圧巻!尾野真千子の存在〜土曜ドラマ「夏目漱石の妻」

ギャラクシー賞月間賞:
土曜ドラマ「夏目漱石の妻」

9月24日、10月1、8、15日放送
21:00〜22:15
日本放送協会 NHKエンタープライズ


 文豪の妻であることなど、見ているうちに忘れてしまっていた。気難しく、時には家庭内暴力まで振るう夫に対して、あるときはとてつもなく強いまなざしで立ち向かい、またあるときはふっと翳りを帯びた横顔を見せ、かと思えば子どものように大口を開けて大笑いし、しれっと夫を手玉にとったりもする。しかし常に夫への深い愛情を感じさせてやまない。そんないくつもの顔を見せる一人の妻の複雑なありように、ただただ目と心を奪われ、惹きこまれた4週間だった。

 本作は、夏目漱石と、家事が苦手で思ったことをずけずけ言い悪妻と評された妻・鏡子の夫婦のドラマだ。池端俊策・岩本真耶の巧みな脚本と、柴田岳志らの細部まで行き届いた演出は、主演の尾野真千子と長谷川博己の演技力を余すところなく引き出し、偉人伝とは程遠い夫婦のリアリティを描き切った。

 それにしても夫婦とはなんと厄介で業の深いものなのだろう。このドラマでは、夫婦がわかりやすく支え合ったり、いたわり合ったりはしない。鏡子にとってはむしろ闘いの日々だ。心を病んで英国から戻った漱石のDVに苦しむも病気だとわかればけろりと受け容れる反面、家や夫を守るためには実の父も夫の養父もきっぱりと切り捨てる。とりわけ竹中直人演じる漱石の養父・塩原昌之助に土砂降りの雨の中で対峙するシーンは圧巻だ。一言でいえば、これは鏡子が自ら信じるものを選び続けるドラマなのであり、厳しい決断の陰で鏡子の心は血を流す。最終回で漱石の吐血によって赤く染まった鏡子の着物は、その意味で象徴的だ。しかし漱石はそこで死なずに再生する。そして最後のわずか数分間だけ流れる夫婦の穏やかな旅の時間が、奇跡のようにすべてを肯定し、明るい余韻を残すのである(個人的には、『坊っちゃん』のばあや・清のモデルが鏡子だとわかるくだりで、「ばあやかいっ!」と思わずツッコミを入れてしまったのだけれど)。

 舘ひろし、竹中直人の熟練の演技、壇蜜のインパクト、黒島結菜の初々しさなど、主役二人以外にも見どころの多いドラマだった。(岡室美奈子)


★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。


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