「人生の苦み」を味わうドラマ〜「獣になれない私たち」

ギャラクシー賞月間賞:
「獣になれない私たち」

10月10日〜12月12日放送
22:00〜23:00
日本テレビ放送網

 周囲に気を遣ってばかりで自分をすり減らしている晶(新垣結衣)と、一見世渡り上手に見えるが根っこは不器用な恒星(松田龍平)。同じビアバー「5tap」の常連同士という二人の関係に、晶の恋人・京谷(田中圭)や恒星の元恋人・呉羽(菊地凛子)、そして京谷の元恋人で訳あって彼の家に棲みついている朱里(黒木華)らが絡み、それぞれの人生が少しずつ変化していく。スタート前は「獣になれない私たち(の恋愛ドラマ)」かと思っていたが、終わってみれば「獣になれない私たち(へのエール)」だった。

 現実からは簡単に逃げられないし、目の前に立ちはだかる敵の姿もはっきりとは見えない。そしてなにより「わかっていても、できない」ことが“獣になれない”彼らを内側から少しずつ傷つけていく。それを否定も肯定もせず、各自がどう自分のなかで折り合いをつけていくかを丁寧に紡いだ野木亜紀子の脚本を、役者陣もまた丁寧に演じていた。

 随所で物事の多面性が描かれていたのも印象的だ。例えば“京谷の恋人”としての晶にとっては、自分の人生に立ちはだかる障害だった朱里だが、彼女の「あのとき京谷が仕事辞めてうちに住めばと言ってくれなかったら、私は死んでいたかも」という言葉は“ブラックな職場で働く女”としての晶には、泣けるほどに響く。自分の立ち位置によって見える景色はこれほど違うのだ。最終回、九十九社長が5tapで部下たちと飲みながら「原節子はタバコも吸うし酒も飲む。それも含めて好きなんや」と力説する場面もそうだった。彼は威圧的で部下を人間として尊重できない人だが、女性の魅力をいわゆる“永遠の処女”性のような押し付けで判断はしないのだ。

 物語のラスト、晶が5tapの周年パーティーに行けなかったことを詫びるためにかけた電話の向こうから、常連たちの楽しそうな様子が伝わってくる。自分がそこにいなくても、世界は回る。そのことの虚しさだけではなくポジティブな一面を伝えたこの場面にも、作り手の強くてあたたかな意志を感じた。 (岩根彰子) 

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。


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