18年ぶりに高校野球部員の数が15万人を割り、学校数は3年連続で4000校割れ

「毎年、開会式に行くたんびに、列が短くなっているように思うんよ」。昨春、高知県で行われている西武キャンプのスタンドで、隣り合わせた男性はそう語った。昔から高知商ファンの彼は、毎年、夏の甲子園の県大会の開会式に行っている。最近、入場行進を終えて整列する球児の列が短くなっているというのだ。

 高知県高野連の発表によれば、2019年の選手権高知県大会の参加チーム数は26校。これは最多だった2012年の33校から7校減っている。登録されている野球部員数は937人。2012年は1174人だから約25%、233人も減少している。

 高知県高野連に登録している学校数は31だ。参加チーム数が26と5つも少ないのは、部員数が9人未満の学校が、連合チームを組んでいるからだ。その1つは、高知海洋、高岡、丸の内、室戸と4つの学校で連合チームを組んでいる。丸の内がある高知市と室戸がある室戸市は車で40分以上かかる。連合チームと言っても合同で練習する時間は限られている。今では「県大会に出場するのが精一杯」という状態だ。

 室戸は2007年には春の甲子園に出場し、ベスト8まで進出。「室戸旋風」を巻き起こした。高知県の野球ファンなら誰でも知っている有名校だが、部員が集まらず、2017年から連合チームを組むようになった。こうした状況下、県内の高校間の戦力格差は広がり、夏の甲子園には明徳義塾が2009年以降の11年で10回も出場している。

 部員数の減少、戦力格差、少数校への甲子園出場の集中は高知県だけでなく、福島県や栃木県など全国で見られるようになった。日本全体で言えば、高校球児の減少がはっきりと表れたのは2019年になってからだ。

 日本高野連が発表した硬式野球部員数は3学年合わせて14万3867人。前年より9317人減少した。夏の甲子園優勝校は「全国4000校、15万人の高校球児の頂点」と称えられてきたが、部員数は2001年以来18年ぶりに15万人を割り、学校数も3957校と3年連続で4000校を割り込んだ。高校より下の中体連や学童野球の競技人口は2010年を境に減少に転じたが、その減少傾向が、ついに高校世代にまで波及しだしたという形だ。

高校球児が取り組む就学前児童や小学校低学年向けの「野球教室」では成果も

 その原因は1つではない。少子化が基底にあるのは間違いないところだが、年に1万人近い減少はこれだけでは説明できない。少子化に加えて、地上波での野球中継の減少、空き地や公園でのボール遊びの禁止、他スポーツの選択肢の増加、丸坊主や厳しい指導などへの敬遠、用具代などの費用の高騰、などが背景にあると考えられる。これらが複合的に絡み合って野球競技人口の減少につながったといえるだろう。

「野球離れ」が深刻化する中で2018年に日本高野連は、「高校野球200年構想」を発表。就学前児童や小中学生向けの野球事業にも取り組むこととし、野球未経験者にアプローチする「普及」、野球経験者に競技を継続してもらう「振興」、故障によって競技を離れる人を減らす「けが予防」、指導者や選手の技術向上を目指す「育成」、目標を達成するための「基盤作り」を5大目標に掲げた。

 これによって高校球児が未就学児童や小学校低学年の子供に「野球教室」をすることが可能になった。日本各地で行われている高校野球部による幼稚園や小学校低学年への「野球教室」は、高校側にはそれなりに手応えを感じるイベントになっているようだ。

 青森県弘前市の弘前聖愛高は2017年から球児たちが主体となって保育園、幼稚園などで「野球教室」を主催。翌2018年には弘前市内の少年野球人口が28%も増加した。この報告を受けて、2019年からは青森県高野連が普及活動に取り組んでいる。

 昨年12月に東京都の新宿高で行われた東京都高野連公認の「ティーボール教室」でも、高校生たちの指導のもと、子供たちが嬉々として野球遊びに興じた。子供、保護者の満足度は非常に高かった。これまで高校球界は、こうした普及活動には取り組んでこなかった。それだけに関係者は「やればやっただけのことはある」と手応えを感じている。

 しかし、そうして「野球好き」になった子供が高校で野球を始めるのは10年先のことになる。それまでの期間、高校野球競技人口が低迷することは避けられない。高校野球だけでなく、日本野球界はいろんな意味で「長期展望」をもって普及活動に取り組むべき時代を迎えている。(広尾晃 / Koh Hiroo)