プロテストをぎりぎりで通過、ツアー出場権がかかるQTは103位で2019年シーズンのツアー出場は極めて限定的でしかなかった。それが、稲見のプロ出発点だった。

 黄金世代の1学年下になる稲見は、シーズンが始まると、主催者推薦やマンデートーナメントで出場試合を懸命に戦った。リランキングが行われるまでの前期は7試合の出場機会があり、中京テレビ・ブリヂストンレディスの3位をはじめトップ10入り3回。リランキング14位に食い込み、後半戦の出場権も確保した。そして、7月のセンチュリー21レディスで念願の初優勝を飾った。

 稲見の戦いを支えたのは、グリーンを狙う正確なアイアンショットだった。パーオン率は78・2%。これは、部門別ランキングでトップの数字であった。今シーズンは、それを80%に高めることを目標のひとつとして掲げている。

 正確なアイアンショットを打ち出すために、稲見が意識しているのは、まずアドレスだという。

 「軸が正面から見て地面と垂直になるように。ボールを上げる意識が強くなると、軸が(自分から見て)右に傾いてしまいます。これ、プッシュアウトスライスやダフリ、引っ掛けの原因になります。ボールを真上から見られるように構えると、真っすぐな軸を作りやすいです」

 このアドレスだと、バックスイングでも体をワインドアップさせやすく、ボディー部の動きに腕、クラブの動きを同調させやすくなる。

 バックスイングとダウンスイングへの切り返しでも稲見には独自の意識、感覚がある。主役になるのは「腹筋と腹斜筋です」と明かす。「バックスイングでは腹筋に力を入れ、右腹斜筋を伸ばしていきます。このとき、左ヒザと右腹斜筋が引っ張り合うような感覚があれば、捻転が強くなるだけでなく、スイング軸がぶれることもありません」

 そして、ダウンスイングへの切り返しは「ほんの一瞬の動きなんですけど、伸びていた右腹斜筋を収縮させながらボールの方向に押し込みます」

 この方法だと、下半身が暴れることはない。「右ヒザの向きを変えないように」と、稲見は自分のスイングの最大ポイントも明かしている。そして、「この切り返しができれば、あとは収縮していた左腹斜筋を伸ばすだけ。それで、ほとんど自動的にフォロースルーまでいってしまう。軸がゆがんだり、動いてしまうこともありません」ともいう。ちょっと画期的なアドバイスではないか。

 ■稲見萌寧(いなみ・もね) 1999年7月29日、東京・池袋生まれ。9歳からゴルフを始め、ゴルフのために中学入学と同時に家族とともに千葉県四街道市へ引っ越し。2015年「中京テレビ・ブリヂストンレディス」で10位に入ってベストアマ賞。18年プロテスト合格。19年「センチュリー21レディス」でツアー初優勝。166センチ。