垣市で注目すべき動きがあった。尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更したのだ。

 「登野城」は尖閣諸島から約170キロ離れた石垣島市街地の字名でもある。そのため、字名だけでは石垣島市街地と尖閣諸島は区別できない。過去には市が誤って魚釣島への住民票異動を受理したケースもあった。市は、こうしたミスを防ぎ「事務の効率化を図るため」として字名に「尖閣」を明記することを決めた。

 当初は字名を「尖閣」のみとする案もあったが「尖閣諸島が『登野城』だった歴史的経緯を継承すべきだ」という有識者の意見を受け入れ、「登野城尖閣」になった。

 字名変更は、石垣市が尖閣諸島の行政権を適切に行使していることを内外にアピールする効果がある。尖閣侵奪に向けた中国の攻勢が強まるなか、自治体でできる実効支配の強化策として妥当だ。

 中国は、字名変更が「違法、無効だ」と反発。市議会で字名変更が可決された直後、中国公船が間髪を入れず尖閣周辺で領海侵入し、対抗姿勢を示した。だが、日本は中国の脅しにはいちいち反応せず、尖閣に関して必要な行政手続きを粛々と進めればよい。

 尖閣防衛の「切り札」は何といっても石垣島への陸上自衛隊配備計画である。

 防衛省は奄美大島、宮古島、与那国島で既に駐屯地を開設しており、石垣島でも用地取得をほぼ終え、用地造成工事が進んでいる。工事の進捗(しんちょく)状況から見て、駐屯地の開設時期は3年後くらいのようだ。

 自衛官として現役時代、配備計画の立案に携わった用田(もちだ)和仁元陸将(67)は、4カ所の駐屯地の役割を「中国の太平洋進出を阻止する『南西の壁』」と証言。「南西諸島の防衛は日本にとって死活的に重要な作戦。昔は『離島の作戦』と言っていたが、離島ではない。日本防衛の作戦だ」と、陸自配備の意義を強調する。

 字名変更が「ソフトパワー」だとすれば、陸自配備は「ハードパワー」だ。日本は、硬軟両面で尖閣防衛を進めているのだ。

 ■仲新城誠(なかしんじょう・まこと) 1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県のメディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に『「軍神」を忘れた沖縄』(閣文社)、『翁長知事と沖縄メディア 「反日・親中」タッグの暴走』(産経新聞出版)、『偏向の沖縄で「第三の新聞」を発行する』(同)など。