銀世界のなかでの自炊。なにがつらいってやっぱり寒さ。でも備えあれば楽しめるもの。経験者が実践するノウハウを真似て、いざ冬山へ。

文◉編集部 Text by PEAKS
写真◉後藤武久、廣瀬友春 Photo by Takehisa Goto, Tomoharu Hirose
イラスト◉カワナカユカリ Illustraion by Yukari Kawanaka
出典◉PEAKS 2016年12月号 No.85

冬山の経験は豊富だが、メニューは麺類に偏るという
西川さんのアイデアとは……

西川由美子

冬山歴は17年ほど。現在は山スキーに傾倒し、シーズン中の山行は99%がスキー。パウダーはもちろん、春スキーも大好物。

取捨選択が大事! 西川さんが掲げる冬山のテント泊の原則は、「寒さ厳禁」、「重すぎるものはNG」のふたつだそう。あとは山行スタイルと相談しながら、食糧を含めた荷物の取捨選択が始まるのです。 お湯はなるべく早い方がいい、でしょ

冬のテント泊でなにより大事なのがお湯だろう。いかに早くお湯を沸かして食事を作れるかがポイントになってくる。ジェットボイルなら−6℃までの環境であれば、安定した火力でお湯を沸かすことができ、500㎖の水なら約2分で沸騰させることができる。

冬の山行は基本的に大人数になるので、別売の大きなポットを使用しても便利。お湯さえあれば、ラーメンもすぐに出来ちゃうから、ジェットボイルは西川さんは大のお気に入りなのだ!

麺類は半分に! これ鉄則

大好物の麺類は半分に折って持っていく。コンパクトに持ち運ぶことができるし、なにより早く茹で上がる。なるべく細い麺をセレクトするが、蒸気の出すぎはテントの結露につながるので、茹で時間は約2〜3分ほどですませる。

そのあとは、お湯の温度が下がらないように適当なものでくるんで断熱。食事担当から外されてやることがないときはこの役を買って出るそう。なんでも、ごはんの完成を待つだけで体を温められるからだとか。

ガスカートリッジは適切なものを!

シーズンインで意外と忘れがちなのが厳冬期用のガスカートリッジの準備。夏山での縦走をメインとしている人はなかなか意識がしにくいところだ。ガスにはそれぞれ気化温度というものがあり、気温条件に応じてその配合が変えられている。

メーカーによってその配合率に差はあるものの、冬などの気温が低い場合には、約−42℃でも燃焼可能なプロパンガスが配合されているものが基本。季節の変わり目に見直しておきたいギアのひとつだ。

糖分は行動中も、デザートでも

雪山でのテント泊は体が冷えてたまらない。そんな環境下においてチョコレート飲料などの甘いものは欠かせないという西川さん。そのため冬場の行動食もほとんどが甘いものになるとのこと。

糖分は脳の活性化にも役に立ち、エネルギーにも変わるスグレモノ。同行する人にわたせばたちまち喜んでくれる。山行中の食事は麺類で済ませてしまうという西川さんと同じような人も、こういうところで女子力を発揮できるかも……?

雪山でキャンプスタイルを楽しむことも多い
水野さんはどんな工夫をしているのか……

山岳ガイド・水野隆信

冬山歴は22 年の山岳ガイド。冬はバリエーションクライミングとBCスキーで忙しいが、基本的にはオールラウンダー。

下準備を怠るな! ガイドとしてさまざまなジャンルで活躍する水野さん。どんな山行スタイルでも、食事には事前の準備が欠かせないと語る。簡単なごはんも、豪華なごはんも、まずはそこから始まるのだ。 ジップロックはいつでもなににでも

シーズン問わず登山者を助けてくれる最強の味方。行動食やつまみを持っていくのはもちろん、家で前もって料理してきた食糧をいれてもよし。そうすればテント場での調理の手間を減らしてくれる。

さらに使用後は完全防水のごみ袋にもなるので、水分大敵の冬場にはもってこいのギアだ。においもれも少ないので、そういった意味でも信頼できる万能選手。

台所のアレが大活躍!

火器の扱いはもちろん、冬のテント泊では水の取り扱いにも注意が必要。テント内で水をこぼした日には大惨事だ。そんな水対策にはスポンジを。スポンジ本来の使用用途としてももちろんだが、タオルとしての使用も可能。

乾きも早いので重宝している。さらに冬のテント泊にきっても離せない結露にも有効。柔らかくて小さくなるので、収納もラクラク。

ライターも冬山仕様に

ガスカートリッジと同様、気を使いたいのがライターである。ターボライターやワンタッチ式では内部のガスが気化しないため、火がつかず使い物にならない。気軽に手に入るもののなかで、僕のおすすめはフリント式のライター。

ある程度の低気温下においても使用可能なのだ。とはいえこれも万全ではないので、防水マッチなどの予備も忘れずに持っていきたい。

雪上のキッチンには板が欠かせない

ガスカートリッジを置く際、雪などを固めて下地を安定させる人もいるのだが、板があればよりベスト。そこまで厚いものでなくても十分なので、バックパックの中でスペースをとる心配もない。

さらに直接雪の上に乗せないことにより、カートリッジ内部の温度の低下を防ぐことができる。内部温度が低くなると、ガスの沸点を下回ってガスが気化しなくなり、安定した火力が確保できない、もしくは着火が困難になってしまうのだ。

下ごしらえあれば憂いなし。カツ煮に挑戦してみよう!

雪山でキャンプスタイルを楽しむときは温かくてなるべく豪華な料理を用意しておきたいところ。だとするならばやはり下準備は欠かせない。段取りの参考として、水野さんオススメのメニュー、カツ煮の作り方を見てみよう。

食材&用意するもの とんかつ…適量 玉ねぎ…適量 卵…適量 めんつゆ…適量 ジップロック キッチンペーパー しょうゆ差しなどの小さい容器 作り方

1.とんかつは自宅で揚げておき、キッチンペーパーでくるんでから、ジップロックに入れる。
2.玉ねぎをスライスしてごま油で炒めたのち、ジップロックに入れる。
3.テント場で水とめんつゆを鍋に投入。割り下ができたらとんかつと玉ねぎを入れる。溶き卵を入れるタイミングはお好みで。