大手芸能事務所・ホリプロ社長の堀義貴さんは、新型コロナウイルス感染症の影響で大打撃を受けているエンタメ業界を守るために奔走を続けています。そんな折、ホリプロ創業者である父・堀威夫(たけお)さんがファウンダー最高顧問を6月に退任。エンタメの力を信じる彼の半生は? ジャーナリストの中村竜太郎さんが切り込みます。(構成=中村竜太郎 撮影=本社写真部)

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エンタメのない世界を想像したら

中村 堀さんは、たくさんの俳優・タレントを抱える大手芸能事務所の社長であると同時に、多くの芸能事務所が加盟する日本音楽事業者協会(音事協)の会長を務める、いわば「業界の顔」。エンターテインメント業界の地位向上を目指して、行政への働きかけを行う立場でもあります。実際、未曽有の危機であるコロナ禍では、数多くのメディアで業界の窮状を訴えてこられましたよね。日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』のインタビューに応えておられたのは意外でしたが。

堀 まさか自民党寄りの僕に取材が来るとは思いませんでした(笑)。でも、主義信条はこの際置いておいて、業界の危機的な状況や不安を知ってもらいたかったんです。

中村 エンタメ業界はまっさきに自粛を決めましたよね。

堀 はい。一般の方はあまりご存じないかもしれませんが、政府の緊急事態宣言が出る約1ヵ月半も前に、率先してすべての経済活動をストップしたのは、スポーツとライブエンターテインメントだけなんです。

中村 そうでしたね。

堀 2月26日に安倍総理が会見を開き、「大規模な」「不要不急の」活動の自粛要請がありました。ちょうどその時期って、大阪のライブハウスでクラスターが発生したことが連日ニュースで報じられていたんです。そこでエンタメ業界全体で、50人だろうが1万人だろうが、それは「大規模」だと判断し、自ら「不要不急」だと即座に対応しました。“自粛”ですから、ライブを中止にしても政府からの金銭的補償は当然ありません。

中村 思い出しました、安倍総理が会見した当日、Perfumeの東京ドーム公演、EXILEの京セラドーム公演の中止が発表され、衝撃を受けたことを。すでに会場に大勢のファンが集っていて気の毒でした。1回のドーム公演中止の損害額は数億円から十数億円。当初は2週間程度で見直すという話でしたが、結局あれから3ヵ月以上、自粛が続いていますよね。

堀 舞台でいえば、弊社でも何公演も中止にしていますが、主催者の収入はゼロのなか、すでに売れていたチケット料金の払い戻し、満額とはいかないまでも出演者へのギャランティの支払いなどをしたら、完全に赤字です。この状態が数ヵ月続いたら、さすがに会社も体力がもちません。

中村 一部報道によると、5月末時点でエンタメ界の経済損失は3300億円という試算がありました。

堀 ライブエンタメやスポーツの年間市場は9000億円ですが、その3分の1強が一気に消滅したわけです。

中村 ものすごい経済的損失ですね。