「調査報道」で戦争に迫る〜NNNドキュメント'17「戦争のはじまり 重慶爆撃は何を招いたか」

ギャラクシー賞月間賞:NNNドキュメント'17
「戦争のはじまり 重慶爆撃は何を招いたか」

5月21日
24:55〜25:50
日本テレビ放送網

 重慶爆撃については戦史上初めての都市爆撃だったという程度の知識しかなかったが、この番組を通じて詳細を知ることができた。何よりも日中双方の一次史料から、重慶爆撃が軍事施設だけではなく、市民を巻き込む無差別爆撃だったことを立証した点は大きい。

 まず日本側の史料だが、現在防衛省に保管されている日本陸軍の『航空部隊用法』には「直接その住民を空襲し敵国民に多大の恐怖を与えてその戦争意思を挫折すること」と記されていた。これは重慶爆撃の1年前に制定されたものであり、当時すでに戦略爆撃の構想があったことがわかる。また、日本軍は1940年に「百一号作戦」として重慶への爆撃方針を変え、重慶市をいくつかの区域に分け、組織的な爆撃を試みた。爆撃地点には市街地が含まれ、日本軍が軍事施設だけではなく、市民への無差別爆撃を意図して実施したことを示す史料であった。

 一方番組取材班は、重慶で現地取材を行い「档案」という当時の重慶市当局が作成した調査資料を閲覧検証した。そこには、爆撃で犠牲になった市民の性別年齢職業が記されており、多くの女性や子ども、商店勤務の市民などが含まれていた。ここからも重慶爆撃が市民を対象にした無差別爆撃であることがわかる。

 取材班は、避難者が溢れかえり窒息死した防空壕跡を取材。重慶爆撃については当時タイム誌が、階段に横たわる無数の死体の写真を掲載している。番組は、この写真が撮影された場所がどこなのかを現地で探し特定している。

 東京大空襲をはじめ日本人の空襲被害については、日本の放送局は番組でかなり取り上げてきた。しかし、この「戦争のはじまり」は、調査報道を丹念に積み重ね、戦略爆撃の思想は日本軍も早くから持っていたこと、それが太平洋戦争以前に日中戦争で実行され多大な被害をもたらしたことを明らかにした。戦争の加害と被害は、表裏一体である。さらに取材と史料の検証を進めることで、重慶爆撃のより詳細な全貌が明らかになることを期待したい。(藤田真文)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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