10日、前新潟県知事の米山隆一さんと再婚したことが報じられた、作家の室井佑月さん。歯に衣着せぬ発言で人気の室井さんだが、実は、30代のころから現在に至るまで、命にもかかわりかねない大病を経験してきたといいます。闘病を経ても変わらず元気でいられる秘訣は(構成=丸山あかね 撮影=本社写真部)

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胃潰瘍だと思って病院を受診したら

あれは35歳のある日のこと。みぞおちに差し込むような痛みを感じました。でもそのときは「胃潰瘍かな」くらいにしか思っていなくて。市販の薬より効果的な薬をもらいたいと考えて、かかりつけの内科へ行ったんです。

すんなり処方してもらえると思っていたのに、なぜか医師は、診察するなり「ちゃんと調べたほうがいい」と、大学病院への紹介状を書き始めた。咄嗟に「ありがとうございます」と言ったものの、心のなかでは「面倒だな、どうせたいしたことないのに」と思っていました。

ところが大学病院で検査を受けた結果、担当医から「膵臓にウズラの卵くらいの大きさの腫瘍がある」と告げられてしまったのです。「なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ」と、行き場のない怒りがこみ上げてきたのを覚えています。

なにしろ当時私は離婚してシングルマザーになっていたので、まだ5歳の息子と二人暮らし。どうしろっていうのよ、と。しかも医学書には、膵臓がんは早期発見が難しいとか、進行が速くて生存率が低いとか書いてあるし……。詳しい検査結果が出るまでの間が、とにかく苦しかった。

幸いにして、腫瘍は良性でした。でも医師から、悪性に変化する可能性が高く、痛みの症状も出ているから手術したほうがいいと勧められて。結局、膵臓の3分の2と脾臓の摘出手術を受けることになりました。

2週間の入院と聞いて気になったのは、仕事のこと。息子は母に預かってもらうとしても、そのころ原稿の締め切りを月に60本ほど抱えていたんです。多くの人に迷惑をかけてしまうこと、仕事を逃してしまうかもしれない不安など、いろいろなことが頭をよぎりましたね。でも命には代えられないと腹を括り、いっそこれまで忙しくてできずにいたことをしようと、心を切り替えたんです。たとえば、いつか読もうと思っていた本を読むとか、DVDを見るとか。

ちなみに、どんよりした気分を一掃しようとネイルサロンへ行ってから入院したんですけど、あれは失敗。主治医から、爪は手術中や術後の健康状態を確認するための重要なバロメーターなのにって叱られてしまいました(笑)。今思えば動揺していたのだと思います。8時間に及ぶ大手術だと聞かされていたから。

手術は成功したものの、腹部を縦に20センチくらい切ったので、麻酔から覚めたあとが痛くて痛くて。それなのに私は、翌日にはカラダを「く」の字に曲げながら点滴台を杖にして廊下を歩いていました。どうしてもタバコが吸いたくて、喫煙所まで行かねばならぬ、と命がけで。

医師からは咎められたけど、「イライラするときに吸わなくて、いつ吸うんですか!」と逆切れ(笑)。でも、無理して歩いたのが術後のリハビリとして効果的だったらしく、予定より早く退院できたんです。