試合終盤にマウンドで京田がカツ「もうバテたんすか?」

 日本野球機構(NPB)は23日、都内で開かれた「沢村賞」の選考委員会で、中日の大野雄大投手の初受賞が決まったと発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で120試合に短縮されたシーズンで、20試合に登板して圧巻の10完投。14勝で最多勝を獲得した巨人の菅野智之投手との一騎討ちを制した。チームを8年ぶりAクラスに導いたエースに贈られた最高の栄誉。その頼もしい姿をチームメートたちはどう見てきたのか――。

 大野雄に疲れの色が見えてきた試合終盤、遊撃の京田陽太内野手がふとマウンドに歩み寄る。そんなシーンが、今季も幾度かあった。

「もうバテたんすか? あと2イニング残ってますよ」

 6歳下の選手会長に焚きつけられ、エース左腕にまたスイッチが入る。「ほんまやな」。ゲームセットの瞬間までマウンドに立ち続ける姿に、野手陣も引っ張られてきた。

 大野雄は開幕直後こそ白星に恵まれなかったが、7月下旬から2完封を含む5連続完投勝利を飾った。最終的には6完封10完投で11勝6敗。防御率1.82で2年連続の最優秀防御率、148奪三振で初の最多奪三振の“2冠”に輝いた。国内FA権を取得してオフの去就も注目されたが、早々に残留を宣言。チームメートにとっても朗報だった。

「きょう娘の誕生日なんやって? ボールやるわ」

 そんな大野雄の姿を遊撃の定位置から見てきた京田は、エースならではの“違い”を語る。「とにかく大野さんは投げているテンポがいいので、守りやすい。これって野手にとっては結構大事なことなんですよね」。ストライク先行で次々とミットに投げ込むことで、野手にもリズムが生まれる。その相乗効果も、10完投を陰ながら支えている。

 大野雄がマウンドに上がることで、チーム全体に与える空気感もまた変わってくるという。それは、マウンド上での頼もしさだけでなく、普段から滲み出る人間性も少なからず影響しているのではないか。コロナ禍以前はよくプライベートで食事にも連れて行ってもらっていた京田は、思わぬサプライズプレゼントに懐の深さを感じた。

 10月22日のDeNA戦(ナゴヤドーム)。6安打完封で自身5年ぶりの2桁勝利を挙げた大野雄は、ふと京田に話しかけた。

「きょう娘の誕生日なんやって? ボールやるわ」

 その場でペンを走らせ「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」と記入。2歳を迎えた京田の長女に誕生日プレゼントを贈った。「普段はただ底抜けに明るくて、マウンドでも顔色変えない人なんですが、この人と一緒に頑張ろうとより思わせてくれる人なんですよね」。そう京田は語る。

 2018年には未勝利に終わるなど、苦しみを乗り越えた先に掴んだ最高の名誉。グラウンドの内外で同僚たちから抜群の信頼感を得る竜の絶対エースは、来季もチームのために腕を振る。(小西亮 / Ryo Konishi)