「暗闇の中、追い掛けられてパニックになった」―。10月28日夕、福井県福井市稲津町の自宅敷地内でクマに襲われた50代男性が被害直後に福井新聞の取材に応じ、当時の緊迫した状況について話した。玄関は目の前だったが室内の家族に危害が及ぶことを恐れ、逃げ回るしかなかった。右足のすねやふくらはぎに複数の引っかき傷を負い、「軽傷で済んでよかった。命の危険を感じた…」と声を震わせた。

 28日午後6時半ごろ妻と一緒に帰宅した男性は、車庫に車を止めて外に出た。ふと何かが動く気配がして足元を見ると、約1メートルの成獣のクマが四つんばいでいた。その時は「大きい犬」くらいの認識で、車庫に一晩中いられたら困ると思い「あっち行け」と追い出そうとした。その瞬間、クマは「ハーハー」と息を荒くし、歯をむき出しながら向かってきた。

 妻は「きゃーっ」と声を上げ、約20メートル先の自宅の中に駆け込んだ。男性はクマに追い掛けられながら、妻や自宅とは反対の方向に逃げた。集落に街灯は少なく「辺りは暗い、クマも黒い。よく分からなかった」。何度か追い付かれ足元を爪で引っかかれた。転倒して顔面も打った。

 5分ほど自宅の周辺を逃げ回り、足がうまく動かなくなった。動かずにやり過ごそうと考え、玄関近くで座り込んだ。視線を合わせずじっとしていると、クマは追い掛けるのをやめた。一定の距離がとれたところで、リビングの窓から家に逃げ込んだ。

 着ていたスーツのズボンは泥だらけで、爪で引き裂かれた痕もあった。男性は「傷が深かったり、かまれていたりしたらと思うとぞっとする」と振り返る。経験を踏まえ「遭遇したときの対処法を、日頃から考えておく必要がある」と述べた。