NHKの番組「きょうの料理」に長年出演し、「ばぁば」の愛称で親しまれた料理研究家、鈴木登紀子さんが12月28日、肝細胞がんのため亡くなりました。享年96。料理ページにはもちろんのこと、インタビューも何度か応えてくださった鈴木さん。弊誌で最後にご登場いただいたのは、2018年、「私と戦争」というテーマでした。「食べることは生きること」と語るに至った体験とはーー詩人・エッセイストの堤江実さんが取材した記事を再掲します。(撮影:藤澤靖子)

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「ばぁば」の愛称で親しまれる料理研究家、鈴木登紀子さん。青森県八戸市で育ち、女子挺身隊として飛行場の庶務課に配属された鈴木さんには、大都会とはまた違った戦争体験がありました。

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料理上手で 評判だった母

生まれは、1924年11月14日、青森県の八戸です。海があって、山があって、畑があって、食べ物の豊富なのんびりした田舎町でした。それが今、93歳(取材当時)。なんだか自分でも信じられませんけどね。

父は長野の人で、篆刻家。お酒が好きで、うちではいつも晩酌2時間。そのうえ、呑ん兵衛仲間のお客様がしょっちゅうあり、母は毎晩、酒の肴を用意するのに一所懸命だったわ。大酒飲みだった父は腎臓を悪くして、私が小学1年生の頃に亡くなりました。

母は、岩手県一戸町の宿屋の娘。読み書きは達者じゃなかったけれど、お料理、お裁縫、なんでもよくできたのです。女学校のない時代、母の妹が1期生でしたが、今考えますと、母のほうが「女大学」の感がありました。

四季折々のものを本当においしく食べさせてくれて、近所でも料理上手と評判だったの。母が黙って何か考えている時は、決まってお料理のこと。家族一同、いつでも一番大事だったのは、おいしいものを食べることでした。

私は、兄が3人、姉が2人の6人きょうだいの末っ子です。今思えば、平和で幸せで、楽しいことばかりの子ども時代でした。