故郷は太平洋に面した青森県三沢市「暇があれば釣りに行きたいなって」

 野球選手には釣りを趣味とする人物が多い。ロッテの若き右腕、種市篤暉もその1人だ。生まれ育ったのは青森県東部、太平洋に面した三沢市。自転車で数分走れば、そこは海という環境で育った。野球が大好きで、食事に出掛けても「ずっと野球の話をしている」という21歳だが、唯一野球を忘れさせてくれるのが釣りをしている時間。「釣りはもう、めちゃくちゃ好きですね」と目を輝かせながら、釣りが持つロマンについて語ってくれた。

 釣りに出会ったのは、小学3年生の頃。父の知り合いでもある釣り好きが、海釣りに連れ出してくれたという。「その時、めちゃくちゃ小さい魚だったんですけど、すごく楽しくて」と、あっと言う間に魅せられてしまった。小学6年生、中学1年生と学年が上がっても、野球と同じくらい釣りが楽しい。時には、知り合いになった漁師が無料で船に乗せてくれ、沖に出て釣ることもあった。また、仲間が釣りに行けない時は、意外な人物を誘ってまで没頭したという。

「お母さんを無理矢理連れ出して、釣りに行っていました。本当に申し訳なかったなって、今考えたら(笑)。4、5時間とか、ずっと釣りをしていたんで、お母さんはむっちゃつまらなかっただろうと。お母さんは釣っているわけじゃなくて、餌とか買ってくれて、僕が1人で釣りをして(笑)。それが何回もあったんですよ。申し訳なかったなって思います」

 思い返して“反省”するが、息子が趣味に打ち込む姿を間近で見た思い出は、今ではお母さんにとってかけがえのない宝物になっているのではないだろうか。

種市の釣り哲学「釣れないから楽しくない、じゃなくて、釣れない時間が楽しい」

 シーズン中はなかなか釣りに行けない。だが昨シーズン、ロッテは最終戦まで競りながらも、楽天との3位争いに敗れ、クライマックスシリーズ(CS)進出を逃した。少し早く訪れたオフシーズン。悔しい気持ちを抱えていた種市は、その気持ちを振り払うために、すぐさま故郷へ帰り、友達と釣りに向かった。

「最終戦の9月24日に西武に負けて、次の日から10日間オフだったんです。その次の日くらいには地元に帰って、友達と3日連続で釣りを1日中やっていました。餌じゃなくてジグ(ルアーの一種)で釣って、すっごく楽しかったです」

 何がそこまで楽しいのか。そう質問すると、少し背筋を伸ばしながら、釣りの楽しさを説いてくれた。

「釣れないから楽しくない、じゃなくて、釣れない時間が楽しいというか。(魚が)来るあのゾクゾク感が好きなんですよ、僕の中で。嫌いな人はそれが嫌いだと思うんですけど。デカイ魚が来た時の、あの振動がすごいんです。あの振動が好きな人が、すごい釣り好きになるんじゃないかと思っています」

 バス釣りではなく海釣りが好きなのは「自分で釣って捌くのも楽しいので」。料理人・種市の腕前はというと……。

「料理ががっつりできるわけではないですけど、捌く分にはできます。きれいに捌くとかはできないですけど、三枚下ろしくらいなら。手順を知っていれば。みんなできると思うんですけど(笑)」

 これまでの釣果で最も大きかったのは「アイナメっていう魚がいるんですけど、アブラメとも言います。それで50センチオーバーくらい」だという。しかも、初めて船で沖に出た時で「竿が折れるんじゃないかなってくらい曲がって。いや、本当に楽しかったですね」と満面の笑みだ。

今は野球に専念、そして「野球人生が終わったら釣りにかけたいなと思います」

 もちろん、船釣りに出掛ければ船酔いに苦しめられる。「船酔いはこの世界で一番の地獄だと思います」という表情は、曇りがちだ。

「むっちゃ吐くんですけど、吐いた後が地獄。すごく揺れて、吐く物もなくて、胃液を吐いて。(船釣りには)2度と行かないって思うんですけど、また行ってしまうという(笑)。毎回その繰り返し。もう何回も言ったら(船酔いに)強くなるんじゃないかと思って行くんですけど、波が高かったら毎回吐くという……」

 チームの先輩とも釣りに出掛けたことがあるという。

「石川(歩)さんと一緒に行きましたし、大嶺(祐太)さんとか二木(康太)さんとも行きました。細川(亨)さんは青森の同様で、一緒に釣りに行こうって言っていて、まだ行ってません。でも、行きたいですね」

 いくら釣りが好きだとは言え、今は野球が中心の生活。今年はCSに出場し、釣りに出掛ける暇がない状態を目指している。

「あまり野球をしていると釣りに行くことはできない。特に、青森は冬になると寒くて行けないんで。野球人生が終わったら釣りにかけたいなと思います。釣りに人生をかけたいと思います」

 今年でプロ4年目。第2の人生で釣りを存分に楽しむためにも、始まったばかりの野球人生を最高のものにするべく、マウンドで腕を振り続ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)