福島で放射線と闘い続ける医師たち〜ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」

ギャラクシー賞月間賞:ETV特集
「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」

3月9日放送
23:00〜24:00
日本放送協会

 東日本大震災から8年。各局が新しい切り口を求めて震災関連特番を組むなか、NHK福島放送局が丹念に制作したこの番組が月評会で高い評価を得た。

 震災時、原発事故発生直後に全国から放射線や災害医療の専門医師たちが緊急被ばく医療チームとして福島に駆けつけた。想定を超える災害現場で必死に医療活動を行った医師たちが各現場で自ら撮影した写真や動画は計3000あまり。そこには放射線の危険が迫り、次々に避難範囲が拡大されるなか、受け入れ先も決まらないままバス移動を余儀なくされた入院患者や、爆発で負傷した自衛隊員の救出、治療など、修羅場と化した現場の様子が生々しく記録されている。見えない放射線のリスクを前にして人間の命をどう守るのか、事態が刻々と深刻化するなかで、医師たちは難しい判断と重い決断を迫られていた。一刻を争う原発事故現場でレスキュー隊の被ばく許容線量を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに緩める指示をしようとした国に対し、断固反対した勇気ある医師がいたことも初めて知った。未曽有の原子力災害で、生身の医師たちは自らも被ばくする恐れを抱きながら命の危険も覚悟して治療にあたっていたという。彼らはそこで何を体験し、何を考えたのか。この番組は医師たちが満を持してその経験を次世代に伝えようと覚悟を決め、番組制作者もその想いを受け、工夫をこらして確かな証言記録に紡ぎあげた共同作業の賜物だ。

 当時、広島や長崎をはじめ全国各地の病院から緊急召集された名医たちの多くは、現在福島に居を移して後進の育成や地域の医療活動に携わっている。現場で的確な対応ができなかったと自責の念にかられ続けてきた想いをあえて白昼に晒し「失敗を生かすことで次の損害が減るのであれば恥ずかしくない」と語る医師の佇まいは凛として胸を打たれる。8年前の医師たちの過酷な体験や葛藤を風化させてはならない。原発再稼働が着々と進められるなか、今後の緊急被ばく医療の体制づくりにどう生かしていくべきなのか、そのことを強く問いかける番組である。(小泉世津子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。


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