ギャラクシー賞月間賞:NNNドキュメント'17
「プラス4℃の世界 温暖化の果て…私たちの未来」

11月5日放送
24:55〜25:25
テレビ信州 

 1980年代以降、世界の平均気温は0.8℃上がっている。このまま対策をしなければ、2100年頃にはさらに4℃上昇するという。冷涼な気候に支えられてきた長野県の農業が、いま温暖化の影響にさらされている。「プラス4℃の世界」は長野県の農家の危機意識を制作者が共有し、丁寧に伝えるドキュメンタリーだ。

 リンゴやブドウ、角寒天(棒寒天)の生産者が口々に異変を訴える。雨が媒介する晩腐病にかかったり、日焼けで変色したブドウの映像は忘れがたい。暑い時期に収穫すると味も悪くなるので、畑の標高はどんどん上がっている。ある男性は「このままいくと、産地は北海道に行っちゃうよ」と話す。私事だが筆者の祖父が住む長野県南部でも、名産の市田柿づくりが難しくなりつつある。冬の冷え込みが弱いと糖分がうまく結晶せず、真っ白な干し柿にならない。農業が盛んな長野県では、温暖化が生活を左右する一大事なのだ。

 なんとか農業を続けようと奮闘する生産者の姿も描かれる。諏訪湖周辺でのみ作られる角寒天は、冬の厳しい寒さなしには作れない。寒天が凍る期間が短いぶん、作る面積を広げた人もいる。きれいな棒状にならないものを「はねだし(規格外)」として売る人もいる。気温上昇に合わせてレモン栽培に転じた農家もあれば、リンゴ栽培への温暖化の影響を研究する人もいる。

 議論の多い温暖化の原因にまで踏み込んではいないが、農家の声や地元の大学と協力した実験結果という事実だけを伝えることで、地域に根ざした誠実な番組になっている。月評会では、ナレーターを務めた浜辺美波さんへの賞賛も集まった。『君の膵臓をたべたい』のヒロインを務めるなど、女優として活躍する17歳。ただ原稿を読み上げるのではなく、その内容を深く理解し、共感して語っていることがわかる。制作チームの皆が、伝えたいことを共有しているのだろう。

 番組の最後に聞こえるのは、「私たちの未来は」という問いかけのような一言。プラス4℃の世界で生きるかもしれないのは、浜辺さん自身とその後に続く世代なのだと、強く感じさせられた。(藤岡美玲)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。