MLB史上初の快挙達成…ダルビッシュの現在地「自分はどちらかというと芸術家」

MLB史上初の快挙達成…ダルビッシュの現在地「自分はどちらかというと芸術家」

5戦連続無四球&8K以上のMLB史上初の快挙達成も4被弾7失点した

 カブスのダルビッシュ有投手は21日(日本時間22日)、本拠地ジャイアンツ戦で3本の2ランとソロの計4本塁打を許し、7失点で5勝目を手にできなかった。12年に米移籍後、レギュラーシーズンでは自己ワーストとなる4被弾を喫した登板だったが、この日の87球は今後へのあるべき方向性を見据えるものとなった。

 長打に沈んだ5回途中のノックアウト。試合後、ダルビッシュは手痛い4本を冷静に振り返った。

 初回、148キロの直球を捉えたロンゴリアの先制2ランに

「(相手が得意とする内角に直球が入り)打たれるべくして打たれた」。

 5回、130キロのカーブを捉えたヤストレムスキーの2ランに

「本人があまりカーブを打っていないし、いい球だったが、今の時代は芯で多少(角度を)上げれば入ってしまう」

 6回、135キロのカットボールを捉えたボートの2ランに

「カッターを狙っているのは分かっていたが、基本的に曲がり球をまったく打てていないので。巧いこと打たれた」

 6回、143キロのスプリットを捉えピラーが放った2者連続となるソロに

「今季は右打者がスプリットを1本も打ててないので。あれは本当に巧く打たれた」

 失投、配球ミス……。結果だけを見ればこう括られるであろう4球だったが、相手打者の特徴を把握しその心理にもつけ込んでいった、それぞれに根拠のある勝負を挑んだ末の被弾であった。さらに、6人の左打者を揃えた相手打線に対し、直球の制球に苦しみ変化球の割合が多くなったことを明かした右腕は、歯切れ良く言った。

「次にこういう試合になってこういう相手のアプローチがあったら、すでに対策はもう今日でできているので。次は問題ないと思います」

 他にも収穫はあった。

 登板数日前に意見交換を行った抑えのキンブレルからヒントを得て、速いカーブを試合前のブルペンで試投。好感触を得たため、130キロ前後のその球を効果的に配し、決め球として三振も奪った。

「トミー・ジョン(手術)を受ける前までは、速いカーブが自分の中ではベストピッチだった。今日はその感覚がまた戻ったのですごく自信になります」

 そして、7月30日からの4登板で見せた無四球をこの日も継続し32回連続無四球。奪った8個の三振も5試合連続となり、公式記録が残る1908年以降、大リーグ史上初の快挙となった。シーズン前半戦は制球に苦しんでいただけに「そんなこともあるんですね。自分でもすごく不思議に感じて」と、説明不能な好転が腑に落ちない様子。しかし、この状態は、今後の投球を支える見えない力を湛えている。

「日本にいる時はとにかくエグイ球を投げよう」

 4月10日のパイレーツ戦で、ダルビッシュは今季3度目の登板で2年ぶりの無四球を記録。しかし、その後の5登板で1試合平均4.4個の四球を与え1か月間に渡り無四球から遠ざかった。その後も四球禍は続きようやく6月終わりから解消へと向かう。その渦中にあった4月20日のこと。ダイヤモンドバックス戦で3敗目を喫した試合後、ダルビッシュは煮え切らない胸の内を吐き出すように言った。

「日本にいる時はとにかくエグイ球を投げよう、どんな球を投げよう、次はどんな握りでこう投げたらどんな変化をするんだろう?と、ずっと楽しんでいた。ブルペンの日もすごく楽しんでいた。でもアメリカに来てからはブルペンでも『ストライク、ストライク』と言われている。ストライクを常に投げないといけないと……。気持ちもこの数年間でだんだん落ちていって。そういうのもあるのかな? 何か職業的になっているというか、自分らしくない」

 めずらしく、心境に惑溺するかのような言葉を紡ぎ続けたダルビッシュは、うつうつとして楽しめない気持ちを解き放つように結んでいる。

「自分はどちらかというと芸術家。自分のやりたいようにやって味が出るタイプ。考えて考えてというタイプではない」

 あれから2つ目の季節が移ろう今、期せずして連続無四球と奪三振数での新記録を打ち立てたダルビッシュは、制球に関しての独自の見解を示している。

「コントロールって才能だと思ったんですね、速い球を投げるのと一緒で。上原(元巨人)さんとか岩隈(現巨人)さんとか田中もそうだし、天才なんだろうなって。俺にはそんなの無理だってずっと思っていたんですけど……」

 振り返れば、昨年は新たな右肘の痛みを訴えながらなかなか原因を特定できず、精神的にも苦しんだ。その影響もあってか、今季開幕からフォーム固めに苦しみ、足の上げ方、骨盤の向き、リリースのタイミングなど春は試行錯誤を繰り返す日々だった。白星に焦り、今季1度も投げていなかったツーシームを開き直って使ったこともあった。

 快記録達成の夜、本来の感覚を取り戻したダルビッシュは与四球過多を解消させた要因を探る最後の問い掛けに、間髪入れずにこう返した。

「特にないですよ。なんとなくホームプレートの方向に向かって投げているというだけで」

 一頭地を抜くポテンシャルの33歳右腕は、試練を乗り越え、無傷の未来へ挑み出した。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)


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