サイン盗みをしたらどれだけ有利か…「野球ゲームだって投げてくる球種が分かったら打てるでしょ」

 ヤンキースの田中将大投手が23日、米球界を揺るがしているアストロズの電子機器を使った“サイン盗み問題”について初めて言及。「勝負したいですよね、ちゃんと」と訴えた。チームはアストロズに2017、19年と2度もリーグ優勝決定シリーズで敗れ、ワールドシリーズ進出を逃しているだけに、野球に真摯に向き合う田中の思いが溢れた。

 この問題では、“当事者”たちが続々と明らかになり、処分を受けたり、職を失ったりしている。MLB機構は、アストロズのジェフ・ルーノー元GMとAJ・ヒンチ元監督に2020年の1年間、報酬なしの停職処分、アストロズに対しては2020年と21年のドラフト1巡目と2巡目の指名権剥奪、罰金500万ドル(約5億4700万円)を含む厳罰を下したが、これを受けて2人は解雇に。さらに、当時ベンチコーチだったアレックス・コーラ氏はレッドソックス監督を解任となり、当時の中心選手で今季からメッツの新監督に就任していたカルロス・ベルトラン氏は1試合も指揮を取らずに職を解かれた。

 さらに、現在もアストロズでプレーする現役選手たちへの批判も強まっている。この日、古巣・楽天の本拠地・楽天生命パークで自主トレを公開した田中は、実際に対戦したときの印象を包み隠さずに明かした。

「そういう違和感があった試合は実際にあったし、でも、それをすべてピッチャーは言い訳にすることはできないし。実際にそれが行われていたかも知らないし。ただ、はっきりそうやって球種が伝達されて分かってて、それをあんなすごい人たちが球種を分かっていたら、いい成績は収めますよ。野球ゲームだってそうでしょ。投げてくる球種が分かったら打てるでしょ。“強振”で。ストレートが来るのが分かっていたら“強振”できるでしょ、スライダーが来るのが分かってたら“強振”できるでしょ。ミートカーソルを小さくして」

 ゲームを例に出し、サイン盗みをすればいかに有利になるか、バットを思い切って振れるかを説明した。

癖を盗まれることについては「癖を出してるほうが問題ですから」

 田中は2017年、2019年のリーグ優勝決定シリーズでアストロズ戦に計4度登板。2017年は敵地での第1戦で6回4安打2失点で黒星を喫したものの、本拠地での第5戦は7回3安打無失点で勝利投手に。しかし、その後ヤンキースは敵地で連敗して敗退。両チームが本拠地で全勝し、ヤンキースの3勝4敗という結果だった。そして、昨年は敵地での第1戦で6回1安打無失点と好投した田中だったが、ヤンキースタジアムでの第4戦は5回4失点(自責3)で敗戦投手に。ヤンキースは結局、2勝4敗で敗退している。

「特定のチームとやるときはなんかおかしいなと思うことはやっぱりあるし、事前にチームも気づいているようなこともあったから。去年のヒューストンでのアストロズ戦はランナー無しでもサインを複雑にしてやっていたし、サインも頻繁に変えていたし。そういう噂はありましたよ。その当時は本当かどうか分からなかったけど、実際にこういう問題が出てるわけですから。やっておいてよかったなと思いました」

 投手が癖を盗まれることについては、田中は「それは癖を出してるほうが問題ですから」と言い切る。ただ、電子機器を使ったサイン盗みとなると全く別の話になってくる。「いろんな頭のいい人たちもチームに入ってきて、そうじゃないところからもアイデアが産まれてるかもしれないですけど……。どんどん数字の世界になってきてるし……」と複雑な心境を吐露。米球界が“取り締まり”を始めている現状を受けて「そりゃなくなってほしいですよ。やる前からそんな勝負になってないじゃないですか。フェアじゃないし。勝負したいですよね、ちゃんと」と訴えた。

 今季、田中がマウンド上で「違和感」を覚えることはなくなるのか。メジャーリーグがどこまで“浄化”を進められるのかが問われている。(Full-Count編集部)